交通違反画像の真正性は MD5 ハッシュ値の確認では不十分?

2011年9月14日 12:30

 ある Anonymous Coward 曰く、

 6 年も前の話題ではあるが、オーストラリアではスピード違反の取り締まりに使われる監視カメラ画像が改竄されていない事を示すのに MD5 ハッシュ値が使われていた。ある時、スピード違反をした被告とその弁護士がこの事を指摘し「MD5 では任意のハッシュ値を持つデータ列を生成可能なことが学会で報告されているので (参考: ちょうどその頃の/.J 記事) 、スピード違反の証拠として監視カメラ画像は無効である」と主張したところ、交通裁判所がこれを認めた、という事があったらしい (当時の CNET News の記事ITmedia エンタープライズの記事より) 。

 ITmedia エンタープライズの記事で萩原栄幸氏は、

 MD5 のハッシュ値については、今の PC で数十分もあれば同一ハッシュ値のデータ X と Y を生成できてしまうというレベルにある (前述の強衝突耐性の突破が可能) 。しかし、学会では「弱衝突耐性の突破」という話題すら聞くことがない。そのような状態で、原本データ M のハッシュ値 S と同じハッシュ値を持ちながら、原本と錯誤するような偽の原本データ N を容易に作成できてしまうというのは、甚だ眉唾ものである。天文学的な可能性が存在するとはいえ、裁判で証拠画像を認定しないのはどうみてもおかしいと筆者は感じるのである。それを言えば、現在の高度な科学捜査全体を否定することになってしまう。

 と述べており、MD5 に脆弱性があるとは言っても現状では指紋が偶然一致する確率があるので指紋は証拠にならないといっているようなものだとして疑問を呈しているのだが、いつ頃までこの疑問は有効だろうか? あるいは 6 年前のオーストラリアの事例は運良く辣腕弁護士に裁判官が騙されただけのことか、あるいは頭の悪い裁判官にあたってしまっただけのことなのだろうか?

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