中国経済の実態・進出事例から考えるこれからの中国ビジネス戦略:第2回 中国進出日系企業の現状
2011年4月6日 17:23
中国も世界の工場としての役割から、市場としての役割が期待をされて居ります。GDP世界2位の地位が2010年には日本から中国にと変わりました。
しかし、第1回(前回記事)で記しましたように、人口も13億人と日本の10倍以上。一人当たりGDPでは、中国は日本の1/9程度。その為に、中国はまだまだ市場性が無いという声もあります。
実際に日本では一部上場企業でも、製造業では中国に限らず新興国ではまだまだ製造拠点の機能が多く現地法人の収支は赤字という企業が8~9割ながら、サービス業や大量消費財を扱っている企業では市場開拓をうまくしているところも出て居ります。
■中国進出の日系企業
コンビニでも中国現地のチェーンだけではなく、セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートなども展開しており、菓子やカレー等の食品は日本メーカーのものが多く見られますし、ビールではキリン・アサヒ・サントリーも進出していますが、上海エリアでは中国系も含めて1999年にサントリーがシェアNo.1になっています。
因みに、缶ビールは1缶で安いものでは1.2元ぐらいでも、高いものでは4元を越えるなど、日本では普通のビールとプレミアムビールでも値段差が1缶で50円も差が無いですが、中国では高級品というと、本当に値段格差も開いています。
日本からリンゴやマグロなどの輸入もして高級品として売られていますが、家電製品や自動車などは日系メーカーも中国進出が多いので製造現地化が進められているものの、素材産業などでは今でも日本から輸入しているものもあります。
中国進出というときに、現地法人を作るだけでなく、商材によっては日本から輸出する方法や、自らで進出するのではなく、中国企業に生産委託方式や合弁会社を作るという方法もあるでしょう。
コストが安いことを目的に出て行き、生産拠点にしようという製造業が多かったところから、巨大な人口を抱えている中国を市場として興味を持って進出するところ、そして、進出した外資系企業の駐在員や富裕層をターゲットにしようとしている飲食店やサービス産業もありますが、業種や価格帯によって事業戦略を見直していく必要があるのが中国の現状です。
人口が多い反面、競合も多いのが中国と考えるべきで、今後も日系企業の相対的な中国依存度は高まるでしょうが、一方では中国事業は不採算として撤退も多く見られています。殊に、外資系企業の誘致を進めてきた中国政府も、少しずつ国内企業育成を図る為に、外資の優遇税制を廃止したり、法律制度が頻繁に変わっています。提携でも、自ら進出する場合でも、既に進出されている場合でも、契約面だけではなく経営感覚にも優れて信頼できる弁護士やコンサルタントに相談することが重要です。
中国について、コメントや解説をしている学者や専門家といわれる人の中には、中国人であっても日本に長年住んでいて、中国人労働者の日常生活から遠く離れたところで、一般論化しようとして実態と離れている論調も見受けられるもの。20年以上ずっと日本で生まれ育った日本人でも、新卒採用したばかりではビジネスマナーをゼロから身につけなければならないのと同様で、中国人といっても現地のビジネス現場から離れていると感覚がずれていることもありますし、広い中国では地域によっても事情が少しずつ異なるもの。情報収集をする上でも、複数の情報で確認することが望ましいでしょう。
■中国マネーの世界進出と対中国ビジネスの今後
今年、中国のアパレル大手である山東如意科技術集団がレナウンをM&Aというのが話題になりました。中国マネーによるM&Aは、今に始まったことではなく、2009年には蘇寧電器集団がラオックス、2004年に聯想HD(レノボ)がIBMのPC部門を買収したのを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中国は広大な国土の中にレアメタルの鉱山を持つだけでなく、南米やアフリカの鉱山資源や食料なども中国マネーが関わっています。
日本の日常生活品でメイド イン チャイナが増え、観光客が増えているというレベルだけではなく、世界の鉱物資源の価格なども中国勢の動きに大きく左右されていますし、日本の事業再生企業が中国資本の出資で再建を図ろうという動きも大変に増えています。実は日本の老舗温泉旅館や、高級ゴルフリゾートが中国の市場取引で出資者を募り始めており、インターネットでその市場動向も確認できます。
日本国内企業が中国人向けに、または、中国雑貨を日本人向けにというネットショッピングもありますが、中国からの資本・人材流入も今後、広がっていくでしょう。
中国は生産工場・市場としてだけでなく、資本力としても大きくなっているところ。皆様の企業でも今後、一層に中国との接点が大きくなるでしょうから、経営戦略を練る上でも中国の存在を意識する必要があるでしょう。