ソニーがブルーレイディスク技術を応用した細胞分析装置を発売
2012年6月12日 11:00
ソニーが、細胞を光学的に分析する細胞分析装置「フローサイトメーター」の自社開発第一号機として、セルソーター「SH800」を今秋より受注開始すると発表。ソニーが培ってきたブルーレイディスクなどのレーザー光学技術や光ディスク技術を応用することで、細胞情報の検出、分取機能の自動化を実現したことに加え、新開発のプラスチック製セルソーティングチップの採用により、測定作業の大幅な効率化を可能にした製品だという。
「フローサイトメトリー」とは、各種細胞を、その大きさや個数・細胞表面や細胞内部の情報(構造・機能・バイオマーカー等)について、光学的な計測手段により、分析・分取する手法のことで、血液・免疫・がんの研究分野や、iPS細胞・ES細胞などの幹細胞、再生医療の最先端研究分野において、その解析手段・装置として、重要な役割を担っている。フローサイトメーターは、微細なマイクロ流路内に、細胞を高速に流しながらレーザー光を照射し、そのレーザーが照射された細胞が発する微弱な散乱光や蛍光を検出することで、各種細胞の種類や大きさなどを識別するという。そしてこの原理が、高速回転する光ディスク上の微細な凹凸ピットをレーザー光で読み取るという、ブルーレイディスクなどの光ディスクの検出原理と酷似しており、今回の製品化に至った。
「SH800」は、セルソーティングの装置セットアップにおいて、レーザー光の光軸調整や、ソーティングのための電気的タイミング調整を完全自動化することにより、専任オペレーターによる複雑なセットアップや調整を必要とせず、研究者のワークフローの大幅な効率改善を実現。また、一般的なセルソーターでは、細胞を流す測定流路部分(フローセル)に、高価で洗浄に手間がかかる石英製で固定式のものを使用しているが、本製品では、光ディスクで培った微細加工技術を応用した新開発のプラスチック製のセルソーティングチップを採用。複数種類のチップから、測定する細胞の種類やサイズに応じて最適なチップを選択することができ、簡単に交換・装着することが可能になっている。
同日、富士フイルムが、新開発の再生医療用RCPを用いて細胞集合体内に欠陥を形成することに世界で初めて成功したことを発表。ソニーの新製品と共に、再生医療の進展に貢献する日本発の技術が続けて発表された形である。世界の再生医療市場において、研究開発の現場だけでなく、その為の機器の市場をも日本が牽引し得る。その可能性を感じさせる発表であろう。世界の何年も先を日本が進んで行けるよう、今後の研究開発にも期待したい。