ブランド見聞録:ブランドはマーケットを勝ち抜く経営ツールです:第5回 技術をブランド化する(1)

2011年7月27日 14:32

 正直なところ「技術のブランド化???」という方も多いのではないでしょうか。しかし、現在テレビCMでも盛んに流されている例を挙げると、ほとんどの方が「!!!」となるでしょう。技術のブランド化は、企業の知財を活用した今注目の“攻めのブランディング”手法なのです。

 実際に私が講師を務める“技術ブランディングセミナー”には、東京・名古屋・大阪会場とも、さまざまな企業の知財部やマーケティング部の方が数多く参加されています。

■独自の“技術”をブランド化して差別化を図る
 最近テレビCMで、シャープ「プラズマクラスター」やパナソニック「ナノイー」、マツダ「i-STOP」などをよく耳にしませんか?いずれも製品自体ではなく、その製品に組み込まれた技術のブランド化を狙ったものです。その最たるものは“パン、パパパ、パン!”のサウンドロゴでおなじみの「intel」でしょう。

 私たちはこれらを“技術ブランディング”と呼んでいますが、企業や製品、人材のブランディングと本質的には同じで、ターゲットからの信頼を勝ち取り、マーケットにおいて技術のみならず、その技術を搭載した製品、開発した企業自体も中長期的に競争力のあるブランドになることを目指しています。

■B2C企業にも、B2B企業にも有効なブランディング手法
 しかし、“技術ブランディング”が他のブランディング手法と違う点が一つあります。それはブランディングの対象が“技術(独自の技術、ノウハウ、素材、部品、システム等)”であり、その“技術”を活かせる多種多様な業界・業種にも訴求することができということです。もっと簡単に言えば、自社の製品だけでなく他社の製品にも採用され、ビジネスチャンスが広がる可能性があるということです。

 前述した「intel」も好例ですが、TOTOの防汚技術である「HYDROTECT」は、自社の水回り製品のほか、塗料・住宅・自動車関連など40社以上に採用されています。それ故に“技術ブランディング”は、B2C企業はもちろんのこと、B2B企業が積極的に取り組むべきブランディング手法でもあるのです。

■古くて新しい“技術ブランディング”は進化する
 実は“技術ブランディング”は新しいようで実は古くからある手法です。企業が新聞や雑誌に掲載する技術広告、製品の横に書かれた「日本初」や「世界初」の表示、企業スローガンの「技術の日産」や「E&Eの東芝」、マツダ「ロータリーエンジン」、日立「からまん棒」、キリンビール「一番搾り」、昨今の変わり種としてはシャープ液晶テレビの「亀山モデル」も“技術ブランディング”の範疇に入ります。

 多くの場合、“技術ブランディング”は企業名や製品名では差別化が難しくなってきた時に威力を発揮します。例えば、その昔、ドア横に「DOHC」や「ツインカム」と書かれた車をそれだけでカッコ良いと感じたり、炊飯器を買う時に、○○炊きが良いか、△△炊きが良いかで迷ったりした経験はありませんか?手を替え品を替え“技術ブランディング”は世の中を浸透しているのです。

 次回のコラムでは、「今なぜ“技術ブランディング”が重要なのか?」、「“技術ブランディング”を進めていく上でのポイントは?」、「技術に自信があるB2B企業が陥りやすい罠とは?」…などに関して述べさせていただく予定です。

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