「スマートタウン元年」の期待と課題とは
2012年7月30日 11:00
以前から高まりを見せていた環境問題への意識に加え、震災を契機として広がったエネルギーの安定供給に対する需要等を受け、住宅メーカー各社から相次いで発表されているスマートハウス。昨年はまさに「スマートハウス元年」とでも言うべき様相を見せていたが、今年はさらに進んで、「スマートタウン元年」とも言える動向を各メーカーが見せている。
その先陣を切ったのが積水ハウスである。今年4月に日本初となるスマートタウン「スマートコモンシティ明石台」のまちびらきを実施。復興の地・宮城県(黒川郡富谷町)に震災後初めて誕生する全431区画の大型分譲地だ。同社が先進的スマートハウスとして展開する「グリーンファーストハイブリッド」による街区を軸に、全戸が太陽光発電システムや燃料電池を搭載した環境配慮型住宅「グリーンファースト」である。開発が終了すれば、まち全体で消費する電力量の1.7倍の発電ができ、いわば「まち全体が発電所」の役割を果たす。また、家族や近所との「絆」が見直されている昨今、これまでのノウハウを活かして「ひとえん」と名付けたコミュニティづくりも積極的に展開している。積水ハウスでは、この「スマートコモンシティ明石台」を皮切りに、分譲を開始した「スマートコモンステージけやき平」(茨城県古河市)、間もなく分譲を開始する「スマートコモンステージ瀬谷」(横浜市)の他、千葉県、山梨県、香川県、福岡県など、全国各地でスマートタウンを計画し、展開する構えである。
この積水ハウスに追随するように、他の住宅メーカーもスマートタウン計画を加速。パナホームは、「街まるごと事業」の一環として、今年6月に兵庫県芦屋市に「パナホーム スマートシティ潮芦屋」を、大阪府堺市に「パナホーム スマートシティ堺・初芝」を計画。共に分譲も開始している。さらにパナソニックが、グループ企業らと共に神奈川県藤沢市でスマートタウン構想を掲げ、2013年度にまちびらきを予定しているなど、スマートタウン構想は住宅メーカーだけでなく様々な業種を巻き込んだ大きな潮流となりつつある。
住宅メーカー各社が計画し、一部では入居も始まっているスマートタウンであるが、電気自動車や家電との連携だけでなく、スマートハウス同士の連携や、ICTを活用した行政サービスとの連携など、今後のスマートタウンに求められる要素は多い。但し、スマートタウンを実現するための個別の技術は積み上げられ、世界的に見ても日本は先進の技術を有していると言ってよい。しかし、スマートメーターの規格統一や家庭・オフィス・工場・公共施設といったまち全体のエネルギーマネジメント(スマートグリッド)のルール化などクリアすべき課題も未だ山積している。国による明確なビジョンが示されず、許認可や規制などで行政の壁が厚い現状では、かつて太陽光発電がそうであったように諸外国にリードを許す展開にもなりかねない。環境技術はグローバル競争において日本を支える主要産業になり得る可能性が十分にあるだけに、国際競争力の観点で取り組んでいくことが必要ではないだろうか。