日銀の中村審議委員、「景気回復は来年の早い時期、自動車の回復から」と言明

2010年11月29日 19:27

【「霞ヶ関発・兜町着」直行便】

  日銀の中村清次政策審議委員(元・商船三井副社長)は25日、福島市で経済講演を行ったが、その中で、日本経済の先行きについて、「回復の鍵となるのは、反動減で低調になっている自動車生産の回復時期で、それは2011年度の早い時期とみている」と発言し注目されたが、講演後の記者会見において、記者から「回復というのは何をもって言うのか、回復の意味とその根拠は」と問われ、次のように答えた。

  自動車産業は非常に裾野が広い産業であることもあり、今回の9月以降の落ち込みの大きなポーションを占めているかと思います。当初は、自動車の落ち込みは輸出でカバーできるのではないかといった見方もあったわけですが、結果的には、その後の海外経済動向の影響が大きかったわけです。先ほど、「回復」と申し上げたのは、大きく落ち込んでいる部分が、駆け込み需要などで一時期に膨らんだものが、元のレベルに戻るということで、従来の巡航速度といいますか、駆け込み需要が起こる前の水準に戻るということです。根拠については、ミクロヒアリングや米国での自動車の売れ行きの状況等をふまえて、総合的に判断したものです。

  また、中村氏が(今回のFRBの追加緩和について)「わが国の経験では、バランスシート調整が残るなかでの追加緩和は、実体経済を浮揚させる力が限定的であった。どのようにその効果が発揮されるのか、今後の帰趨を見守る必要がある」と述べたが、それに関して記者から、FRBの追加緩和の効果が限定的であるという見方をしているのか、日銀の包括緩和についても即効性という面での効果についてどのようにみているのか」と尋ねられ、こう発言した。

  FRBの問題に関してですが、基本的には、他国の中央銀行の政策についてコメントすることは控えた方がよいと思っています。そう申し上げたうえで、今回のFRBの決定は、米国経済の減速が続く中にあって、景気の回復をしっかりしたものにするとともに、物価上昇率が望ましい水準になることを確実にするために行われたと理解しております。

  翻って、日本経済の見通しをみますと、経済・金融のグローバル化を反映して、海外経済や国際金融資本市場の動向に大きく左右される状況が続いています。従って、FRBによる今回の措置が、米国の景気回復に貢献するとともに、わが国を含む各国からの米国向け輸出が増加するというチャネルを通して、世界経済に好影響を与えることを期待しています。ただし、超低金利下の先進国において一段の金融緩和が行われた場合には、余剰資金の流出等により、その影響が新興国や資源国の経済、世界の金融市場、商品市場にどのような影響が表れるのかという点については、グローバル化の下で、そうした影響度を強く意識していく方が良いと思います。また、そうした影響というものが、政策を打った国自身の経済に跳ね返ってくる可能性があるという点にも注意が必要です。この点は、先進国の中央銀行は一律に考慮すべきテーマであると考えております。もちろん各国の中央銀行は、第一に自国の物価と経済の安定を図っていかなくてはなりませんが、それによってどのような影響が相互に及ぶかを考えながら政策を遂行していく必要があるという面が、以前よりも強まっていると思われます。なお、日本の場合は、米国と違ってバランスシートの問題はないと思います。その点は、日本と米国では大きく違うと思います。

  菅政権が全体的に統治能力、政策能力を発揮していない現在、経済・財政・金融分野でも、その分析、見通し、手立ての機能を果たしておらず、その中では、中央銀行としての日銀の情報発信が、我々民間の経済・産業人にとって有効な「情報源」になっていることは確かだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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