三菱重工は中国の太平洋造船グループに技術供与、協業契約締結

2012年3月14日 11:00

 三菱重工は、中国の太平洋造船集団股份有限公司に対して商船建造分野の技術支援を行うことで合意し、12日、協業契約を締結した。先進企業からの技術導入により造船事業の強化を目指す太平洋造船グループと、技術供与を柱とするエンジニアリング事業展開を進めている三菱重工の思惑が一致、協業第一弾として、載貨重量トン数8万2000トン級のばら積み運搬船の共同開発に取り組むという。

 今回の協業は、太平洋造船グループが開発する新しい船型について、その船型開発を含む概念設計を三菱重工が提供することを柱とし、契約期間5年、以降の延長も可能とのこと。共同開発するばら積み船は、三菱重工のばら積み船ブランド「CROWN」シリーズの上位船型として、国際水準を上回る輸送効率、対環境性、操作・制御性などを追求するもの。三菱重工は、保有する関連技術を提供することで最適設計をサポートする。

 三菱重工は、世界経済危機などの影響で新造船市場が急激に縮小したことに対応するため、2010年に船舶・海洋事業の生産再編方針を決定。1905年創業の神戸造船所での商船建造を終了させるなど、高付加価値製品へのシフト、ならびに効率的な運営体制を整えて競争力の強化を進めいている。その一環、成長戦略の一つとして三菱重工はエンジニアリング事業を進めており、昨年の大島造船所およびインドL&Tシップビルディング社との契約に次いで、今回が3件目の技術支援となる。

 世界の造船市場で圧倒的シェアを占めるアジア地域。中国・韓国・日本がその中心を担っているが、近年は中国・韓国のシェアが急伸している。日本企業が造船市場で生き残る為には、その技術力で高付加価値を付けた造船を実施することであろう。技術自体を輸出することは、いずれ他国が、自国の技術としてその高付加価値造船を行うことを可能とする。今後、日本企業は、供与したもの以上の技術を持つことができるのか。日本の造船業界は今、岐路に立っているといえるのかもしれない。

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