NEC、次世代マンガン系リチウムイオン二次電池を開発 高電圧・長寿命を実現

2012年10月9日 16:52

 NECは9日、マンガン系リチウムイオン二次電池の高電圧動作を実現する正極と、高電圧動作時の安定性を向上した電解液を開発し、電池を試作したと発表した。これにより、将来の電気自動車の航続距離延伸や電池の軽量化に貢献することができるという。

 NECは現在、埋蔵量が豊富で安価なマンガンを正極に採用したリチウムイオン二次電池を開発・生産し、同リチウムイオン二次電池は電気自動車や家庭用などの大容量蓄電池に搭載されている。しかし、重量当たりの容量(エネルギー密度)の向上が課題となっており、NECは、同課題の解決に向け、電池の高電圧化や、それにより正極の表面で発生する電解液の酸化分解を抑制する電解液の開発を進めてきた。

 今回、NECが従来から採用している充電時の安全性が高いスピネル構造のマンガン系正極について、材料の一部をニッケルに置換することで高電圧動作を実現。同正極と黒鉛負極を用いることで、平均動作電圧を従来の約3.8Vから約4.5Vに高電圧化した。これにより、エネルギー密度を約150Wh/kgから200Wh/kg以上と約30%向上。同じ重量の電池では蓄積エネルギーを約30%向上する一方、同じ蓄積エネルギーの電池では重量を約30%低減した。

 さらに、電解液の溶媒を従来のカーボネート系から、耐酸化性の高いフッ素化溶媒に変更。これにより、従来の課題だった正極と電解液の界面で発生する酸化分解を抑制。室温下(20℃)において500回の満充放電サイクル試験後で初期容量の約80%、高温下(45℃)において約60%と、従来の4V系電池と同等の寿命特性を実現した。また、セル内部のガス発生を抑制し、高温下でのサイクル試験後の電池の膨れ率を従来の2倍以上から約10%と大幅に低減し、実用性を向上した。

 NECは、今回開発した正極と電解液により、電気自動車の航続距離の延伸、蓄電システムの軽量化、セル数の低減によるバッテリーシステム管理の簡易化などに貢献する。

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