【介護サービス関連特集(2)】各社とも在宅医療・介護サービス分野の強化方針打ち出す

2012年3月25日 19:33

■拠点の増設、看護師の大量採用、介護士に対する医療補助行為の研修強化

  在宅医療を促進するために、訪問看護サービスなどに報酬が重点配分されると、従来型のサービスだけでは報酬減額改定の影響を受けて、売上高が減少する可能性もある。このため介護サービス各社ともに、拠点の増設、看護師の大量採用、介護士に対する医療補助行為の研修強化、医療機関との連携強化、さらに異業種との連携も含めて、在宅医療・介護サービス分野を強化する方針を打ち出している。

■介護サービス各社の事業戦略

  やまねメディカル <2144> (JQG)は、通所介護(デイサービス)を主力としている。介護行政の変化などにより小規模施設の優位性が顕著になったとして、小規模デイサービスセンターのFC事業を11年9月から開始した。

  セントケア・ホールディング <2374> (JQS)は、訪問系サービスを主力としている。改正介護保険法施行で導入の「地域包括ケアシステム」への対応としては、複合型介護サービス拠点の整備推進、認知症対応型サービスや訪問看護サービスの充実など、介護・医療サービスのメニュー強化と連携に取り組むとしている。また、介護保険請求ASPソフト販売や業務支援サービスも強化する。

  ツクイ <2398> (東2)は、通所介護(デイサービス)や訪問介護などの在宅介護サービス事業を主力としている。改正介護保険法施行で導入の「地域包括ケアシステム」への対応としては、デイサービスでの365日営業やサービス時間延長などに取り組んでいる。看護師の積極採用や理学療法士の配置などにも重点的に取り組む模様だ。

  メッセージ <2400> (JQS)は、改正介護保険法施行で導入の「地域包括ケアシステム」への対応として、訪問介護など在宅介護サービスを主力とするジャパンケアサービスグループ <7566> (JQS、上場廃止見通し)を連結子会社化した。西日本が地盤で介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が主力のメッセージと、東日本が地盤で在宅介護サービスが主力のジャパンケアサービスグループの組み合わせで、サービスや地域展開の補完という相乗効果が期待される。

  メディカル・ケア・サービス <2494> (名セ)は、主力の認知症対応型グループホーム事業を積極的に展開して、年間20棟以上の新規開設を目指すとともに、グループホームに小規模多機能型居宅介護を併設した複合施設を開設するなど、認知症介護に関する新サービスにも進出するとしている。

  ロングライフホールディング <4355> (JQS)は、介護保険に依存しないビジネスモデルの構築を目指していることが特徴だが、改正介護保険法施行で導入の「地域包括ケアシステム」への対応としては、在宅介護事業でのデイサービスやヘルパーステーションの新規開設などにより、ドミナント戦略での事業展開エリアの拡大を図るとしている。

  ワタミ <7522> (東1)は、11年4月~12月期累計実績で見ると、高齢者関連事業(介護事業と高齢者向け宅配事業)が収益柱となっている。介護事業は、介護付き有料老人ホーム「レストヴィラ」運営を主力として、デイサービスなども展開している。高齢者向け宅配事業は、関東、九州、関西を中心として展開し、東海、中国・四国、甲信越、東北でも新規営業所の開設を積極化し、エリアを拡大させている。

  施設型介護分野で最大手のベネッセホールディングス <9783> (東1)は、シニア・介護事業では、介護付き有料老人ホーム運営を主力として、在宅介護サービスも展開している。介護保険収入への依存度が低いビジネスモデルを構築していることが特徴である。12年4月1日付けで、介護付き有料老人ホームを運営するベネッセスタイルケアとボンセジュールが合併し、経営効率化を推進する。

  介護サービス最大手のニチイ学館 <9792> (東1)は、介護予防から在宅系介護サービス、居住系介護サービス、介護保険外サービスに至る、トータルな介護サービスのラインナップを強みとし、訪問看護サービスやセラピーサービスも展開している。利用者数は増加基調であり、改正介護保険法施行で導入の「地域包括ケアシステム」への対応として、訪問看護を含む拠点の新設、既存拠点の稼働率向上、家事代行サービスなど利益水準の高い介護保険外サービスの拡大を推進する。

  また、中国などでは今後の少子高齢化が予想されるため、国内で培ったノウハウを生かして海外展開を積極化させる動きもある。

  メディカル・ケア・サービス <2494> (名セ)は、中国やフィリピンなどで海外事業を展開し、介護人材不足への対応や収益基盤の強化を図る戦略を打ち出している。11年7月には中国の上海三毛企業と、中国における合弁会社設立に関する契約を締結した。また12年3月には中国の上海裕鵬と、中国・上海市で介護サービス事業を行う合弁会社を設立する基本合意書を締結すると発表した。

  ロングライフホールディング <4355> (JQS)は11年11月、中国・山東省青島市に、中国の新華綿(シンファージン)グループと合弁で、高級有料老人ホーム「新華綿・長楽国際有料老人ホーム」を開設した。中国の富裕層をターゲットに、今後10年で100カ所のホーム開設を目指している。インドネシアでの事業展開の準備も進めている。

  ニチイ学館 <9792> (東1)は、中国で福祉用具卸売事業を開始する。

  高齢者のケアには、医師、看護師、ケアマネジャー、介護士、薬剤師など多くの人が関わるだけでなく、24時間サービスを提供するためには、夜間に対応できるスタッフの確保も必要になる。このため、サービスの採算性確保、スタッフの業務効率向上、経営の効率化なども今後の課題だろう。

  市場は拡大基調だが、事業展開においては3年に1回の介護報酬見直しというリスクがあるだけに、M&Aも活用して総合的サービスを提供できる大手各社による寡占化が始まっているようだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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