『わずか30分、されど30分』東証の取引時間延長の意味=犬丸正寛の話題

2011年2月5日 15:45

■東証の取引時間30分延長の意味合いは大きい

  東京証券取引所の取引時間が、今年5月9日から変更となる見通しと伝えられた。現在の取引は、『前場』(ゼンバ)が午前9時~午前11時、『後場』(ゴバ)は午後12時30分~午後3時までとなっている。

  このうち、前場取引を午前9時~午前11時30分へ、30分間の取引時間を延長するということだ。わずか、30分でも意味合いは大きいといえそうだ。

  証券業務に携わる、働く側からみると、勤務時間が長くなり、とくに、昼休み時間の削られることへの不満は予想される。仮に、交代要員を用意することになれば会社側にはコストアップとなる。

  一方、投資家側にとっては、取引の時間がたとえ30分でも増えることは使い勝手はよくなる。とくに、刻々と、目まぐるしく変化する世界情勢において、それに対応するマーケットが開いていないということでは存在感がないからだ。今や、私設取引所を開設して深夜取引を始めるところも出ている。

■東京と上海の同時立会い時間帯が増える

  とくに、今は、アジアとの結びつきが深くなっているため、韓国、中国のマーケットもウオッチしなくてはいけない。お隣りの韓国は午前9時~午後3時まで休憩なしでの立会い。中国・上海は、日本と同じ前・後場制で、前場が9時30分~午前11時30分、後場は午後1時~午後3時。しかし、実は、今回、東証が30分延長することで中国との時差があることによって東京と上海の同時立会い時間帯が増える。上海の午前の取引時間を日本時間に置き換えると10時30分~午後12時30分となって、上海の動向をより映すことができる。

■一方では批判的な声も・・

  「今や世界は24時間取引の時代を迎えつつある。NYは昼の休憩はない。日本も投資家のことを考えれば、30分延長なんて言わないで、前後場を通しての取引をやるべき」との見方もある。その一方で、批判的な声もある。「東証の現物売買が盛り上がらないこの時期に30分延長しても効果はないだろう。むしろ、225オプション取引などデリバティブにメリットが出て、東京証券取引所より大阪証券取引所に効果は大きいのではないか。とくに、東京の会員(証券会社)にとっては、これまで、度重なる取引所のシステム投資による負担は増えている。しかも、システム投資によって、取引量が増えるどころか、逆に、沈滞気味。稼がなくてはいけないディーリングも、商いが薄いうえに、規制が厳しくなるばかりで手が出し難くなっている。それに、楽しみにしてきた東京証券取引所自体の上場も延び延びでは不満は貯まりに貯まっている」(中堅証券)との声もある。

  また、あるベテラン個人投資家は、「今のマーケットは<銘柄に投資する>というロマンが消えている。銘柄にではなく、<株価を買う>ことが目立ちすぎている。取引所はもっと腰の座った投資の啓蒙活動に取組んでほしい」との声も。

  今回の東証の取引時間の30分の延長は、たかが30分でも、日本のマーケットには、かなり大きい意味合いを持っているようだ。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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