起動時間ゼロPC実現へ!100万分の1の電力で演算記憶するトランジスタ
2010年12月24日 14:53
独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田資勝)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(拠点長:青野正和)の長谷川剛主任研究者らのグループは、大阪大学大学院理学研究科の小川琢治教授、ならびに東京大学大学院工学系研究科の山口周教授らの研究グループと共同で、従来の100万分の1の消費電力で、演算も記憶も行うことが可能な新しいトランジスタ「アトムトランジスタ」の開発に成功した。
状態を保持できる(記憶する)演算素子は、起動時間ゼロのPC(パーソナルコンピューター)などの開発に不可欠であり、このたびの開発により、その実現がさらに早まることが期待される。
開発した「アトムトランジスタ」は、従来のトランジスタが半導体中における電子の移動を制御しているのに対して、わずかな金属原子を絶縁体中で移動させることにより動作する。半導体よりも抵抗の高い絶縁体を母材に用いたこと、その内部をわずかな量の金属原子が移動してオン/オフ状態を実現することから、極めて低い消費電力で、従来の半導体トランジスタと同等の高いオン/オフ比を示す。さらに、動作電圧の制御によって状態を保持する記憶素子としても動作することがわかった。
演算結果に応じて回路が再構成される不揮発ロジック回路は、電源を切っても状態を保つことが可能なことから、起動時間ゼロのPCなどを実現する新しいコンピューター回路として期待されている。
従来、演算素子(トランジスタ)と記憶素子(メモリ)を組み合わせることで、ひとつの「記憶する演算素子」を形成していた。しかしながら、従来素子では記憶に要する消費電力が極めて高く、実用化にはその大幅な低消費電力化が必要となっていた。このたび開発した「アトムトランジスタ」は、この記憶に要する消費電力を従来素子の100万分の1にした。
さらに、演算と記憶の双方の機能を併せ持つことから、人間の脳のような、より柔軟なコンピューター回路の実現に寄与することが期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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