大手住宅メーカーが注力する環境配慮型賃貸住宅
2011年2月8日 12:00
現在、賃貸住宅市場の動向は、空室率の上昇や賃貸料の落ち込みなどもあって決して明るくない。一般的にオーナーは確かな経営のために、賃貸住宅で安定した収益を長期間に渡り確保することを目指す。そのためには、建築費用などのイニシャルコストを抑え、入居者が満足するような質の高い物件を用意しなければならないが、昨今は、部屋の供給量が飽和状態となっているため、周辺物件との差別化を図ることが難しくなっているのが現状だ。
そこで最近、入居者に選ばれる物件として注目が集まっているのが、太陽光発電を搭載した賃貸住宅だ。この環境配慮型賃貸住宅は、大和ハウス <1925> の「セジュールエコハ」、住友林業 <1911> の「ビーエフ メゾン」など、多数の住宅メーカーから販売されているが、なかでも積水ハウス <1928> が2009年3月から発売している、太陽光発電システムを搭載したオール電化仕様の賃貸住宅「シャーメゾン グリーンファースト」は、初年度の契約棟数は371棟だったが、2010年度の販売棟数は業界最多となる890棟と前年度の2.4倍に増え、ヒット商品に成長した。
オーナーにとって太陽光発電システムの設備を付加することは、イニシャルコストの増加につながるが、高付加価値と周辺の賃貸物件との競争力の高さをアピールして人気を上げる事で、空室率を減らし、経営の安定に貢献させることができる。さらに、住宅エコポイントの適用基準を満たせば、1戸当たり30万円分のポイントが付与され、1棟4戸なら120万円、1棟8戸なら240万円の建築コストを減らすことも可能だ。もちろん入居者にもメリットがある。太陽光発電システムを活用することにより、生活時のCO2排出量を削減できるとともに、同システムで発電した電力を享受でき、さらに余剰電力を"売電"することによりエコロジーでエコノミーな暮らしを可能にするのだ。
不況の中にあって数少ない成長株のエコ関連市場だけに、今後、各住宅メーカーがますます力を入れてくることが予想される。しかし、環境配慮型商品住宅の基本性能や快適な暮らしを追求する努力はもちろん、"お得感"を伴う提案で消費者の心を動かすことができなければ、販売数量を上げる事はできない。エコ関連商品の開発力とそれを消費者に分かりやすく伝える営業力、その両力をどれだけ持ち合わせているか、各ハウスメーカーの真価が問わる時期に突入している。