【相場展望】円高やタイ洪水の影響含めて主要企業の業績動向にも関心

2011年10月30日 15:12

【株式市場フューチャー:10月31日~11月4日の株式市場見通し

■海外の重要イベントで様子見ムードの可能性

  来週(10月31日~11月4日)の日本株式市場(3日は休場)では、ユーロ圏の債務危機に対する過度な警戒感は後退したが、引き続き海外要因に神経質な展開に変化はない。3日が休場ということもあり、海外の重要イベントの結果を見極めたいとして、様子見ムードを強める可能性が高いだろう。また外国為替市場でのドル安・円高進行や、タイの大洪水に伴う業績への悪影響も懸念材料となるだろう。そして主要企業の7~9月期決算発表がほぼ出揃うため、業績動向次第の個別物色の展開となる可能性もあるだろう。

  前週(10月24日~28日)の日本株式市場では、日経平均株価(225種)、TOPIXともに週間ベースで2週ぶりに上昇した。日経平均株価の週末28日の終値は9050円47銭となり、終値ベースで9月1日(9060円80銭)以来となる9000円台を回復した。ドル・円相場での円の戦後最高値更新や、タイの大洪水による企業業績への悪影響が懸念要因だったが、26日のEU・ユーロ圏首脳会議で債務危機拡大阻止に向けた包括戦略を合意したため、当面の過度な警戒感が後退した。

  ユーロ圏の債務危機問題に関しては、26日のEU首脳会議およびユーロ圏首脳会議で、危機拡大阻止に向けた包括戦略に合意した。合意内容は、域内銀行の資本増強については狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を12年6月末までに9%に引き上げる、EFSF(欧州金融安定基金)の規模については実質的な支援能力をレバレッジにより現在の約4倍の1兆ユーロに拡大する、ギリシャ債務減免の民間負担については民間銀行が自発的に50%削減する、の3点としている。EBA(欧州銀行監督機構)では、欧州の銀行が9%の中核的自己資本比率を満たすために必要な追加資本規模について1060億ユーロと試算している。銀行の自己資本増強の進捗、EFSFのレバレッジ手法、さらには必要な資金の調達・確保などの面で不透明感を残しており、債務危機問題が根本的に解決したわけではない。しかし最大の懸念材料に一定の結論が得られたことで、当面の過度な警戒感は後退した形である。

  米国の主要経済統計には依然として強弱感が交錯しているが、安心感につながる指標も目立ち始めた。25日には、米8月S&Pケース・シラー住宅価格指数と、米10月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)が市場予想を下回った。しかし26日には、米9月新築住宅販売件数が市場予想を上回り、米9月耐久財受注は前月比0.8%減少したが非国防資本財受注(航空機を除く)が同2.4%増加した。27日には、米第3四半期(7~9月期)実質GDP(国内総生産)が前期比2.5%増となり、前期の同1.3%増を上回った。28日には、米9月個人消費支出が前月比0.6%増で3カ月連続の増加となり、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は速報値から上方修正された。

  米主要企業の好決算も相場を支える要因となっている。21日以降に発表した米マクドナルド、米ハネウエル・インターナショナル、米キャタピラー、米ボーイング、米メルク、米シェブロンなどの決算や業績見通しが好感された。また24日には、英HSBCが発表した中国10月製造業購買担当者景気指数(PMI)が改善した。中国の金融緩和観測の広がりとともに、中国の景気減速に対する過度な警戒感も和らいでいる。

  前週末28日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均株価が前日比22ドル56セント(0.18%)高と小幅に3営業日続伸した。S&P500株価指数も小幅に3営業日続伸した。ナスダック総合株価指数は3営業日ぶりに小幅反落した。前日までの大幅上昇で利益確定売りが出やすい状況だったが、米9月個人消費支出が前月比0.6%増加したことや、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値が速報段階から上方修正されたことを好感した。米メルクや米シェブロンの決算も相場を支える要因となった。

