【アナリストの眼:老朽化インフラ設備更新(上)】公共インフラの社会的背景を探る

2012年7月30日 14:46

【アナリストの眼:老朽化インフラ設備更新(上)】

  公共インフラ(社会資本)設備の老朽化が急速に進んでいる。適切に維持管理・補修・更新されなければ私たちの日常生活に影響を与えかねず、また重大な事故にもつながりかねない。財源難のため、効率的かつ計画的な維持管理・補修・更新が課題とされているが、いずれにしても関連する設備機器・工事業界にとっては膨大な潜在需要が存在することになるため、注目度が高まっている。人口の高齢化とともに社会・公共インフラもまた高齢化が急速に進んでいる。(上)(中)(下)の3回に分けて紹介する。

■上下水道、橋梁など築後50年経過が目白押し

  上水道、下水道、道路、橋梁、トンネル、河川管理施設、ダム、港湾、空港、公共施設(公立学校、公民館など)、公営住宅、廃棄物処理施設など国内の公共インフラ設備は、高度経済成長期の1960年代から1980年代にかけて集中的に整備が進んだ。

  設備によって耐用年数や、維持管理・補修・更新の度合いによる違いがあるとしても、その大部分は着実に年齢を重ねてきた。そしてまもなく、建設から概ね50年を経過して急速に老朽化が進むため、計算上は今後2010年代~2030年代にかけて集中的に更新時期を迎えることになる。

■急がれる崩壊脅威の「道路橋」、2030年には53%が建築後50年に

  2011年度版の国土交通白書によると、建築後50年以上を経過する設備の割合は、道路橋(橋長15m以上の約15.5万橋)の場合は、2010年度の約8%が2020年度に約26%、2030年度には約53%に急増する見込みとなっている。

  同様に河川管理施設の排水機場・水門等(約1万施設)の場合は、2010年度の約23%が2020年度に約37%、2030年度には約60%、下水道管きょ(総延長約43万km、東北の被災3県を除く)の場合は、2010年度の約2%が2020年度に約7%、2030年度には約19%、港湾岸壁(約5千施設)の場合は、2010年度の約5%が2020年度に約25%、2030年度には約53%に急増する見込みとなっている。

  さらに東京圏で見ると、1960年代に東京オリンピック開催に合わせて大量の公共インフラ設備が建設された。そうした設備の更新時期のピークは、東京圏全体では2034年~2039年頃と見込まれている。

  中でも、首都高速道路は2012年12月に開通から50年を迎える。そして総延長約300kmのうち約5割が開通後30年以上、約3割が40年以上を経過し、塩害による劣化も含めて橋脚や路面接続部などの損傷が目立っている。補修しきれていない損傷箇所は2009年時点で約9.7万箇所に上り、2002年時点の2.7倍に増加したという。耐震性などの面でも懸念が指摘されている。

  首都高速道路の場合、全面的な造り直しは現実的ではないが、今年3月には首都高速道路会社が独自に委員会を立ち上げ、4月には国土交通省の「首都高速の再生に関する有識者会議」の初会合が開かれるなど、大規模更新に向けた議論が始まっている。(本紙・シニアアナリスト水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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