世界の主要経済指標(分析と市場の反応)6月8日分

2012年6月9日 16:33

【6月8日の主要経済指標と市場の反応】

■米国株式市場はスペインの金融措置要請の報道で上昇

  8日の日本株式市場では、自治体労組のストライキによるギリシャ再選挙の延期懸念や、9日発表の中国主要経済指標への警戒感が強まり、株価指数先物取引が主導する形でリスク回避の売りが加速した。1~3月期GDP改定値、4月国際収支、5月上中旬貿易収支に対しては反応薄だった。アジアの主要株式市場も下落した。

  欧米株式市場はアジアの主要株式市場の下落を受けて売り優勢でスタートしたが、スペインが今週末にも銀行支援のための金融措置を要請する見通しとの報道を受けて銀行救済に対する期待感が広がり、欧州株式市場は下落幅を縮小し、米国株式市場は上昇に転じた。外国為替市場では、東京市場に比べてユーロ売りが一服した。

≪8日 日本≫

  1~3月期実質GDP2次速報値は前四半期比でプラス1.2%成長、年率換算でプラス4.7%成長となった。1次速報値の前四半期比プラス1.0%成長、年率換算プラス4.1%成長から上方修正となった。企業の設備投資が上振れた。市場予想も上回ったが反応は限定的だった。

  4月国際収支速報では経常収支が3338億円の黒字となった。3カ月連続の経常黒字だが、前年同月比では21.2%減少した。経常黒字幅は市場予想を下回った。内訳は貿易収支が4639億円の赤字、サービス収支が4986億円の赤字、所得収支が1兆3980億円の黒字、経常移転収支が1016億円の赤字だった。

  5月上中旬の貿易統計速報では、貿易収支は7487億円の赤字となった。輸出は前年同期比9.3%増加の2兆9885億円、輸入は同1.4%減の3兆7373億円だった。貿易収支の赤字額は、前年同期が1兆564億円の赤字だったが、自動車などの輸出が増加したため赤字幅が縮小した。朝方の外国為替市場では円売りが優勢になる場面もあったが、市場の反応は限定的で、午後にはリスク回避の円買いが優勢になった。

  5月景気ウォッチャー調査では、「街角景気」の現状判断DIが47.2となり4月の50.9に比べて3.7ポイント低下した。2カ月連続の低下で好不況の分かれ目となる50を3カ月ぶりに下回った。このため内閣府は総括判断を「景気は持ち直している」から「このところ持ち直しのテンポが緩やかになっている」に、9カ月ぶりに下方修正した。先行き判断は48.1となり4月の50.9に比べて2.8ポイント低下した。2カ月ぶりに50を下回った。

≪8日 アジア・オセアニア≫

  豪4月貿易収支(季節調整済み)は2.03億豪ドルの赤字となった。3月の12.80億豪ドルに比べて、市場予想以上に赤字幅が縮小した。悪天候や供給障害で落ち込んでいた鉄鉱石輸出の回復が寄与した。

  中国では前日7日に、中国人民銀行が政策金利(預金基準金利、貸出基準金利)を0.25%引き下げると発表した。想定外の利下げだったが、これを好感する動きは見られず、逆に9日発表の主要経済指標に対する警戒感につながった。

≪8日 ユーロ圏≫

  独4月貿易収支(季節調整後)は16.1億ユーロの黒字となった。3月の14.0億ユーロの黒字に比べて黒字幅が拡大した。輸出は減少したが、輸入が大幅に減少した。仏4月貿易収支(季節調整後)は58.0億ユーロの赤字となった。3月の55.7億ユーロの赤字に比べて赤字幅が拡大した。いずれも市場の反応は限定的だった。

  ロイターは8日、複数の関係筋の話として、スペインが今週末にも銀行支援のための金融措置を要請する見通しで、ユーロ圏財務相グループが9日に電話協議を行うと報じた。これに対して欧州委員会の経済・金融担当部門スポークスマンは「スペインが支援を要請した場合、11年に合意された指針に沿って利用できる手段が備わっている」と述べた。

  なおスペイン経済省は8日、銀行セクターの資本増強を特定するために実施している外部監査に関して、第1段階は6月21日までに完了する予定、第2段階の詳細な報告については7月31日までに完了する見通しであることを明らかにした。

≪8日 米国≫

  米4月貿易収支は501億ドルの赤字だった。市場予想をやや上回ったが、3月改定値の526億ドルの赤字(518億ドルの赤字から下方修正)に比べて赤字幅が縮小した。輸出は3月に比べて0.8%減少、輸入は同1.7%減少した。また対中赤字は245億ドルの赤字となり、3月の216億ドルの赤字に比べて赤字幅が拡大した。

  米4月卸売在庫は前月比0.6%増加となった。3月の同0.3%増加に比べて市場予想以上に増加した。在庫額は4835億ドルで過去最高となった。自動車やコンピュータ機器など耐久財在庫が同1.1%増加した。

  米国株式市場は売り優勢でスタートしたが、スペインが週末に銀行資本増強で支援要請するとの報道を受け、銀行救済に対する期待感が広がり上昇に転じた。米4月貿易赤字が縮小したことも支援材料だった。外国為替市場ではリスク回避の円売り圧力がやや和らいだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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