現代を生き抜くためのノウハウ満載!中小企業IT活用実践手法:第11回 経産省「IT経営力大賞」の事例紹介2(食品製造業)

2011年10月3日 11:43

■さまざまなIT課題が山積
 経済産業省IT経営力大賞2011年優秀賞を受賞した東海物産株式会社様(以下:東海物産社)は、筆者がITコーディネート活動でご支援を開始する前に様々なIT活用上の課題が山積していました。

 食品メーカー間では自社の在庫を極力少なくして在庫ロスやコストを抑えるため短納期で小ロットを発注する状況が続き、以下の様な顧客からの要請が高まっていたと言います。
①低価格化の要請で競合ライバルとの関係もあり値上げが難しい状況。
②原材料価格、仕入原価等の上昇原料や石油高騰傾向は変わらない状況。
③人件費、賃借料等の固定費削減

 このような状態で東海物産業務プロセスに置いては全体最適化を目指したIT経営前の基幹システムは、ロット管理やトレサビリティー管理(食品業界の法律により3年履歴を残す)を行うために手入力や手計算を行い対応行っていました。

 そこで、東海物産社は全社的に分散した業務とITの統合化を図り業界標準化を行うことと同時に、業務の改革を行う方針により平成20年からIT経営に取り組み始めました。

 当初はグループウェアによる全社の情報共有基盤構築からスタート、その後、平成21年から各業務のリーダーを集結してプロジェクト発足させました。鎌田常務をプロジェクトマネージャーとして、ITコーディネータの筆者(阿部満)も参画を行い、全社一丸の次世代基幹システムと製法管理システムを導入、現在ではIT経営による全社改革が行われました。

■会社全体の業務フロー分析とあるべき姿の全体最適化活動の効果
 食品法規やあふれかえる基準情報、食の安全に対しての消費者の要求に対して、食品メーカー側としてはトレサビリティーの要求に対して、東海物産では原料管理がデータベースで検索と対応が可能となり、お客様である数多くの食品メーカーに対して迅速に原料のトレサビリティー情報を即答できるようになりました。

 結果として東海物産のみならず、取引先食品メーカー企業側の生産性向上や顧客満足度向上にも寄与できたと言います。具体的には直接的及び間接的な効果は次のような効果がありました。

①新基幹システムを導入したことの効果
→基幹業務の情報を一元管理したことで全体最適化が進み、労働生産性が格段に向上しました。
→新基幹業務の情報を一元管理したことで各組織内間の意思決定の合理化が進みました。
②新基幹システムと製法管理システムと情報連携した効果
→担当者2名の人件費が50%削減→額面として毎月10万円の固定費削減効果となりました。
③顧客満足度の向上の効果
→顧客依頼対応力50%向上

 その他、社内(社員間)の情報共有ツールのグループウェアをIT経営に取り組んだ平成20年から導入し、全社の業務プロセスに従い、営業部からの日報情報による顧客情報を共有したことで研究部門が対応できるようになり、最終的に製造部門が製造する主要業務プロセスと間接業務の資材部、品質保証部、総務・財務部が各連携するための情報共有基盤が構築できました。

■単なるIT導入を目的にせずに会社全体の業務プロセス全体最適化が重要
 単なるIT導入ではなく、業務プロセス全体最適化に挑んだ東海物産は見事にその目的が達成できました。

 特に人間系に関しては川上である研究開発から川下の製造まで一連の調味料製造が可能となりました。そのことで、食品メーカーからの要求に対して機動性と小回りが利くことで、少量多品種生産も可能な業務プロセスとなりました。

 IT系に関しては製法管理システムと基新幹システムの情報連携を行っていることで所要量計算が適格となり、在庫過多等のキャッシュフロー上の悪化に対してリスクマネジメントを行うことが可能となりました。

 同時に、人間系の川上から川下までの業務に対してITが全体最適化されていることで、同時並行で業務の標準化を行うことができています。

 このように単なるIT導入を目的にせずに会社全体の業務プロセス全体最適化が重要であることがおわかりいただけたかと思います。

 では、次回は『経済産業省IT経営力大賞事例企業紹介3(精密加工業)』 についてお話していきましょう。是非、お楽しみに!!

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