【銘柄診断】J.フロント リテイリングはボックスレンジから上放れてトレンドが好転

2012年3月11日 12:16

【特集:小売(百貨店)関連銘柄診断】

  J.フロント リテイリング <3086> は、07年に大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合した持株会社である。百貨店事業(大丸松坂屋の大丸12店舗と松坂屋6店舗、および国内連結子会社の博多大丸、下関大丸、高知大丸)(鳥取大丸は非連結)を主力として、スーパーマーケット事業、卸売事業、その他事業(通信販売事業、クレジット事業など)を展開している。

  12年2月期通期の連結業績の見通しについては、売上高が前期比1%減の9450億円、営業利益が同1%増の205億円、経常利益が同2%減の207億円、純利益が同99%増の176億円、予想EPS(1株利益)が33円29銭、年間配当が7.0円(第2四半期末3.5円、期末3.5円)としている。純利益については、法人税率変更に伴う法人税等調整額の減少が寄与する模様だ。

  12年2月期の百貨店事業の月次売上で、既存店の売上高伸び率(前年同月比)を見ると、大丸松坂屋(大丸12店舗と松坂屋6店舗の合計)ベースで、11年3月が9.5%減少、4月が2.9%増加、5月が2.1%増加、6月が5.1%増加、7月が4.3%増加、8月が3.2%増加、9月が2.8%増加、10月が4.3%増加、11月が2.6%増加、12月が4.6%増加、12年1月が3.2%増加となった。12年2月は速報値ベースで2.2%増加となった。閏年で営業日数が1日多かったことも寄与した。

  11年3月は東日本大震災の影響で大幅減少したが、11年4月に全館増床オープンした大丸梅田店の好調が寄与して、11年4月以降は11カ月連続で前年実績を上回っている。ラグジュアリーブランドや時計・宝飾品などの高額品も好調な模様である。

  「新百貨店モデル」の構築を掲げて、顧客層の拡大、自主運営売場の強化、高効率オペレーション構造への転換、ウェブ通販の強化などによって、ライフスタイルのカジュアル化や、節約志向・価格志向というマーケット変化への適合に取り組んでいる。

  また大都市圏店舗の大型化を推進しており、11年4月に全館増床オープンした大丸梅田店は、好調に推移している。さらに12年秋には大丸東京店の増床オープンを予定しており、松坂屋銀座店については銀座6丁目2街区の再開発プロジェクトが進行している。

  11年3月には、雑貨ショップ「プラザ」などを展開するスタイリングライフ・ホールディングスを持分法適用関連会社化した。さらに、パルコ <8251> の株式33.2%を森トラストから取得して、持分法適用関連会社化(株式譲渡実行は3月下旬予定)する。

  株価の動きを見ると、11年1月の昨年来高値453円から、11年3月の東日本大震災直後の昨年来安値262円まで下落した後は、大勢として320円近辺~380円近辺でのボックス展開だった。しかし、週足ベースで13週移動平均線がサポートラインの形となって徐々に下値を切り上げ、2月下旬以降にはボックスレンジ上限を突破する展開となった。足元では400円台を回復して東日本大震災直前の水準に接近している。ボックスレンジから上放れてトレンドが好転した形だろう。

  足元の株価水準を指標面で見ると、12年2月期ベースの連結予想PERは12~13倍近辺(ただし純利益がイレギュラーのため参考にならない)、予想配当利回りは1%台後半、11年2月期ベースの実績PBRは0.6倍台の水準である。また需給面では信用倍率が0.2倍台と大幅売り長の水準である。低PBRの見直し、12年秋予定の大丸東京店の増床オープン効果期待などで、上昇余地があるだろう。また、松坂屋銀座店の再開発も材料視される可能性があるだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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