本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第6回 等級制度の留意点(1)

2012年9月24日 16:47

 人事制度を構成する機能として、大きくは「等級制度」「評価制度」「給与制度」の3つに分けられます。この主要な機能ごとに、これから順にご説明していこうと思います。今回は、「等級制度」を検討していく上での留意点についてです。

■等級制度の基本的な構成
 等級制度の構成というのは、「仕事の種類(職種)」×「ランクレベル(階層)」というマトリックスの形で示されることがほとんどです。これを基本に、例えば「一般社員クラスには高度技術職はない」とか、「部長クラスは技術系と管理系に分かれる」とかいうように、局所的にアレンジされます。

 一見つぎはぎに見え、綺麗なマトリックス状にならないことが多いのもこのためですが、あくまで原点は「仕事の種類(職種)」×「ランクレベル(階層)」という形から始まっているということを意識しておいた方が良いでしょう。

 この意識がないと、全体のバランスを考えないまま、特に中小企業の場合は、それこそ在籍している社員の顔を見比べながら、「ここのランクの数を増やそう」とか「ここは違う職種の分割をしよう」といった場当たり的な議論に陥りがちになります。

 原型である「仕事の種類(職種)」×「ランクレベル」の構成を意識した上で、この箱とこの箱は機能的に統合する、この箱は分割するといった組み合わせをしていくと良いでしょう。

■等級ランクを分ける基準について
 世の中に出ている様々な人事制度の解説書では、等級レベルを分ける際の基準について、「職能」「職務」「役割」「コンピテンシー(行動)」など、いろいろな言葉が出てきます。それぞれの言葉の定義はいろいろな所で解説されていますので、ここではあえて述べませんが、それぞれ別の考え方というよりは、概念やニュアンスの違いという部分が大きいように思います。

 例えば要件書に「~ができる」と書けば職能的なニュアンスだが、「~をする(した)」と書き換えるだけで役割や行動に近いニュアンスになるといった具合です。

 最近の傾向として、等級基準にしても評価にしても、「能力」というような潜在力まで含めた見えづらいものではなく、「成果」や「行動」など、具体的に見えるもので示すというところがありますが、経験や勘が大きくモノをいうような仕事であれば、これも一概に良いとは言えません。

 結局、ある観点で社員の格付けをしようとする点ではそれぞれ同じことで、どんな基準を取り入れるかは、自社の業務がどんな仕事ぶりなのか、どんなニュアンスが理解しやすいのか、企業風土やマネジメントスキルから、それこそ担当者の好みまで含めて、会社によっていろいろだと思います。何を基準に用いるかに正解はなく、自社の状況、考え方次第ということでしょう。

 自社の人事制度のコンセプトにフィットするのは何か、どういう内容だと理解を得やすいのかというような部分で決めていって良いと思います。

■中小企業特有の留意点について
 特に中小企業の場合、一般の解説書には載っていない基準で考慮しなければならないことがあります。「今の役職」または「今の給与額」という部分です。既存の人事制度の有無にかかわらず、実務上では、現状とのつながりや、現状からの移行を意識しなければならないですし、構想している等級制度の中にはおさまらない人が出て来るケースは必ずあるからです。

 もちろん大企業であっても移行に関する意識は必要ですが、人数の少ない中小企業の方が、「この等級ランクの該当者は一人」などという場面が多く出て来るため、新たな等級制度の中で、この人(個人)をどう扱えばよいのかといった課題にぶつかりやすくなります。

 「今の役職(職位)」については、一般的な格付け基準である職能、職務、役割などと共通する部分が多いので、大きな不整合にはならないことがほとんどですが、それでも今の役職に対する仕事ぶりを新たな等級制度に当てはめると、明らかに役不足、能力不足というケースはあり得ます。

 「今の給与額」ということでは、例えば勤続が長いために給与額はそこそこ高いが、役割としては平社員というような、仕事と給与処遇のギャップが大きい人がいる場合は、これに対する配慮を考えなければならず、何らかの工夫が必要になります。

 では実際にどうするのかということですが、中小企業の場合は、それぞれの社員の顔を見渡せるがゆえに、等級レベルの基準そのものを社員の実態に合わせてしまおうとすることがあります。

 しかし、等級レベルの基準を人に合わせて変えてしまうことは、等級制度の根幹をゆがめてしまうことになりますので、制度の趣旨を守るためにも絶対に避けるべきです。

 所定の基準で等級レベルを分け、その結果として格付けと現行給与額に大きな不整合が生じる者がいる場合は、原則個別対応をすることとして考えた方が良いでしょう。

 個別対応の方法についても、無理やり格付けを高くしたり、役職を付けたりということをすると、実際の仕事ぶりとの乖離やそれに伴う業務上の支障、また周りの社員から、えこひいき、特別扱いと見えてしまうことによる心理的な軋轢、モチベーションダウンなどにつながる恐れがあります。

 やはり原則は、あくまで給与に関しての考慮の中に留めて考えた方がよいでしょう。このあたりは給与制度を解説する際にあらためて取り上げたいと思います。

 次回は、等級ランクの数の設定などについて、ご説明しようと思います。

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