株価は「過小評価」か「過大評価」か?市場予想を上回った好業績株で先打ちのトライ=浅妻昭治
2012年6月11日 13:26
【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】
ドラギ欧州中央銀行総裁に「市場は過小評価している」と凄まれた途端に、ユーロ安はユーロ高に反転し、世界同時株安は世界同時株高に変わった。世界のマーケットで暗躍し、売り仕掛けをした投機マネーも、何だか意外に素直に政策当局者の強腰に敬意を表してしまったようである。為替相場でも、投機筋は、日本政府、日銀の円売り介入に警戒感が強いなどとしきりにマーケット・コメントされている。
あのポンドを売り崩し「イングランド銀行を潰した」といわれたジョージ・ソロスが展開したような、1992年当時の英国政府の防戦用の資金量を見極めた大喧嘩を期待した向きは、肩透かしを食わされた思いをしたことだろう。実際に前週末に欧州連合が、スペインの金融支援に最大1000億ユーロ(約10兆円)もの資金を投入することに踏み切ったのをみれば、その資金量は1992年当時とは桁違いである。
ただ、この相場反転が、単なる売り方の買い戻しなのか、それとも「リスク・オフ」から「リスク・オン」への大きなパラダイム・シフトなのかについては、まだ微妙なところだろう。日経平均株価でみても、週足では7週間ぶりに陽足を立てたが、前週末8日の後場安が響いて、市場関係者が、週央まで期待していた「陽足包み足」の完全な示現には200円弱の未達となった。安値圏での「包み足」示現なら「大底打ち」とセールス・ト-クできたことになったのである。
今週以降も、政策相場の継続を示唆していることは間違いない。6月14~15日開催の日銀の金融政策決定会合、17日投開票のギリシャの再選挙、6月19~20日予定のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(連邦公開市場委員会)などの動向を巡って、政治家や政策当局者の決意を市場が「過小評価」しているか、「過大評価」しているか試すことになる。
しかも、この政策スケジュールの先をみると7月相場で、7月相場は、あの「二日新甫」である。荒れるといわれる「二日新甫」が、上に荒れてくれるならば大歓迎だが、下に荒れるようなら、それこそリーマン・ショックの再来を心配しなくてはならない。最近では、今年4月も「二日新甫」だったが、このときは日経平均株価は、600円幅の陰線を引いたのである。
「市場は過小評価」をしないことを祈るばかりだが、この7月は、また3月期決算会社の第1四半期(4~6月期、1Q)決算が、発表される時期にも当たる。上方修正銘柄が出るのか、下方修正銘柄が続出するのか、それとも今年1~2月の前期第3四半期(4~12月期、3Q)決算発表では、業績下方修正銘柄が、悪材料出尽くしなり、さらに日銀の追加金融緩和策の「バレンタインデー・プレゼント」も後押しとなって軒並み底上げしたが、この再現となるか、注目イベントとなる。そして市場がこれを「過小評価」せずに「過大評価」してくれれば、パラダイム・シフトの引き金にもなる。
その際、この引き金効果の加速銘柄として注目したいのは、今年4~5月の今3月期業績発表で、今期業績が増益予想で市場コンセンサスを上回っていながらも、その後、調整を余儀なくされた銘柄である。ここからの下値は、「リスク・オフ」ではなく「リスク・オン」としてぜひ先打ちのマークするところだろう。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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