世界の主要経済指標(分析と市場の反応)6月29日分

2012年6月30日 16:54

■29日はEU首脳会議での合意内容がポジティブサプライズ

  現地時間28日に始まったEU首脳会議では、ファンロンパイEU大統領が日本時間29日未明、EU首脳は1200億ユーロ規模の成長促進策で合意したと発表した。欧州投資銀行(EIA)による融資拡大やインフラ向けのプロジェクト債が含まれることも明らかにした。

  さらに日本時間29日昼(現地時間29日未明)の共同記者会見で、ユーロ圏の銀行監督機能の一元化案を年末までにまとめ、新制度にはECB(欧州中央銀行)が関与し、7月に設立するESM(欧州安定メカニズム)による金融機関への直接資本注入を一定の条件下で可能とすることにユーロ圏17カ国首脳が合意したと発表した。また、スペインへのEFSF(欧州金融安定基金)とESMによる支援融資には、民間債権者より上位となる優先弁済権は付けないとした。さらにユーロ圏加盟国の金融市場安定に向けて、南欧諸国の国債買い入れなどにEFSFとESMを柔軟で効率的な方法で活用できるようにするとした。

  EU首脳会議に対する事前の期待感が後退していただけに、この合意内容がポジティブサプライズとなり、29日の世界の主要株式市場は、日本、アジア・オセアニア、欧州、米国、いずれも大幅上昇した。外国為替市場ではユーロ買い戻しが優勢になった。

■世界の主要株式市場は大幅上昇、為替はユーロが急騰

≪29日 日本≫

  5月全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.2%上昇となり市場予想と同水準だった。4月は同0.4%上昇だった。生鮮食料品除くコア指数では前年同月比0.1%下落となり市場予想を下回った。4月は同0.2%上昇で、5月は4カ月ぶりの下落だった。ガソリンの上昇幅が縮小したうえに、薄型テレビやノートパソコンなどの価格下落が影響した。6月東京都区部消費者物価指数は、生鮮食料品除くコア指数で前年同月比0.6%下落となり、市場予想に比べて下落率は縮小した。5月は同0.8%下落だった。

  5月有効求人倍率(季節調整値)は0.81倍となり、4月の0.79倍に比べて0.02ポイント上昇した。08年9月以来の0.8倍台で市場予想を上回った。5月完全失業率(季節調整値)は4.4%となり、4月の4.6%に比べて0.02ポイント低下し、市場予想以上に改善した。復興需要を背景に雇用情勢が改善傾向となった。なお5月就業者数(季節調整値)は6245万人となり3カ月連続で減少した。団塊世代が65歳を迎えていることも影響している。

  5月家計調査で全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の消費支出は28万7911円となり、実質ベースで前年同月比4.0%増加した。4カ月連続の増加で市場予想を上回った。自動車、エアコン、冷蔵庫などの購入費増加に加えて、パック旅行費が大幅増加した。一方では天候不順の影響で洋服などが減少した。なお季節調整済み全世帯消費支出は前月比1.5%増加、勤労者世帯の実収入は実質で前年同月比0.7%増加だった。

  5月鉱工業生産指数速報値(2005年=100、季節調整値)は92.4となり前月比3.1%低下した。2カ月連続の低下で4月の同0.2%低下に比べて市場予想以上に低下した。今年は5月の稼働日が4月に比べて少なかったうえに、自動車が欧州向け減少などで低下した。化学工業、一般機械工業なども低下した。生産予測指数は6月が前月比2.7%上昇、7月が同2.4%上昇だった。自動車向けに加えて、クリスマス商戦向けのゲーム機などの生産が増加する模様だが、今夏に予想されるエコカー補助金制度の終了による減速が警戒されている。

  5月新設住宅着工戸数は前年同月比9.3%増加の6万9638戸だった。住宅エコポイント制度効果などで4カ月連続の増加となり、市場予想を上回った。持ち家は同8.2%増加で2カ月連続の増加、貸家は同15.3%増加で5カ月連続の増加、分譲住宅は同4.4%増加で4カ月連続の増加となった。なお季節調整済み年率換算は90.3万戸となった。住宅エコポイント制度は7月中に打ち切られるため、その後の反動減に注意が必要となる。なお5月大手50社建設工事受注額は前年同月比0.9%減少した。

  日本株式市場は、主要経済指標に対しては反応薄で、午前は売り優勢の展開だった。しかし昼に伝わったEU首脳会議の合意内容を好感して大幅上昇に転じた。外国為替市場ではユーロが急騰した。

≪29日 アジア・オセアニア≫

  アジアの主要株式市場もEU首脳会議の合意内容を好感して上昇した。

≪29日 ユーロ圏≫

  ドイツ5月小売売上高指数(実質ベース)は前月比0.3%減少、前年同月比1.1%減少となり、市場予想を下回った。4月改定値は前月比0.2%減少(同0.6%増加から下方修正)、前年同月比4.3%減少(同3.8%減少から下方修正)だった。

  ユーロ圏5月のマネーサプライM3伸び率(季節調整済み)は、前年同月比2.9%だった。4月の同2.5%に比べて、市場予想以上に伸び率が加速した。

  ユーロ圏6月消費者物価指数速報値は前年同月比2.4%上昇となった。5月の同2.4%上昇と同水準で、市場予想とも同水準だった。原油価格下落などでインフレ圧力が和らぎ、ECB(欧州中央銀行)の利下げ余地が維持されたとの見方が有力な模様である。

  ドイツ議会は29日、下院および上院でESM(欧州安定メカニズム)と新欧州財政協定を可決承認した。ただし、憲法裁判所が承認するまでガウク大統領は署名しないとしているため、ドイツの批准は7月9日のESM発足予定日に間に合わない可能性がある。

  EU首脳会議での合意内容を好感し、スペインとイタリアの10年債利回りは急低下した。欧州株式市場は大幅上昇し、外国為替市場ではユーロ買い戻しが優勢だった。

≪29日 米国≫

  米5月個人所得は前月比0.2%増加となった。4月の同0.2%増加と同水準で市場予想とも同水準だった。米5月個人消費支出は、前月比横ばいとなった。4月改定値の同0.1%増加(同0.3%増加から下方修正)に比べて鈍化したが、市場予想と同水準だった。食品・エネルギー除くベースでは前月比0.1%増加となった。4月の同0.1%増加と同水準だったが、市場予想をやや下回った。自動車需要がやや後退した。

  米6月シカゴ購買部協会景気指数は52.9となった。5月の52.7に比べてやや改善し、市場予想も上回った。

  米6月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は73.2となった。速報値の74.1から下方修正され市場予想も下回った。

  米国株式市場は大幅上昇した。原油や金などの商品市場も大幅上昇した。EU首脳会議での合意内容がポジティブサプライズとなった。主要経済指標は強弱感が交錯したが反応は限定的だった。外国為替市場ではユーロ買い戻しの流れとなり、ドル・円相場でもドル買い・円売りがやや優勢になった。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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