銀行が頭を下げても貸したい会社、高い金利でも貸したくない会社:第4回 会社を成長させるための事業計画の書き方 その1

2011年6月16日 17:12

~まずは『事業計画を書く目的』を明確にすることが大切!~

■事業計画作成のコンサルティングのご依頼を受けた時にまず聞くこと
 事業計画作成のコンサルティングのご依頼を受けた時にまず「事業計画作成の目的は何でしょうか?」と必ずお伺いします。

 オフィス街の書店のビジネスコーナーでは、「事業計画作成ノウハウ」「様式&記入例つき、事業計画の書き方」といった事業計画(あるいは経営計画)の書き方を説明した本がたくさん並んでいますし、また最近では、インターネット上に事業計画の様式や記入例が無料でたくさん掲載されていますので、これらを活用し十分な時間さえかければ、事業計画という書類は作成できます。

 しかし、事業計画を書く目的が不明確なままだと、
・たくさんの様式は入手できたが、自社にとって必要な事業計画として、どのようなことを書けばよいかが分からない
・日々の業務に追われ、事業計画作成が後回しになる
・結果として、事業計画が完成しない
といったことが生じがちなためです。

■事業計画において必要なことは?
 事業計画において本来必要なのは、単に「本年度、○○事業に注力」「徹底的なコスト削減を図る」という文字や「売上目標○億円」「コスト削減目標○百万円」といった数字ではありません。

 自社のビジネスの現況や市場動向を明らかにした上で、顧客から見た競合他社に対する自社の位置づけを明確にし(※)、具体的な事業目標を設定し、明日からの行動計画と、その結果として目標とすべき財務目標なはずです。

 (※)言うまでもなく市場は速く大きく変化していますので、顧客が法人であろうと一般消費者であろうと市場における自社の位置づけを明確にする際、競合他社と商品やサービスを単に比較するのではなく、顧客から見た視点で整理することが大切です。

■事業計画の作成目的と、事業計画作成上の必要な視点
 事業計画作成の目的は、「社内向け」と「社外向け」にまず大きく分かれます。

 「社内向け」は、
①経営者自身の考えの整理・・・例えば決算を迎え、次年度の事業の方向性を整理したい。
②事業計画作成を通じた幹部の育成・・・例えば営業や製造など自分の担当部門だけでなく、会社全体ことを考える人材に育てるきっかけとする。
③社員の動機付け・・・例えば複数の事業がある場合など、事業間の相乗効果を明確にし、社員の一体感を高める。
などに分かれ、
「社外向け」は、
④ビジネスパートナーへの提案・・・例えば事業提携をする場合、相手にメリットのある計画を提示。
⑤金融機関への提出・・・例えば金融機関との付き合い上、慣例として企業側から自主的に提出、あるいは金融機関から決算前後に提出を求められる。
などに分かれます。

 さらに上記⑤金融機関への提出の場合は、自社の財務状況が良好な場合と財務状況が厳しい場合とに分かれます。財務状況が良好な場合は、金融機関はある程度余裕をもって企業を見てくれており「あまり細かいことは言いませんので、とりあえずしっかりと頑張って下さい」というスタンスですので、現状分析や経営目標など一通りの事業計画が書かれてあればとくに問題有りません(もちろん、新たな融資申込みの場合は、担保の状況にもよりますが、事業計画が精査されますので、しっかりとした事業計画が必要です)。

 一方、財務状況が厳しい場合、ビジネスの現状分析、明確な事業目標、具体的な行動計画、精度の高い財務計画など、すべての視点でしっかりとした内容の事業計画が必要となります。

 以上のようなことをふまえ、「今回、自社が事業計画を書く目的は何なのか?」が明確になれば、事業計画に書くべき項目が明確になってきます。

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