体内で電気をつくりだすバイオ燃料電池、生体実験に成功
2011年10月19日 12:30
capra 曰く、
仏ジョセフ・フーリエ大学の研究チームが体内でエネルギーを作り出すバイオ燃料電池を生体内で機能させることに初めて成功したそうだ (BBC News の記事、本家 /. 記事より) 。
バイオ燃料電池は一極がブドウ糖から電子を取り去り、もう一極が酸素と水素にその電子を渡し水を作り出すというものであり、電極を回路に繋いで生じた電流をペースメーカーなどの体内装置の電源とすることが期待されている技術であるという。原理としては非常に単純なものであり、人体には常にブドウ糖も酸素も存在するため仮定の話とはいえ無限に機能し続けることが可能とのこと。研究チームはナノテクノロジーを用いてこの原理をほぼそのまま実現したバイオ燃料電池を開発し、生体内で機能させることに初めて成功したそうだ。このバイオ燃料電池の片方の電極はカーボンナノチューブとブドウ糖酸化酵素とを混ぜた圧縮物から成り、もう一方の電極はカーボンナノチューブとブドウ糖およびポリフェノールの酸化酵素の混合物から成り、電流はプラチナのワイヤーに流れる仕組みであったとのこと。電極は酵素やナノチューブが体内に流れ出ていかないよう特殊な素材で保護し、更に全体も体内の免疫システムから守るメッシュ素材で保護したそうだ。
研究チームはこの電池をラットの体内で 40 日間動かし続けることに成功したとのこと。ラットに生理的、また行動面での副作用は確認されず、今後は牛などより大型の動物で実験を行っていく予定とのこと。人工臓器の研究は日々進んでおり、心臓だけでなく腎臓や膀胱括約筋などの電動臓器、また電動の手や指、目なども開発されているが、電力の供給は全てに共通する問題であるという。例えペースメーカーなど消費電力の比較的少ないものであってもバッテリーの寿命に応じて平均して 5 年に 1 回バッテリーの交換手術が必要であるという。70 歳でペースメーカーを埋め込んだ人がその後 20 年生きたとして、3 回はバッテリー交換のためだけに手術を行う必要があり、単に不便なだけでなく合併症のリスクにさらされることになる。人工腎臓や四肢などに至ってはさらに大きな電力を必要とするため現在では電池の使用は現実的ではない。
実用化にはまだ長い道のりだというが、研究者らは酵素の働きの向上などブレイクスルーは期待できると明るい見通しを持っているという。将来的には現在の 50 倍の電力を供給可能にし、より多くの電力を要する人工臓器の実現に貢献したいとのことだ。
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