  そして来週31日の日本株式市場でも、米国株式市場の流れを受けて堅調なスタートを期待したいところだが、前週後半に大幅上昇した反動もあり、利益確定売りが優勢のスタートとなりそうだ。外国為替市場のドル・円相場での円高進行や、タイの大洪水による企業業績への悪影響に対する警戒感も強いだけに、積極的に上値を追う展開は期待し難いだろう。また海外では、11月1日~2日の米FOMC(連邦公開市場委員会)の声明発表、およびバーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見、11月2日のECB(欧州中央銀行)理事会の金利発表とドラギ新総裁の記者会見、11月3日~4日のG20首脳会議、そして11月4日の米10月雇用統計などの重要イベントが続くため、結果を見極めたいとして積極的な売買は手控えられそうだ。

  外国為替市場での円高進行は、日本の株式市場における懸念要因となっている。ドル・円相場については、10月21日の海外市場で1ドル=75円78銭、25日の海外市場で1ドル=75円73銭、26日の海外市場で1ドル=75円71銭、27日の海外市場で1ドル=75円67銭まで上昇し、円の戦後最高値更新が続いた。ユーロ・円相場については、26日のEU・ユーロ圏首脳会議で債務危機拡大阻止に向けた包括戦略を合意したため、当面の過度な警戒感が後退してユーロが買い戻され、週末28日には1ユーロ=107円台に円が下落した。

  タイの大洪水も終息のメドが立たず、現地の生産停止が長期化する見通しとなっている。代替地での生産なども検討されている模様だが、自動車、家電製品、IT製品の分野では、部材・完成品の世界生産が停滞する可能性が高まっている。さらに、加工食品などの生産にも影響が広がる可能性があるだけに、為替の円高進行とともに、日本の主要企業の業績への悪影響が懸念材料となるだろう。

  テクニカル面で見ると、日経平均株価(週末28日時点で9050円47銭)の移動平均線に対する乖離率は、25日移動平均線(同8689円77銭)に対してはプラス4.15%、75日移動平均線(同9040円48銭)に対してはプラス0.11%となった。25日移動平均線が下値支持線となり、75日移動平均線も突破した形になっている。当面は75日移動平均線を意識した展開となりそうだが、日経平均株価9000円台固めがポイントだろう。

■注目スケジュール

  来週の注目スケジュールとしては、国内では、10月31日の9月住宅着工戸数、9月大手建設受注、11月1日の9月毎月勤労統計、日銀金融政策決定会合10月6日~7日分議事要旨、2日の10月マネタリーベースなどがあるだろう。

  海外では、10月31日のユーロ圏9月失業率、ユーロ圏10月消費者物価指数速報値、米10月シカゴ地区購買部協会景気指数、11月1日の豪中銀理事会(金利発表)、中国10月PMI、英第3四半期GDP速報値、米9月建設支出、米10月ISM製造業景気指数、米10月自動車販売台数、米週間チェーンストア売上高、米週間レッドブック大規模小売店売上高、米FOMC(連邦公開市場委員会)(~2日)、2日の独10月失業率、ユーロ圏10月製造業PMI改定値、米10月ADP雇用リポート、米10月企業人員削減数、米住宅ローン・借り換え申請指数、米FOMC声明発表およびバーナンキFRB議長の記者会見、3日の豪9月小売売上高、ECB(欧州中央銀行)理事会(金利発表と記者会見)、米9月製造業新規受注、米9月耐久財受注改定値、米10月ISM非製造業景気指数、米10月チェーンストア売上高、米第3四半期労働生産性・単位労働コスト速報値、米新規失業保険申請件数、G20首脳会議(~4日)、4日の豪中銀の金融政策に関する四半期報告、独9月鉱工業受注、ユーロ圏9月生産者物価指数、ユーロ圏10月総合・サービス部門PMI改定値、米10月雇用統計、G20首脳会議(最終日)などがあるだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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