【読者と一問一答】アメリカ雇用改善でどうなるNYダウ?

2011年8月6日 17:11

★7月の11万7000人増加に対し強弱感

  【問い】 アメリカの7月雇用者数は回復したようです。しかし、発表を受けたNYダウは荒れているようです。どうなりますか。

  【答え】 5日、明らかとなったアメリカの7月・非農業部門の雇用者数は11万7000人の増加でした。事前予想は8万4000人程度でしたから予想をかなり上回るものでした。

  これを受けて、5日(金)のNYダウは朝方170ドル高と反発。しかし、一転、240ドル安と急反落。結局、引けは60ドル高の1万1444ドルでした。ご指摘の通り、たいへんに荒い動きの1日でした。

 マーケットに迷いのあることが背景にあると思います。雇用者数の増減は、アメリカGDP(国内総生産)の約6割を占める「消費」に対し、影響度の非常に高いものです。景気を左右します。

  その雇用者数は、「6月」には1万5000人増加まで落ち込んでいました。「7月」が11万7000人と6月比10倍に増えたことに対し、「本当だろうか」と疑問を持たれていることがあると思います。もちろん、統計数字そのものに対する疑問ではありません。本当に景気はこのまま力強く上向くのだろうかという疑問です。それが、NYダウ乱高下となって現れたと思います。

  2008年にリーマンショックを乗り越えるため、アメリカをはじめ世界各国は大量の資金供給で景気浮揚を図ってきました。景気底割れは避けられた反面、物価高(インフレ)と財政悪化を招き、とくにEUの財政は危機的で、アメリカも借金枠の拡大をかろうじて達成したことはご案内の通りです。

★強気=景気下降は一時的、慎重=新興国の金融引き締めが心配

  こうした財政問題から各国とも簡単には次なる景気対策の大判振る舞いはでき難くなっています。しかし、足元では中国など新興国は、インフレによる国内の社会反乱を恐れて需要抑制策に動いています。当然、先進各国の景気に対しては下押し作用となっています。

  そうした中での、アメリカの7月の雇用者数11万7000人増です。当然、心配するほどアメリカ景気は落ち込まないのではないかとの見方が出ていると思われます。では、6月の雇用者数が1万5000人まで落ち込んだのは何だったのか。この答えとしては、(1)冬~春のガソリン価格高騰で消費が抑えられ景気に悪影響を与えた、(2)日本の大震災の影響で部品不足などの影響が出た、ことなどが言われています。いわゆる、6月の落ち込みは一時的だったという見方です。

  慎重な見方では、7月の11万7000人増加こそ一時的という視点です。中国など新興国のインフレは想定以上で、これからも金融引き締め、需要抑制策は続くとの見方です。このため、8月以降、アメリカの雇用者数は再び伸びが小さくなるだろうとの指摘です。

  現時点では、強弱の見通しを判断することはできません。今後の景気指標を注意深く見守ることが大切です。ただ、現時点で、はっきり言えることは、雇用者数が11万7000人も増えたことで、「QE―3」(第3次量的緩和策)を催促し期待することが難しくなったことです。

★NYダウは景気に対して一喜一憂相場へ

  一方、5日のNYダウは安値1万1139ドルに対し終値1万1444ドルは、305ドルもの「下ヒゲ足」です。こうした長い下ヒゲ足をつける時は底打ちとなるケースが多いのです。NYダウは下値に届いたとみてよいでしょう。

  今後は景気に対し一喜一憂の動きが予想され、NYダウは下値水準でのモミ合いだろうと思われます。仮に、戻しても上ヒゲ足となることが予想されます。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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