惑星探査機ボイジャー1号、太陽圏の果てに

2010年12月15日 13:15

 米航空宇宙局(NASA)は12月13日、惑星探査機「ボイジャー1号」が太陽圏(ヘリオスフィア)の端に到達し、あと4年で太陽圏を脱出する見通しだと発表した。

 「ボイジャー1号」は現在太陽から約174億km離れた所を、秒速約17kmの速度で飛行している。今年の6月に観測している太陽風の速度がゼロとなったが、太陽風の速度は変動するため、科学者らは約4か月間にわたってデータを確認し、ゼロから変わらないことを確認したという。

 「ボイジャー1号」の現状について、同計画の科学者で、カリフォルニア工科大学のエド・ストーン(Ed Stone)氏は「ボイジャー1号は太陽風の範囲を脱出し、現在星間空間に近づきつつあります」と述べた。

 「ボイジャー1号」は1977年9月5日に打ち上げられ、木星、土星を探査し、2004年12月に末端衝撃波面を通過した。現在、地球から最も離れた人工物で、研究者らによると、ボイジャー1号はあと4年でヘリオポーズを脱出し、太陽圏外探査の第1歩を踏み出す。

 なお、太陽系と太陽圏について、以下の解説も参考のために掲載しておく。

 (1)太陽系とヘリオスフィア(太陽圏)
太陽系には、範囲を最遠の惑星とする「太陽系」と、太陽風が届く範囲(100AU以上)とする「ヘリオスフィア(太陽圏)」の2つの考え方がある。太陽風とは太陽コロナから放出されるプラズマのことで、非常に早い速度を持ち、オーロラ、人工衛星の故障の原因やソーラーセイルの原動力でもある。太陽は絶え間なくこの太陽風を放出している。

 (2)末端衝撃波面(Termination shock)
太陽系は銀河の中心に回っているため、太陽は四角八方へ太陽風を放出している一方、太陽系の外からは星間ガスが絶え間なく太陽系の中に注ぎ込まれている。非常に高速な太陽風がこの星間ガスと出会い、減速する境目が存在し、その場所が末端衝撃波面(Termination shock)である。

 地球上で例えるなら、末端衝撃波面は川と海の境目(汽水域と呼ばれる)に似ているかもしれない。川の淡水が海に流れ込み、塩辛い海水が逆に川に流れ込み、その境目(多分、目ではわからないが)が、太陽風と星間ガスが交じり合う末端衝撃波面と似ている。

 (3)ヘリオシース(Heliosheath)
末端衝撃波面を超えると、太陽風は急激に減速する。ここから太陽風が消えるまでの領域をヘリオシース(Heliosheath)と呼び、減速した太陽風と星間物質や星間ガスなどが交じり合うと考えられている。

 (4)ヘリオポーズ((Heliopause)
太陽から放出された太陽風が星間ガスと衝突して、完全に星間ガスが溶け込んでいる境はヘリオポーズと呼ばれている。ここが太陽圏の終端であり、太陽からここまでの領域の全体が太陽圏、つまりヘリオスフェア(Heliosphere)である。

 (5)バウショック(Bow Shock)
太陽圏は銀河の中を公転しているため、ヘリオポーズの外側には、星間ガスが衝突してできた衝撃波面が存在すると考えられている。これはバウショック(Bow Shock)と呼ばれている

 写真=NASA。

 ■NASA Probe Sees Solar Wind Decline
http://www.nasa.gov/mission_pages/voyager/voyager20101213.html

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