【アナリストの眼】米雇用・大統領選を控え様子見の展開、日銀金融緩和期待織込む

2012年10月28日 16:10

<相場展望>

  来週(10月29日~11月2日)の日本の株式市場は、10月30日の日銀金融政策決定会合の結果発表に対する反応が焦点となるだろう。ただし追加緩和も材料出尽くしの織り込み済みであり、事前に報道されている内容程度であれば、結果的には反応は限定的となる可能性が高いだろう。また主要企業の決算発表がピークを迎え、業績見通しを下方修正した銘柄がアク抜けと売り直しの二極化で賑わう一方で、週末11月2日には米10月雇用統計、翌週6日には米大統領選挙を控えているため、全体としては様子見ムードを強める可能性があるだろう。

  前週(10月22日~26日)は、米国株式市場が調整色を強める展開だったにもかかわらず、日本の株式市場は意外なほどに堅調な展開だった。日銀の追加緩和観測などで為替がやや円安方向に傾いたことが支援材料だった。ただし、資産買入基金の規模10兆円程度増額という報道などで追加緩和への期待感をほぼ織り込んだため、週末26日には逆に結果発表後の材料出尽くしに対する警戒感を強め、為替がやや円高方向に傾いたため株式市場も下落した。

  こうした動きを考慮すれば、追加緩和に対する期待感も材料出尽くしに対する警戒感も織り込んだ形と言えるだけに、30日の日銀金融政策決定会合の結果が報道程度の内容であれば、結果的に反応は限定的となる可能性が高いだろう。市場が好感するためには、デフレ脱却に向けた強い意思を示す形で報道以上の内容や表現が欲しいところだ。

  国内では主要企業の7~9月期決算発表がピークを迎える。業績見通し下方修正に対する警戒感をある程度は織り込み済みと考えられるが、前週までの反応を見る限りでは予想どおり、下方修正に対してアク抜け感で買われる銘柄と失望感で売り直される銘柄に二極化した。こうした動きは来週も継続するだろう。また、石原慎太郎東京都知事が新党結成と第三極の大連合を目指す考えを示し、政局は一段と不透明感を増すことになったが、市場への影響は限定的だろう。

  その後は、週末11月2日の米10月雇用統計、翌週6日の米大統領・議会選挙の結果待ちとなりそうだ。さらに8日には中国共産党大会開幕、ECB理事会、9日と10日には中国の主要経済統計の発表も控えているため、全体としては様子見ムードを強めそうだ。

  6日の米大統領選は大接戦が予想されている。米メディアの各種世論調査では現職のオバマ大統領とロムニー共和党候補との支持率が拮抗している模様だが、ここにきてロムニー候補優勢との世論調査も出始めている。結果次第では「財政の崖」問題に影響を与える可能性もあるだけに、市場は議会選挙とともに結果待ちの状況となり、様子見ムードを強める可能性があるだろう。

  中国に関しては、11月1日の10月PMI(国家統計局)、10月製造業PMI改定値(HSBC)が当面の注目点だが、8日開幕の中国共産党大会での権力闘争の動向や新執行部の基本方針、9日と10日の10月主要経済統計待ちの状況となりそうだ。9月の主要経済統計では景気底入れとの見方も広がったが、日中関係悪化によって日系自動車メーカーが中国での大幅減産に追い込まれるなど悪影響が本格化しているため、中国の景気底入れが日本企業や日本経済にどれだけの好影響となるのか、そして株式市場がどの程度好感するのかは不透明だろう。

  ユーロ圏の動きには引き続き注意しておきたい。過度な警戒感が後退して市場の関心が薄れているようにも見えるが、スペイン政府による金融支援要請が進展していないため、何らかのきっかけ次第でスペイン国債利回りが再び上昇しかねない。ネガティブ材料は忘れた頃に現れる。

  その他の来週の注目スケジュールとしては、10月29日の米9月個人所得・消費支出、30日の日銀「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」、ユーロ圏10月景況感・業況感指数、米8月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米10月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、31日の米10月シカゴ地区購買部協会景気指数、米10月ADP雇用報告、米10月ISM製造業景気指数、米10月自動車販売台数、2日の米9月製造業新規受注などがあるだろう。ただし外国為替市場で大きな動きがなければ、株式市場の反応は限定的だろう(本紙・シニアアナリスト水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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