エコチル調査と子どものアレルギー性疾患
2011年11月16日 11:00
9月にライオンが行った小児科医師100人に対するアンケート調査で「診療を通じて、自身が子どもの頃と比べて児童の抵抗力の低下を感じるか」という質問に対し、50%の医師が「低下している」と回答した。
厚生労働省は1992年からアレルギー性疾患について研究事業を開始し、その治療法の推進を図るなど積極的に取り組んでおり、昨年発表された対策・現状・評価・課題をまとめた資料によると、1992年から2002年までの10年間に小学生の気管支喘息は40%も増加している。また、文部科学省が2007年に発表した喘息の被患率統計資料において、2003年以降だけに絞って見ても、小学生は右肩上がりに上昇している。高度経済成長期から昭和の後期に育った子ども達は、現在程気密性の高い住環境下で過ごすことはなかったことからも、ライオンのアンケート調査を一部裏付ける統計資料とも言える。
そんなアレルギー性疾患を誘因するアレルゲンには様々な物質があるが、近年、ハウスダストや住宅建材に使用される接着剤などが注目される機会は多い。ハウスダストにはダニの死骸などが多く含まれ、それが発生しやすい環境が過去に比べると増加してきたことも原因のひとつと言える。また、シックハウス問題で国の基準が厳しくなったことで、直接的な原因としては言われなくなった住宅建材の有害科学物質の濃度もアレルゲンとして有名だ。
このように子どもの健康が危険視される中、環境省は子どもの健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現を目指し、今年から「エコチル」調査を開始した。
「エコチル」とは"エコロジー"と"チルドレン"を併せた造語だが、胎児期から小児期(13歳になるまで)にかけて、定期的に健康状態をチェックし、環境因子がその成長・発達にどのような影響を与えるかを調査する。この中にアレルギーに関する調査も含まれており、目指しているサンプルは10万組という大規模な調査だ。
この調査に賛同し、大手ハウスメーカーとして初めて企業サポーターの登録を受けたのが積水ハウスだ。
同社は早くからシックハウス問題に目を向け、室内の空気環境を配慮する住宅の研究を1990年代より開始、様々な成果を商品に反映してきた。そして、今年の7月には住宅性能表示制度で「特定化学物質」として選定されているホルムアルデヒド・トルエン・キシレン・エチルベンゼン・スチレンの5物質の室内濃度について、厚生労働省が定める指針値の1/2以下を実現した空気環境配慮仕様「エアキス」を主力の鉄骨戸建商品に標準採用している。この「エアキス」は5物質の濃度軽減率が子どもを基準にしていることを最大の特長としており、第三者機関で室内の化学物質濃度を分析・評価した結果を「性能評価書」として発行しているという徹底ぶりだ。
気密性の高い住宅が当たり前になり、住まい手は一昔前よりも快適な暮らしを実現できるようになったのは間違いない。だが、気密性が高い分、室内にアレルゲンがたまりやすい環境を生み出している可能性もあり、子どもの健康のためにも、空気環境への配慮はますます重要になってくる。同社がこの調査をサポートすることで、アレルゲン撲滅を目指す住宅の研究が進み、その成果が世の中に普及することを期待したい。