日銀の山口副総裁『空洞化懸念にとらわれず、思い切って国を開くべき』と発言

2011年7月24日 11:21

■「霞ヶ関発・兜町着」直行便

  日銀の山口廣秀副総裁は7月20日、長野県松本市で「経済講演」を行ったが、その中で、「国を開く熱意と工夫次第で、日本は、まだまだグローバル需要を取り込んで成長していく余地がある」と延べ、挨拶では、さらに「思い切って国を開く必要性がある」とも述べた。その後の記者会見では、早速それらについて、最近の更なる「空洞化懸念」との関連で質問が飛び、副総裁は次のように答えた。

  (1)GDPに占める輸出の割合ひとつとっても、日本はそう高いわけではない。日本に来る旅行客の数をとっても決して多くない。旅行客を増やすための工夫は、様々にあり得ると思うし、輸出競争力を高める工夫もいろいろあると思う。例えば、EPAやFTAもその選択肢の中に入る。これらのことを積み重ねていく努力が、今我が国には強く求められているのではないか。

  (2)空洞化懸念に対しては、バックグラウンドに何があるのかだが、一つは昨今の円高、もう1つは震災のリスク、さらにもう1つは、電力供給懸念だろう。ただ、こうした懸念が、企業の投資行動の変化あるいは企業の雇用行動の変化といった形で現実に現れているかというと、まだそういう状況にはなっていないと思う。7月1日に発表した短観の結果をみても、設備投資については、製造業が中心ではあるが、底堅い計画を維持している。国内の設備投資を減額し、海外の設備投資を増やすという企業行動が広がってきている状況にはない。

  (3)仮に空洞化が生じた場合に日銀として出来ることは、物価の安定のもとでの持続的な成長を実現していくということだ。そのことを通じて企業が日本国内において投資をしたり雇用を増やしたりすることについて、少しでも安心感を持って行動出来るような環境を作っていくことが非常に大きい。

  (4)もう1つは情報発信。経営者は様々な情報を捉えながら経済の先行き、業界の先行きを展望して、投資行動を決めていく。その際に、日銀が経済の先行きをどのようにみているのか、あるいは日本経済の先行きをより明るいものにするためにどういう政策行動を取っているのか、これらの情報は企業経営者の投資行動ないし雇用に対するスタンスにそれなりに影響を与えるものだと認識している。

  「国内の設備投資を減額し、海外の設備投資を増やすという企業行動が広がってきている状況にはない」との、「短観」に基づいての発言は、「節電ムード」「エネルギー不安」の中で、わが国の産業構造の「空洞化」が一挙に進展するのではないかとの懸念の最中、押えておくべき経済的「情報」であろう。だが、空洞化懸念に対して日銀に出来る方策となると、相変わらず「物価安定」と「持続的成長」、そして経営者のための「情報発信」という「優等生的な答」では何とも物足らないというか迫力に欠けるといわなければならない。民主党政府が機能麻痺を起こしている現在、日銀、中央銀行はもっと行動的で、力強くあって欲しいものだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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