各社、株主優待で個人株主・投資家へアピール

2010年12月13日 11:00

 金利の低下やインターネットの普及により、株を研究し尽くした個人の投資家だけでなく、ひと昔前までは全く株に無縁だった大学生や主婦なども、気軽に株式投資を始められる時代となった。一般的に株銘柄を選ぶ基準は配当状況が重要だが、最近では判断基準の1つとして、大きなウエイトを占めているのが株主優待だ。

 企業側も個人投資家に向けたアピール方法として、IR活動はもちろん、この株主優待も重要だと考えているようだ。その傾向を裏付けるように、90年代当初、株主優待を実施している企業は約200社程度だったが、2006年には1000社を超えている。

 しかし大和インベスター・リレーションズ(IR)の調査によると、2009年より、相場環境が悪化し新規株式公開が減少したことや、完全子会社化を目的にした株式公開買付けに伴う上場廃止の増加などにより、2010年10月20日現在で株主優待を実施している企業数は前年比1.9%減の1018社と2年連続で減少した。だが、実施企業の減少数は前年の51社から20社へと改善し、減少傾向は収まりを見せ始めている。また、上場企業においては、約30%が何らかの優待を行っている状況は続いている。

 株主優待の内容は多岐に渡っており、各企業、独自の内容で展開している。野村インベスター・リレーションズ発行の「知って得する株主優待2011年度版」アンケートによると人気株主優待ランキングの1位は日本マクドナルド <2702> 、2位はダイドードリンコ <2590> 、3位はカゴメ <2811> となっている。総合ランキングのベスト10の中で、食料・飲食関係の企業が大半を占めていることを考えるとやはり、食品関連の株主優待は、分かりやすく得をした気分を得られるため人気が高く、また企業側としても、自社の製品・サービスをアピールし、ファン株主作りに有効だと考えているようだ。具体的な内容でいえば、日本マクドナルドの株主優待の内容は食事優待券となっており、カゴメは自社製品の詰め合わせとなる。2位のダイドードリンコも3000円相当の自社製品詰め合わせなのだが、こちらはボリューム感やバラエティの豊富さが評価されているようだ。そのためか、上記のアンケートの「驚き!感動の株主優待」部門では、同社は日本マクドナルドを抑え5年連続の1位を獲得している。

 また、大手ゼネコン業界も株主優待制度の導入に踏み切った。11月に大成建設 <1801> が同社グループ運営のゴルフ場の優待クーポン券を、清水建設 <1803> も木製ブックエンドやキッチンフックを贈ると発表している。厳しい市場環境で受注減少が続くなか、ゼネコン株へ興味を持ち始めた新たな個人の投資家筋を取り込みたいという思惑があるようだ。

 さらに株主優待に長期保有優遇制度を導入する企業も増えている。これは長期で保有していると優待内容が優遇されるというもので、企業側は安定株主を増やすことが主な目的。現在、45社前後だが今後も増える見込みだ。

 株を購入する時、多くの投資家たちはその企業の経営状態や将来的なビジョンをしっかりと分析して"買い"か"買いではない"かを判断するだろう。しかし、迷った時に背中を押してくれるのが株主優待という目に見えるカタチの特典となっていることは紛れもない事実である。

関連記事

最新記事