天井売らず、底買わず=犬丸正寛の相場格言

2011年7月7日 10:30

■天井売らず、底買わず

  株価のピークで1円の狂いもなく売り、1円の狂いもなくボトムで買う・・・。株を売買する人にとって理想の姿ではあるでしょうが、しかし、そうはいかないのが現実です。株をやった人なら十分に分かっていることですが、にもかかわらず、この言葉があることは、いざ実践となれば、人には欲が出て、ぴたり天井で売ろうとする気持ちが強くなるからです。

  とくに、こうした気持は株を買う時よりも、売る時のほうが強いようです。人はモノを買うことには比較的おおらかですが、売るとなればぴたり思った値段でないと承知できない感情的なところがあります。モノ作りの日本では、人さまの作った物には理解を示しても、自分が一生懸命作った物には思い入れが強いため売却値段にはこだわりが強いようです。しかし、株の世界では1円の狂いもない神業のようなことは株の売買では求めるべきではないと教えています。

  もちろん反対の声はあるでしょう。とくに、理数系の方からは、むしろ1、2円にこだわるべきだと。確かに、高性能のコンピューターを駆使し理論的な株価を算出して運用成績を挙げているファンドもあることでしょう。しかし、1998年には2人のノーベル賞・受賞のコンピューター・サイエンスの金融学者であるスタンフォード大学のマイロン教授と経済学者・ハーバード大学ロバートマートン教授がいたヘッジファンド「ロング・ターム・キャピタル・マネジメント」が破綻してニューヨーク株が大暴落した事実もあるのです。理屈だけではいかないのが株の世界です。

  実際の株の売買では、ほとんどの場合は、売った後に高くなり、買った後に下がり、くやしい思いをするのが普通です。もちろん、研究を重ね目標値を決めて売買することは大切なことですが、しかし1、2円のピンポイントにこだわらず、「このくらいになったら売ろう、あるいは買おう」という、大らかな気持ちが大切です。

  とくに、女性投資家の方には、この1、2円にこだわる人が多いようです。女性の方特有の少しでも安いところへ買いに行くという性格上、やむをえないところがあるのですが、株に関しては勝負事の色合いが強いのですから、買い物とは切り離して対処するくせをつけることが大切です。女性投資家の方には、売った後に高くなろうものなら、こちらの責任のようにいつまでも文句を言われると、証券営業マンの嘆きを聞きます。「頭と尻尾はくれてやれ」という格言があるくらいですから、株の場合は、真ん中のいちばんおいしいところだけを食べるように心がけるのが良いと思います。

  商売でも、あるいはサラリーマンでも一生懸命努力することは大切ですが、この世には相手のあることを忘れてはいけません。相手との関係で自分の努力がどのように発揮されるかなのです。世界一のイチロー選手の打率は決して10割ではなく3割台で一番なのです。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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