ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:第2回 採用活動の心構え(2)

2011年3月4日 18:41

 今回は、「採用活動の心構え」の中でも、主に応募者との接し方に関して、お話させて頂きます。

■応募者はお客様
 「応募者はお客様」と言われて、すんなりと捉えることはできるでしょうか? 私がこう言うと、微妙な反応をされる経営者や人事担当の方が、実は意外に多いです。「頭では分かっていても、心からそうは思えない」という様子が見てとれます。

 冷静に考えてみれば、応募者はあくまで求人に応募してくれた方です。社員でも何でもない訳ですから、社外の人イコールお客様と言えるでしょう。ただ、採用活動を行っていると、どうもこのあたりを見失ってしまう事が多いように思えます。

 やむを得ないことですが、経営者としては心のどこかに「雇ってやる」という意識があります。今のように求人数も少ない状況だと、「雇おうとしているだけ有難く思え」などと考える方もいらっしゃいます。人事担当者にしても、採用活動では常に応募者の評価や論評がつきものなので、他人のことを良いとか悪いとか言い続けているうちに、いつの間にか自分が偉いように勘違いしてしまうことがあるようです。顧客第一と言っている会社なのに、応募者には不親切、または不遜な対応をしていることがままあります。

 「応募者をお客様として迎え、誠実に対応する」ということは基本中の基本でしょう。

■不採用者ほど気遣いを
 「応募者はお客様である」ことと同じ視点になりますが、特に不採用者についてはより一層の気遣いをする必要があります。採用して社員として迎え入れる方であればその後の身内ですから、関わりを続けて信頼関係を作っていくことができますが、不採用者はそこで縁が切れてしまう関係です。相手にとって不採用と言うのは不本意な結果でしょうし、気分が良いわけはありません。またこの人が将来の顧客かも知れないし、取引先かもしれないし、誰かの知り合いかもしれないということがあります。

 私の経験の中でも、自社の役員が懇意にしている方の娘さんが、それを伏せて応募してきたなんてことがありました。残念ながら不採用だったのですが、役員から後日その話をされて「くれぐれもよろしくとお礼を言われた」などと言われ、きちんと対応して良かったとつくづく思ったことがあります。

 また、前年不採用になった学生さんが、それにもかかわらず「あの会社は対応が良かった」と後輩に自社を紹介してくれていたことがありました。採用活動は本当に日々の積み重ねだと感じ、その当時はとてもうれしかった記憶があります。

 採用活動を進めていると、会社にとって良い結果は良い人材を採用できる事なので、ついつい採用する人に対して注力しがちになりますが、採用する人の何倍も何十倍もの不採用者が出てきます。この方たちに少なくともマイナスイメージを植え付けないことが、とても重要な事ではないかと思います。

■応募者とのイーブンな関係を築く
 最近は雇用環境が悪いため、働く側が様々な点で妥協せざるを得ない、働く人にとって圧倒的に不利な状況が見受けられます。応募者の足元を見たような対応をする会社も中にはあるようです。

 もしこのような対応が行われたとして、入社した人はその会社に勤め続けたいと思うでしょうか。たぶんチャンスがあればいつか辞めてやると思いながら仕事をするのではないでしょうか。なぜならば会社が信頼できないからです。「そんな奴は辞めても構わない」とおっしゃるかもしれませんが、採用した人が数年経ったら辞めていくようなサイクルは、投資効果で言えばゼロです。かつては大量採用と大量退職での人の入れ替わりを活力としているような外資系企業がありましたが、それは人の入れ替わりでどんどん人材のレベルアップが図れる裏付けの資金力やブランド力があってこそで、中小企業では全くと言っていいほどあてはまりません。そうならばよほどの能力不足や不適格がない限り、お互いの信頼関係を築きながら、一定以上の期間を安定的に勤務してもらう方が良いという事になります。

 会社と応募者の関係は、どうしても会社の方が強い立場になりがちですが、この期間での対応の仕方が入社後の信頼関係に大きくかかわります。主従関係、服従関係は長続きしません。自分たちも選んでいるが、応募者からも選ばれているという事を肝に銘じておくべきです。

 次回からは、採用計画に関しての考え方やポイントなどをお伝えしていこうと思います。

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