株式評論家の海老原紀雄氏に『2012年の相場』を聞く

2011年12月8日 15:40

【株式評論家・海老原紀雄氏に株式市場動向を聞く】=犬丸正寛

★前半安・後半高へ、10月底入れ転機

――ずばり、来年の相場をどのようにご覧になっていますか。

 【海老原氏】 まず、年内はEU首脳会議を好感する形で日経平均は9000~9200円があるのではないでしょうか。ただ、その反動と、消費税問題など政治の不透明で年明け1~2月は軟調とみています。その上で、来年、年間を通してのデッサンということでは「10月頃が安値」になるとみています。

――その理由は?

 【海老原氏】 10月頃を境として、為替が現在の「円高」から「円安」に転換するとみています。今は、世界において消去法で「円」が買われています。しかし、日本の貿易収支の赤字傾向、さらに、最近の「復興債」を買ってくれた人に、オマケをつけるという話も気になります。国債が売れなくなっているのではないでしょうか。今年は欧米の政府赤字が悪材料となりました。次は、日本の財政赤字が悪材料としてクローズアップする心配があります。来年前半は、1ドル=70円くらいまでの円高の余韻は残ると思います。しかし、言われているような1ドル=50円というような円高はないと思います。むしろ、申し上げた背景から、10月頃が円高から円安へ転機となて株式マーケットは底打ちするとみています。

★行き場所のない資金が株式に、材料株相場本格化

――最近は、個人投資家の間で株を見るのもイヤだという人が多いようです。こうした問題に対しては、どのようにご覧になっていますか。

 【海老原氏】 東京電力 <9501> 、オリンパス <7733> など名門企業の株価が大きく下げたことで株を嫌がる気持ちは分かります。しかし、最近のマーケットで、「人気株」が活躍していることは見逃してはいけません。新しい動きが出ていると思います。復興債の件のように国債も買い難い、ブラジルなど海外投信も値下り、金も頭打ちの気配など、個人の資金は行き場所を失っています。このため、ダメだと思われている、「株」がむしろ注目される可能性は強いと思います。だからと言って、いきなり、優良株というわけにはいかないため、「人気株」が注目されていると思います。こうした動きは見逃してはいけません。全体は大きくは期待できなくても、来年は個別材料株が意外高となる可能性を含んでいると思います。

★「農業」、「関西銘柄」、「建造物更新」がテーマ

――どのような銘柄に注目すればよいでしょうか。

 【海老原氏】 注目の一つに「農業」があると思います。日本の農業従事者の平均年齢は68歳といわれています。農業を小手先でなんとかしようという政策では限界です。高齢となって農業継続が無理です。農業の工業化など思い切った策が求められるところに来ていると思います。農業を根本的に見直すところです。活躍する銘柄も出るはずです。もう一つは、大阪証券取引所が東京証券取引所と一緒になることで、「大阪銘柄」にスポットライトが当ると思います。PBRが1倍を割り込んでいるような銘柄は沢山あります。取引所が1つとなることで大阪銘柄の比較割安が目立つようになり見直されるはずです。来年には、こうした動きを先取る展開が予想されるでしょう。もうひとつのテーマは建造物の耐用年数でしょう。道路、鉄橋、橋、河川など最近の多発する自然災害からも注目されるでしょう。横河ブリッジホールディングス <5911> などは人気性もあり注目されるでしょう。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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