積水ハウス、全国70か所の団地で「隣人祭り」開催

2010年11月1日 11:00

 老人の孤独死や孤独な子育て環境、近隣に対する無関心など、近隣住民同士のコミュニティの喪失に起因する社会問題が表面化して久しい。そんな中、住宅大手の積水ハウス <1928> は、販売中の戸建分譲地やマンション分譲物件において、住民同士がコミュニケーションを深めるためのきっかけ作りの一貫として、「隣人祭り」の開催を提案している。

 「隣人祭り」とは、近隣の住民同士が食べ物を持ち寄り、食事をしながら交流を深めるためのイベントで、1999年にフランスで始まったものである。2008年にはヨーロッパを中心とした29カ国で開催され、参加者は今や800万人を超えるといわれている。日本でも2008年に「隣人祭り」日本支部が設立され、同年5月に東京の新宿御苑で近隣の住民約250人を集めて開催されて以来、全国各地で広がりを見せている。

 積水ハウスは、2005年に「まちづくり憲章」という独自の指針を定め、環境や景観に配慮するだけでなく、近隣コミュニティの育成を重視した街づくりを推進しており、「隣人祭り」もその一環となる。同社はこれまでも、自社の戸建分譲地やマンション分譲物件のコミュニティの育成を促進するため、様々な住民イベントを行ってきた。しかし、「隣人祭り」がこれまでの住民イベントと大きく異なるのは、同社が主導して開催するのではなく、住民主体の自発的なイベントとして開催を心がけている点だ。住民同士が食べ物を持ち寄ることを第一歩とし、可能であれば、企画・準備段階から住民に参加してもらう。そのため、テントの貸し出しなどのサポートは行うものの、最終的なイベントの開催は住民に委ねることになる。

 同社は、2009年に長崎県の自社分譲地で「隣人祭り」を開催したのをきっかけに、全国の戸建分譲地や分譲マンションなど約30カ所で実施。さらに、10月9日から11月7日の期間にかけて開催している分譲住宅フェア「まちなみ参観日」の会場を中心に、全国70カ所に開催を呼びかけ、順次実施している。「隣人祭り」の開催によって街全体のコミュニティ強化につなげたい考えだ。

 「隣人祭り」に参加した住民からは、「近所の方と仲良くなりたかったけれど、これまできっかけがなかったので大変よかった」や「子育て情報を交換することができた」、「名前と顔が一致したので挨拶しやすくなった」などといった反響が寄せられているという。同社は、今後販売を開始する分譲地においても同様の取り組みを通してコミュニティの育成を進めていく予定だ。
(編集担当:上地智)

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