企業の理系女子を増やす支援体制
2012年3月5日 11:00
近年、大学や企業がセミナーや講演会を実施するなど、「リケジョ」として注目が集まる理系女子。しかし、統計局の調査によると、大学における理系学部の女性割合は、農学部で40%、理学部で26%、工学部11%と、未だに非常に低い状態にある。このように、男性社会のイメージが色濃く残る理系の道で、その最前線にいる女性たちはどのような生活をしているのであろうか。
ヤマハ発動機の材料技術部材料評価解析Grに在籍する木下千草氏は、そんな職場で活躍している理系女子の一人。小さいころから数学が好きで、高専で電子工学を学び、大学に編入してまでも電子工学の研究に没頭したという。現在は、市場への出荷前後に不具合が発生した部品について原因の究明を行い、問題解決・再発防止の対策をとるなど、モノ創りの信頼性に関わる重要な業務を担当している。「研究が目的の学生時代とは違って、納期があり、また、常にコストとシビアに向き合わなくてはなりません。そうした中で無事、不具合の原因を突き止めて、問題に直面している部署のみなさんに貢献できたときにやりがいを感じる」と話す木下氏であるが、一方では5歳になる子どもを抱える母親でもあり、仕事と子育てとの両立に悩むことも少なくないという
ヤマハ発には、産前産後休暇と2年間の育児休暇制度があり、復職後の短時間勤務やフレックス制度、さらには事業所内託児所の設置など、働く子育て女性に向けての支援体制が整備されている。木下氏も子どもが4歳の頃までは、事業所内託児所を利用し仕事と子育てを両立。しかし、小学校入学を前に地元での友達づくりをさせてあげたいと自宅近くの保育園に入園させたところ、昨夏の自動車業界が木・金休業となった時期など、会社カレンダーと休みが合わない。そのため、一時的に再び事業所内託児所を利用し、随分助けられたという。また、子どものお迎えがあるため基本的に残業が難しく、17時半には仕事を切り上げ早朝に出社するなどの生活を送っている。
こうしてみると、理系女子特有というよりも、働く女性が共通に抱える問題が窺える。「今は子育てが優先、そしてもちろん仕事もがんばる」と仕事と子育てを両立させながら、「でもその期間が終わったら、最前線でモノ創りがしたい」と木下氏が語ることができるのも、社内に充実した支援体制が整備されているからであろう。男女共同参画白書によると、日本における女性研究者の割合は10%強。軒並み20%を超え、40%を超える国も少なくない欧米諸国と比較すると極端に少ない数字である。研究職の女性が増えることは、男性主体の研究に新しい視点が生まれ、今までにない成果を生む可能性を秘めている。男性の家事への積極的な参加や、支援体制の充実が働く女性を増やす。そのことが結果的に理系女子・女性研究者の社会参画を促進させるであろう。こうした企業による支援体制は、今はまだ大手企業が中心である。その裾野が一刻も早く広がることを期待したい。