『決算横目に上値を試す展開』を予想=犬丸正寛の相場展望

2011年10月28日 19:01

  来週(10月31日~11月4日)は、『決算を横目で睨みながら上値を試す展開』だろう。日経平均は場中値ベースで9月2日以来、ほぼ2ヶ月ぶりに9000円台を回復した。この勢いで一気に上値追いを期待したいところながら、「企業業績の不透明感」が頭を押えそうだ。

  「EU包括戦略」会議の合意で、当面は、「ヨーロッパ発の金融不安」は回避された。NYダウは8月2日以来となる1万2000ドル台に急伸、好感した。合意の中身は、「民間銀行のギリシャ債務の5割棒引き」、「銀行の資本増強」、「金融安定化基金の拡充」というもの。5割棒引き以外は、実行となると簡単ではないだろう。資本増強、基金拡充について、二つ返事で資金を出してくれるところがあるとは思えない。仮に、銀行が公的資金に頼れば、経営は縛られることになる。

  金融不安・混乱の起きたあとの経済活動は概して芳しくない。欧州は「国債」、日本は「不動産」という違いはあるものの、不動産バブルが弾けて金融不安に落ち込んだ日本は、いまだに後遺症になやまされ、内需不振が続いている。当然、今後のヨーロッパでも貸し渋りや信用力の低下から経済活動は長期低迷の懸念がある。ヨーロッパ輸出で潤ってきた新興国への影響もまぬがれないだろう。

  ヨーロッパ、振興国の経済活動が鈍ればアメリカへの影響も避けられない。その中でのNYダウの急伸ということだから、当然、上値には限界が予想される。とくに、NYダウには今年7月7日の1万2753ドルと、7月21日の1万2751ドルで、相場を見る人がもっとも嫌がる「ダブルトップ」の天井足が出ている。欧州の金融不安問題が根本的に解消されないと、この水準を本格的に上抜くことは難しいだろう。

  日本は、「決算発表」が本格化している。これまでの状況では、第1四半期(4~6月)以降は、東日本大震災後の生産回復が寄与することから明るい見通しだった。しかし、夏場にヨーロッパでの金融不安、そして円高が加わった。この点の影響は任天堂 <7974> や日本写真印刷 <7915> など欧州依存の高い京都銘柄等に業績悪化が顕著な形で現れている。それでも、株価にはかなり織り込んできていた。

★「タイ洪水」の影響判明は先へズレ込み上値圧迫に・4月からの超閑散でシコリなく売物は枯れている

  しかし、ここに来て、「タイ洪水」の影響が加わった。企業業績を見るうえで困ったことに、被害額が確定できていないことだ。このため、今度の決算発表時予想には十分反映されない。11月後半~12月頃に被害額が表面化するものとみられ、企業業績はまだ安心できない状況である。

  ただ、4月以降の超閑散相場で、「シコリ」はあまりない。このため、売物が比較的少ない中で上値を追う可能性はある。当面の上値のフシは場中値で9098円(9月1日)、次いで9150円(8月16日)。ここを抜くと、9800円程度までは比較的真空地帯。第3次補正予算の閣議決定で復興需要の本格化を手がかりに、NYダウ次第では9800~1万に挑戦する可能性なしとは言えない。しばらくは上値を試す展開だろう。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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