ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:第6回 会社を理解してもらうために(2)
2011年6月23日 12:27
今回は、主に会社からの情報提供の仕方、ポイントなどをお伝えしようと思います。
■場の使い方を考える
新卒採用の場合であれば、まず会社説明会を開催して、自社の紹介や説明をする機会を設けると思います。一方中途採用活動の中では、会社説明会を開催することはほとんどないと思います。では中途採用には会社説明が不要かというと、全くそうではありません。社会人経験があって会社選びの目が肥えているという点からすれば、むしろ新卒以上に会社説明に手間をかける必要があるはずです。
“それなら中途採用でも会社説明会をやればよいのか?”
もちろん可能ならばやるに越したことはありません。しかし以前のコラムで述べたように、中途採用は「スポット」活動ですから、一度に何人も集めて説明会を行うのは難しいでしょうし、人手に余力が少ない中小企業で、一人二人のために説明会をやるほどのマンパワーは割けないでしょう。「流れ」で捉える新卒採用とは異なります。
“ではどうするのか?”
これは新卒採用でも共通ですが、会社説明会は単に情報提供だけの場ではなく、“相互理解の場”であり、さらに“企業アピールの場”となります。これが目的だとすれば、説明会だけがそのための場ではありません。会社案内などの資料、ホームページの掲載情報、面接での質疑やその場を使っての説明など、方法はいくらでもあります。
要は“相互理解”と“企業アピール”という目的をしっかり意識し、その目的を達成するために、それぞれの場の使い方を今一度考え直すことです。限られた時間の中では、事務連絡の電話やメールでも、合間のちょっとした待ち時間でも、面接場所へ案内する道すがらでも、使い方次第で貴重な場になり得ます。
また、せっかくこれらの場を使おうという意識があるのに、それを、“応募者を観察すること”だけで考えている会社が多いようです。ここにプラスして、“会社を理解してもらうこと”にも使う意識を持っていただけると良いと思います。
■欲しい人材が望む情報を考え、アピールする
よく「欲しいタイプの人材がなかなか応募してこない」、「いい人が応募してきても辞退されてしまう」という話を聞きます。私がいたIT業界でいうと、エンジニアの仕事上では、顧客調整やチームマネジメントなどで、コミュニケーション能力や対人能力を要する場面が多いのに、応募者はどちらというとパソコンに向かってコツコツ作業することが好きなタイプの、おとなしめの人が多かったりします。
会社として欲しい人材というのは、その仕事に向いている人材ともいえるので、本来適性がある人に目を向けてもらえないのは、とても不幸な事です。しかし、世間一般の業界イメージや仕事イメージがありますから、それを突き崩すことは一企業ごときで簡単にできることではありません。特に「欲しいタイプの応募が少ない」のは、募集広告の出し方などで工夫の余地はありますが、市場動向や他社との競争力に左右されますので、特に中小企業が自社の努力だけで状況を改善するのは、なかなか難しい部分であろうと思います。
一方、「いい人に辞退されてしまう」については、自社の努力次第で改善できる部分があります。相手が気にしている部分やこだわっている部分を察知して、そこに向けた情報提供とアピールをすることで、お互いの理解度と信頼関係を高め、相手を前向きな気持ちにすることができます。アピールは、やり過ぎるとウソつきになるし、控えめ過ぎると伝わらないので、なかなかさじ加減が難しいですが、いい人をつかまえるためには絶対に必要なところです。
ここで大事なことは「自社のありのまま」と言える幅の中で、現状や将来を「前向きな言葉」で伝えていくことです。「自社のありのまま」を逸脱するとウソになりますので、その後の信頼関係にかかわりますから注意が必要です。「前向きな言葉」というのは、例えば「○○事業はやっていないんですよね・・・」と言って終わってしまうより、「○○事業より△△事業の方が将来性があると判断して、そちらを手掛けています」、または「○○事業は××という理由で、あえて手掛けていません」などと言った方が、会社の姿勢やポリシーまで含めて、より良い印象で伝えることができるという事です。
欲しい人材とのご縁をつかむためには、「相手に合わせて」、「適切な情報を」、「適切な言い方で」という事が重要になります。
■情報提供のいろいろなスタイル
情報提供の方法は、その会社によって千差万別です。
会社説明会を例にとり、以下のように分類してみました。(私の勝手な観点なので、単なる一例として見て下さい。)
誰が: 経営者主体型、人事部主体型、現場社員主体型 など
何を: 理念アピール主体型、事業アピール主体型、社風アピール主体型 など
どのように: 講義・プレゼン型、体験・ワーク型、対話型、映像・ビジュアル活用型、
パネルディスカッション型 など
これをご覧になって、「うちはこのタイプだ」とか、「これはやっているけど、こっちはやっていない」など、感想はいろいろあると思います。
私がお勧めしたいのは、この中のどれかではなく、できれば全部やっていただきたいという事です。いろいろな人が、いろいろな内容で、いろいろな方法を使って、それぞれ異なる切り口で伝える取り組みをして欲しいのです。人によって理解しやすい表現も共感しやすいツボも違います。だから「どのやり方が良い」ではなく「いろんなやり方が良い」のです。
・・・とは言っても人手が限られた中小企業、説明会に会社の主要人材が一堂に会するのは難しいでしょうし、どんなやり方でも相応の手間と準備が必要ですから、そう簡単にはできません。
理解していただきたいのは、話の中身や伝えたい内容は同じでも、誰が話すのか、見せ方や体験のさせ方をどうするのかで、受け止めが大きく異なるということです。ですから、いろいろな角度で見せるということを、意識的に行う事が重要になります。その上で、実際に全部やるには何かと困難が伴いますから、それぞれできる範囲で、次善の策を考え、異なる場を使いながら取り組むということになります。
例えば、
・経営者の話を聞かせたいが、その場には出席できないので、簡単なビデオ、またはメッセージテープを作成する。
・選考過程が進んだ段階で、面接以外の経営者懇談の機会を設ける。
・現場の様子を伝えるために、面接に若手社員も参加させ、その場で現場の仕事のことを語らせる。
・口頭では伝えきれない仕事内容を、現場体験ワークなどで疑似的に体験してもらう。
・社員の日常を知ってもらうため、ある社員の一日をスライドなどのビジュアルを使って見せる。
これ以外にもたくさんありますが、要は「誰が」「何を」「どのように」の組み合わせパターンを網羅して、いろいろな方法を考えていくという事になります。
皆さんの会社でも、自社の良さが伝わる、自社なりのやり方を工夫してみてはいかがでしょうか。
次回は、選考プロセスについて、考え方やポイントなどをお伝えしようと思います。