日本マイクロソフト・Windows Azure担当者に聞くWindows Azure導入

2011年6月23日 00:04

 Windows Azure特集企画最後となる本ストーリーでは、日本マイクロソフト・Windows Azure担当者へのインタビューをお送りする。

 先週の国民投票では「もっとも利用しているクラウドプラットフォーム」への投票受付を行っていたが、投票項目中ではWindows Azureの利用は3番目に多い環境であった。

 クラウド全体としても本格活用や導入はこれからといったところも多いと思うが、最近ではWindows Azureの導入事例も増え、ユーザーからは見えないもののバックエンドではWindows Azureを利用しているという例も多いようだ。そこで、実際のWindows Azureの導入事例や、どのような分野で導入されているのか、また日本マイクロソフトが考えるWindows Azure観について尋ねてみた。

  実際の導入実績として、なにか公にできるものがあればお教えください(国内外を問わず)。

 最近の事例では、FacebookアプリケーションをWindows Azure上で公開している例があります。たとえばエン・ジャパンが提供している友人ネットワークのビジュアル化と仕事探しアプリケーション「enTree Work」や、トヨタ自動車が協賛するFIFAクラブワールドカップのキャンペーンアプリ「TOYOTA HEAT! HEART! FOOTBALL!」などです。

 その他にもGREEのソーシャルゲーム「コンバットチョロQ」もWindows Azureから配信されています。もちろん、コンシューマ系以外のサービスも続々とWindows Azureで稼働し始めています。以下は最近リリースされたサービスです。

 オフィスフューチャーの眼底画像遠隔診断サービス「MORE system」 
 セカンドガレージのECサイト向け売上解析サービス「Fast for EC」 
 オービックの統合ポータル・グループウェア「OBIC7Hignel」 導入事例としては、どのような使用目的が多いのでしょうか? たとえばWebアプリケーションや短期的なプロモーションWebサイトといった一般公開されるWeb系でしょうか? それとも社内で閉じて使われる業務アプリなどが多いのでしょうか?

 コスト削減効果が高いためと思われますが、インターネットの公開を前提とした外向けWebサイトでの利用が目立ちます。また、それと同様にSaaSを提供するプラットフォームとしての利用も伸びています。こちらは業務アプリが多いですが、Webサイトと並んで注力している領域ですので、今後もますます増えていくでしょう。

  海外では日本よりもクラウドの導入が進んでいるような雰囲気がありますが、海外ではWindows Azureの立ち位置はどのように認識されているのでしょうか? 日本よりも普及は進んでいるのでしょうか?

 もちろん米国の方が事例数が多いのは確かです。ただ、外向けWebサイトでの利用が多いという傾向は日本と同様ですし、まだまだ成長過程であると言えます。そういった意味では、日本の優れたサービスをグローバルに広めることができる良い状況にあると言えます。

  Windows Azureの強みはどこにあると思われますでしょうか?

 コスト、信頼性、グローバルでのサービス展開が主な強みとなります。また、Windows Azureの話をする際に「Windows Serverベースである」というのは非常に大きいところだと考えています。多くのユーザーの方、パートナーの方が既に何らかの形でWindows Serverを使っており、その一部としてのクラウド利用という点ではWindows Azureの導入は考えやすいものになります。.NETのみならず、JavaやPHPといった言語を利用していても同様です。

  逆に、Windows Azureを利用するには向いていないような分野というのはあるのでしょうか?

 向いていない分野はないと言いたいところですが、既存システムの移行を前提にしている場合には向かないものもあります。例えばLinuxで構築されているシステムで、利用しているアプリケーションサーバーやコンポーネント等がWindows上での動作をサポートしていない場合、移行の障壁は高いと言わざるを得ません。

  現在クラウドサービスは各社から提供されていますが、Windows Azureが「競合」としてもっとも意識しているサービスはどれでしょうか?

 価格については、Amazon EC2やGoogle App Engineを意識しているのは確かです。ただ、市場自体がまだまだ成長の途中ですし、他社とは関係なく実現したいことはまだまだありますので、競合という意識はあまり高くはないです。もちろん、個別案件で競合した時は事情が異なりますが(笑)。

  Windows Azureはマイクロソフトの製品ということで、色々な誤解や勘違いを受けやすい傾向があると思います。利用を検討しているユーザーや企業がこんな勘違いをしていた(が、実は違う)という例があればお教えください。

 Windowsというブランドから、Windowsクライアントがクラウドから提供されると思われる方がいらっしゃいますが、Windows Azureのサービスでは提供する予定はありません。

 また、SharePoint ServerやExchange Server等の弊社サーバーを実行できると思われている方もいらっしゃいますが、Azureでの実行はできません。そちらは、Office 365というSaaSサービスで対応しています。

  Windows Azureの今後について、たとえば提供されるサービスの拡充など、現時点で明らかにできるものがあればお教えください。

 サービス拡充は随時行っていきますが、直近でリリース予定のものとしては以下があります。

 VMロール:ユーザー作成のWindows Server 2008 R2仮想イメージをWindows Azure上で実行する仕組み 
 Traffic Manager:複数DCでの動的ロケーション、負荷分散、災害対策を行う仕組み 
 Windows Azure Connect:自社運用環境のサーバーとWindows Azure間をセキュアに接続する仕組み どれも現時点で実際に利用しての評価が可能です。そのほか、Windows HPC Serverと連携した大規模並列処理や、SQL AzureのReportingや運用管理の拡充が予定されています。

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