「投資家生命」をかけた「政治決断」に躊躇する投資家はどうすべきか?=浅妻昭治
2012年6月18日 13:29
【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】
■原発再稼働の一歩先の先取りも一法
「何も決められない日本」などと内外から悪口雑言を浴びせられ続けられたためか、野田佳彦首相が、ついに立て続けに2つもの大きな政治決断をした。「政治生命」をかけた消費税増税関連法案の自民・公明両党との修正協議の合意と、「国民の生活を守る」ための関西電力 <9503> の大飯原子力発電所第3・4号機の再稼働である。国会会期末、夏場の需要期入りというそれぞれの落しどころのタイム・リミットをあらかじめ区切っておいて、一気に政治決断するのは、何だか本末転倒のような違和感も覚えるが、結果が吉となるか凶となるかどうかはともかく、止まっていた事態が、ワン・ステップもツー・ステップも動き出したことは確かである。
ことに原発再稼働は、関西電が、政治決定された前週末16日に再起動の準備作業に入り、7月上旬には3号機から発電を開始する。消費税増税関連法案は、会期末21日の採決を前にまだ与党・民主党内の党内調整という大きなハードルが待ち構え、紆余曲折、民主党の分裂、政界再編まで観測されているのとは、対照的に早期に実現する。
おかしいのは、こうした政治決断が、まったく株式市場のテーマとして取り上げられてこなかったことである。原発関連株が一部、動意付いたものの、安値圏での小動きの域を出なかった。それより株価を動かしたのは、前日17日に投開票されたギリシャ議会の再選挙とスペインに対する欧州連合(EU)の金融支援の動向であった。この動向次第では、世界経済、世界のマーケットが、あの「100年に一度の大津波」といわれたリーマン・ショックに再度、見舞われるとも懸念されただけに、野田首相の「政治生命」も「政治決断」も、かすんでしまったというところだろう。
今週の株式市場も、このギリシャの再選挙結果を受けたユーロ圏離脱問題、スペインなどの南欧諸国への波及、さらに6月19~20日開催予定の米FRB(連邦準備制度理事会)のFOMC(連邦公開市場委員会)の動向などがメイン・テーマとして影響するはずである。再度、円高反転するのか、円安が進むのか、株高か株安かは予断を許さない。
相変わらず「米国時間」、「中国時間」、「欧州時間」で株価が動き、「日本時間」の余地が狭められるとすれば、投資家も、野田首相を真似て「投資家生命」をかけた「政治決断」はなかなかしにくいということになる。前週末段階で、すでに「政治決断」した一部投資家が、TOPIX Core30の主力株に下げた株ほどよく戻るとばかり「リターン・リバーサル」買いを行なったフシがあるが、これもまだ先取り・先読みのし過ぎのきらいがあり、正解か不正解かは不確実である。
となると今週の市場も、材料株中心の展開となりそうで、その一角として注目したいのが、原発再稼働関連株である。再稼働関連株といっても、すでに動意付いたバルブ・メーカー株などの関連機器株ではなく、昨年3月に東京電力福島第1原子力発電所の事故が発生したときに動いた関連株である。
福島原発事故では、いまだに避難生活を余儀なくなれている被災者も多いだけに、不測の事態の再発を想定してこれを先取りして株価材料に取り上げるのは、忸怩たるところがある。しかし、大飯原発の再稼働で、次々と運転停止中の各電力の原発の再稼働が進むとしたら、野田首相の「国民の生活を守る」政治決断よりも一歩先を行って、不測の事態再発に国民各自も自ら「生活防衛」する可能性は高いのではないかと予想されるのである。「3.11」当時を思い出せば、関連株の全体像が浮かび上がってくることになる。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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