新社名で高成長期待の『クラウド市場』に本格展開するGMOクラウド=犬丸正寛の見聞記

2011年4月23日 14:40

【青山 満社長へインタビューを交えた展望】

★社名に「クラウド」採用は上場企業中唯一、株価は早くも好反応

  去る、4月1日から社名を「GMOクラウド」 <3788> (東マ)に変えた。その理由を同社の青山満社長(写真)は、「急速な成長が見込まれるクラウド市場への参入の強い意思表明です」と強調する。数多い上場企業中で、社名にクラウドをつけたのは同社が初めて。マーケットでは社名変更以降、株価は急伸し好感する動きとなっている。

  同社の旧社名はGMOホスティング&セキュリティ。事業としては、中小企業や個人業者をターゲットとして、ウェブサイトの公開や電子メール、アプリケーションの利用等に必要なサーバ群の機能をインターネットに繁げた状態で貸し出す「ホスティングサービス」事業が売上の73.8%を占め主力。次いで、ウエブサーバの固有ネーム認証と通信の暗号化を行い、機密情報などを安全に送受信することを可能とするSSLサーバ証明書発行サービスを柱とする「セキュリティサービス」(電子認証サービス)事業が19.7%を占める。

  ほかに、「ソリューションサービス」事業において、WEBコンサルティングサービス、オフィスコンサルティングサービス、スピード翻訳サービスなどを手がける。この事業の売上構成は6.5%。なかでも、2007年から手がけている「スピード翻訳サービス」は、インターネットを経由して24時間365日、顧客と専門分野の翻訳家をマッチングさせ、最短で30分で翻訳を提供できる。しかも、オンラインで夜間や週末でも手軽に翻訳依頼ができることから好評を得ている。サービス開始からの利用顧客は既に1万人を超えているという。

★同社の強さは、常にIT業界で先端を行くところ

  同社の強さはどこか。取材で強く感じたことは、常に、IT業界で先端を行くところに同社の強さがあることだろう。たとえば、業績を飛躍させることになったセキュリティサービス事業において、2007年に、当時、同社としては多額の資金を投じてサービスを始めた、『グローバルサイン』ブランドが利益に大きく貢献している。2010年12月期ではセキュリティ事業の営業利益は263.5%の大幅伸長だった。グローバルサイン発祥の地であるベルギーはじめ、英国、日本、米国、中国、シンガポールに拠点を置きSSLサーバ証明書などを提供しグローバル展開。その証明書数は発行ベースで前12月期は日本2万7377枚(09年12月期2万2985枚)、海外4万9592枚(同2万8144枚)の合計7万6969枚(50.5%増)に達している。グローバルサインブランド取得から3年超、思い切った投資成果が花を咲かせている。

  青山満社長にもう少し、事業の近況を聞いた。「海外では日本と異なり、ホスティングサービス事業者は独自に基幹システムを開発せずに既製のホスティングサービス用ソフトウエアを利用することがほとんどです。そこで、ホスティングサービス事業者が使用しているソフトウエアと当社の認証局システムである<ワンクリックSSL>が連携できる仕組みを開発しました。これによって、各国のパートナーとの代理店契約に加え、海外ホスティングサービス事業者経由でのSSLサーバ証明書の普及が拡大し販路拡大につながっています。また、アメリカでの個人情報保護規制強化により、法人などの身元を保証するクライアント証明書やPDF文書署名証明書といったサーバ証明書以外の利用が拡大したことを受けて、電子認証サービスの新しい利用提案も増えています」。

  そして、これから、新しいクラウド市場分野に展開する。さきほど紹介の翻訳サービスは、まさにクラウド型ビジネスのひとつだ。「前期(2010年12月期)より、事業展開を本格化したソリューションサービス事業では、<スピード翻訳サービス by GMO>や、中小企業向け各種支援サービスを展開しています。翻訳サービスは、国内の主要ポータルサイトと契約を締結するほか、アルクグループが運営する語学学習の総合ポータルサイト、海外進出サポートサービスの<グローバルデスク>とも提携して販路を拡大します」(青山社長)。

  ITにおいては難しい言葉が頻繁に出てくる。SSLとは、Secure Socket Layerの頭文字で、インターネット上でデータ情報を暗号化してやり取りすること。「クラウドサービス」とは、インターネットを介してソフトウエアやハードウエア、データベース、サービスなどのコンピュータ資源を提供するサービス。このクラウドサービスが今後年率30%程度の高い成長が見込まれている。

★『クラウドならGMO』といわれるような存在を目指す

  青山社長に今12月期を含め今後の展開を聞いた。「ホスティングサービス事業では、前期から構築した法人営業部門を中心に<プライベートクラウドサービス>といった高価格帯サービスに力を入れます。同時に、低価格サービスのラインアップも拡充します。セキュリティサービス事業においては、既存の販売代理店のある欧米、東南アジアでの営業を重点的に強化しいっそうの世界シエア拡大を目指します。ソリューションサービス事業ではスピード翻訳サービスや携帯電話向けホームページ制作のコンサルティングサービスを中心に中小企業向けの各種支援サービスを拡充します。2月にはクラウドソリューションを立ち上げ、従来のホスティングサービスからエンタープライズ向けのプライベートクラウドサービスやパプリッククラウドサービスまで多様なインフラサービスを提供してまいります。さらに、中長期的には、パートナーや海外拠点を活用しグローバルなサービス展開を図っていきます。とくに、『クラウドならGMO』といわれるような存在を目指して社名を前面に打ち出して取組んで行きます。その方針から社名を変更しました」。

  「前期は顧客層拡大を図るために新規に追加した低価格共用ホスティングサービスにおける広告宣伝・販売促進などの費用が先行したことで増収減益となりました。今12月期は売上17.5%増の97億9100万円、営業利益8.6%増の11億5600万円、1株利益5485円の見通しです。配当は年2000円の予定です」。

  同社は1993年に有限会社アイルとして創業。2003年にはGMOホスティングアンドテクノロジーズに社名変更、さらに、2005年にGMOホスティング&セキュリティへ変更、そして今回、GMOクラウドへ社名変更した。ITの変化とともに社名を変更し積極的な経営を展開している。「1960年ころにコンピューターが登場して、その20年後くらいから小型化が進み、現在はインターネットの時代です。われわれの生活になくてはならない電気や水道とまったく同じ存在です。今度の社名変更は、すんなりときまりました。社内にもワクワク感でいっぱいです」と青山社長は微笑む。社名変更のたびに業績を飛躍させている同社だけに、今度も大いに期待できそうだ。売上は、まもなく100億円。大台乗せから売上の成長スピードが速くなるだろうとの印象を強くした。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

【関連記事・情報】
ケイ線・チャートは相場の杖である=犬丸正寛の相場格言(2010/12/24)
悪い時には悪いことが重なる=犬丸正寛の相場格言(2010/12/20)
【読者と一問一答】東京電力株をこのまま保有していても大丈夫でしょうか?(2011/04/09)
本震懸念と余震頻発が交錯するなか分散型電源関連株に注目(2011/04/11)
つかの間の春を愛でる相場!「成長見込み銘柄」と「衰退銘柄」の選別へ(2011/04/11)

関連記事

最新記事