日本気象協会、「総雨量2000mmの時代」の到来を示唆するコメントを発表
2011年9月7日 12:46
一般財団法人日本気象協会は7日、今回の台風12号の大雨を踏まえ、「総雨量2000mmの大雨が『想定外』の事象とはいえない時代に入ったと考えている」とのコメントを発表した。
台風12号は、紀伊半島南部に総雨量2000mmを超える記録的な大雨をもたらし、大雨に強いとされてきた紀伊半島においても、広範囲にわたり大規模な土砂災害が発生した。アメダス観測地点の72時間雨量をみると、奈良県上北山村で1652.5mmとアメダス観測史上1位の記録を更新し、さらに上位5位のうち2位と5位の記録も、今回の台風12号の大雨により更新されている。
これを受け、日本気象協会は、「総雨量2000mmは記録的な大雨ではあるが、『想定外』であったとはいえない。台風による大雨の条件には、台風の進行速度と海面水温が深く関係している。平成23年5月、当協会は、砂防学会の研究委員会の成果として、近年の台風災害事例や地球温暖化の影響を考慮し、平成17年台風14号と台湾を襲った台風MORAKOT(平成21年台風8号)を比較検討した結果、日本国内においても2000mmを超える大雨が想定されることを指摘した」とコメント。
さらに、「平成17年台風14号は、九州の南西部に1000mm以上の大雨をもたらし、大規模な土石流を発生させた台風。一方、台風MORAKOTは、平成21年8月に台湾を襲い、3000mmという記録的な大雨により、台湾南部の村を壊滅させる土砂災害(深層崩壊)を引き起こした。この深層崩壊が発生したのは、連続雨量が2000mmを超えた時だったとされている。 平成17年台風14号による宮崎県神門の総雨量は1322mmだったが、平成17年台風14号が台風MORAKOT並みのゆっくりとした速さ(時速5~10km程度)で進み、かつ勢力を維持したと仮定すると、神門の総雨量は2095mmに達すると見込まれる」と述べ、台風12号による「総雨量2000mm」は想定外ではなかったとの認識を示した。
日本気象協会によると、現在、台湾付近と日本の南海上とでは海面水温に2度近く差がある。しかし、100年後のシミュレーション結果では、日本の南海上の海面水温は、現在の台湾近海並みになると予想されているという。
「台風の進行速度や海面水温の変化を考えると、今後は日本付近でも、台湾と同様、2000mmを超える大雨を想定した対策が必要であるといえる」と同協会はコメントしている。