ワシントンポスト紙「リビア危機は金融市場を動揺させ原油高騰させる」と報道

2011年3月3日 10:37

【「霞ヶ関発・兜町着」直行便】

  リビア情勢を米国はどう見ているのか。米国の有力紙ワシントンポストは、チュニジア、エジプト、バーレーンに続くリビアでの民衆の蜂起が、世界経済とくに原油価格に大きな影響を与えていることを報じると共に、世界の投資家たちの資金が米国債に流がれていることを指摘している。

  だが、一方では、原油生産に関してはリビア情勢の影響はまだ限定的であり、石油産出国のキャパシティにもまだ余力が見られるとも分析している。事実、この間に発表された米国の消費者信頼感指数の3年ぶりの上昇によって、警戒感は幾分和らいでいるが、中東情勢が引き続き悪化すれば、更なる原油高騰は必死で、2008年5月の最高値である「1ガロン4ドル」を超える日も近いと警戒している。以下は2011年2月22日付けワシントンポスト紙の記事である。

■リビア危機は世界の金融市場を動揺させ、原油価格を高騰させる

  リビアの首都トリポリで起こった民衆の蜂起が、23日火曜日、世界の金融市場を震撼させ、証券市場を突き動かし、原油価格を高騰させた。そして投資家の資金は比較的安全な米国債に流れた。

  リビアの港湾は閉鎖され、パイプラインと現場を管理する西欧の企業が活動を停止した。それによって原油生産と天然ガスの出荷が止まるというニュースが流れ、火曜日の不安が広がったのである。

  原油価格は8.6%上昇し、1バーレル93.57ドルの最高値で3月限のニューヨーク市場で取引された。ブレント原油はロンドンで1バーレル105.78ドルに達した。

  原油の価格上昇は、未だに回復し切れていない世界経済にダメージを与えそうで、各国の株式市場は下落している。ダウ工業平均は178.46ポイントつまり、1.4%下落し、12,212.79に下落した。これは11月16日以来で最大の下げ幅である。S&P500指数は8月11日以来最大の下げ幅で、27.57つまり2.1%下落し1,315.44になった。

  だが、アラブ世界とリビアへの懸念は、米国の消費者信頼感(指数)がエコノミスト達の予測していた66を上回る70.4に、2月に3年振りに達したとの良いニュースで、一気に掻き消された。しかし、投資家達の注目はまだ中東にある。S&Pのチーフエコノミストであるダビット・ウィースは「プレイしているのはリビアだけではない。それは全地域であり、そして原油を産出するところ全てである。もし不安が地域全体に広がり続ければ、原油価格は2008年5月に付けた1ガロン4ドル(1バーレル168ドル)という価格が今では安く映るかもしれない」と述べている。ウィース氏は「このニュースは好ましいものであった」と述べる。しかし、彼は「消費者信頼感指数は4ドルで生き残れるか?」とも加えた。

  中東の反抗がリビアに広がるにつれ、原油とガスの供給が初めて減った。石油輸出国機構(OPEC)メンバーである北アフリカは世界の原油供給の約2%及び、1日当たり1,200万バレルの原油を輸出し、1,500万バレルの原油を生産している。更にリビアは、石油メジャーでパイプラインの半分を所有するイタリアのENIを通じて天然ガスも輸出している。ENIによるとイタリアのガス需要の10%を供給するパイプラインは一時的に停止している。スペインの総合石油企業であるレプソルによると安全性に懸念がある為にリビアで生産する1日当たり35000バレルの生産を停止した。

  リビアの原油の3分の1を生産するENIは、原油とガスの生産活動は一時的に停止しているが、企業の施設は全くダメージを受けていないと言った。更にこれからはイタリアのガス需要を賄うようになると言った。

  サウジアラビアでは90カ国の代表達が集まり、ガソリンプライスの値動きについて論議した。アリ・アル・ナイミ石油相は記者会見で、この王国には1日400万バレル、つまり非公開であるオイルアナリストたちの予測を上回るオイルキャパシティーがあると述べる。

  この発言が米10年債に投資した世界中の投資家達の慰めになった。なぜならば、米国債の利回りは、0.13%下がっただけの3.46%にとどまったからである。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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