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【どう見るこの相場】自民党総裁選フライング相場に反動懸念、政治改革期待と「御用金相場」に注目
【日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部】
■日経平均株価3万9000円台回復後の行方、為替急変で市場混乱の可能性
陸上競技の短距離種目のスタートでは、フライングは一発失格となる。では、株式市場のフライングは、どうなるのか?前週末27日の日経平均株価の903円高、2カ月ぶりの3万9000円台回復は、明らかにフライミングだった。13時から始まった自由民主党総裁選挙の1回目の投票で、高市早苗候補が第1位となり、金融緩和論者の同候補の総裁選出は間違いないとして、為替相場が、これもフライングして1ドル=146円台央まで急速に円安・ドル高に振れ、これに乗って日経平均株価が高値引けなった。ところが2回目の投票で総裁に選出されたのは石破茂候補で、この大逆転にその後の為替相場は、142円台と円高・ドル安に逆戻りしたが、日経平均株価は、高値で取り残されままとなった。
フライングが一発失格なら、きょう週明けの反動安が心配になる。現にその後の前週末の夜間取引では、日経平均先物価格は、2400円超もの急反落となっている。また石破茂新総裁が、総裁選挙中に金融所得課税強化に言及していたこともマイナスに働きそうだ。こうなると望みは、総裁選の大逆転のサプライズがそのまま継続するご祝儀相場や政治改革期待による内閣支持率の上昇などとなり、週明けから明らかになる党役員人事や閣僚人事、裏金議員や旧統一協会関係議員の処遇などで刷新感をアピールできるかがポイントとなってくる。
■東京メトロIPO、復興財源確保と防災庁創設公約が絡み合う新展開
株式マーケット的には、当コラムの9月24日付けで取り上げた地方創生関連株などへの「石破トレード」を期待したいが、今回注目するのは、石破新内閣の発足、解散・総選挙とほぼ同時進行する東京地下鉄<東京メトロ、9023>(東証プライム)の株式売出し、新規株式公開(IPO)である。10月7日に仮条件が決まって8日からブックビルディング期間が始まり、10月15日に公開価格が決定し、10月23日にIPOされる。大株主の財務大臣と東京都の保有株が放出されるが、復興財源確保法により財務大臣の保有株の売却収入が、東日本大震災の復興債の償還費用に充当されることになっており、いわば「御用金相場」で防災庁の創設を選挙公約としていた石破新総裁とはまんざら関係なくもない。
この「御用金相場」は、今年2番目となる。「御用金相場2.0」である。第一弾は、今年1月から実施された新NISA(少額投資非課税制度)だろう。岸田文雄首相の置き土産となる「資産所得倍増プラン」に基づき、非課税投資枠が拡充され非課税期間も無期限と優遇措置を拡充し、5年間でNISA総口座数を1700万口座から3400万口座へ、買付額を28兆円から56兆円へ倍増させ、家計の金融資産2212兆円の「貯蓄から投資」へのトレンドに拍車を掛けることを目指していた。
この「成長と資産所得の好循環」の大キャンペーンに呼応して、日本証券協会の証券10社ベースの調査によると、1月~7月累計のNISA口座開設数は266万件と前年同期間に比べ2.2倍増、7月末の口座数は1541万口座となり、このうち成長投資枠での1月~7月の累計買付額は、6兆5000億円と4.5倍となった。この間、日経平均株価は、今年2月に1989年12月につけた過去最高値を34年2カ月ぶりに更新し、7月には4万2426円まで買い進まれた。新規買い出動したNISA投資家は、株式ブームを謳歌し、株式投資はこんなに簡単だと実感したに違いない。
ところが、8月5日の日経平均株価の4451円安、9月4日の同1639円安の相場急変である。NISA投資家が、どう対処したのか気になることころで、なかにはマーケットの上げ・下げの大きさとスピードに追随できず目を白黒させるばかりのビギナーも少なくなかったはずだ。そこに今回きょう週明けのご祝儀相場でスタートするか反動安を心配しなくてはならない「石破トレード」である。ただ救いがないこともない。前週末の日経平均株価は、フライミング気味ながらこの8月と9月の急落前の株価水準までリバンドしたからだ。高値でハシゴを外された投資家が、対処方法に手間取っているうちに株価が大きく戻し粘り勝ちとなったケースもあったと推察させる。
こうしたラッキーが続くと「御用金1.0相場」と「御用金2.0相場」の相乗効果も期待したくなる。新NISAの1ー7月累計の新規口座数開設数から、買い出動額は計算上2割程度と試算されており、余剰資金が「御用金2.0相場」に参入してくる展開である。東京メトロのIPOは、マーケット周辺では、いま初値予想がしきりとなっているが、ポジティブ評価とネガティブ評価が相半ばしている。ネガティブ評価では、時価総額が想定価格の1100円ベースで6391億円、売出株数が2億株超で資金吸収額が3195億円となる超大型案件で荷もたれ感があるとするのが第一だ。また業態のオールドエコノミーで成長性は期待薄である。
一方、ポジティブ評価では、今3月期予想業績ベースで想定価格がPER12.2倍、PBR0.96倍、配当利回りが3.6%と割安で、株主優待制度込みの総合利回りがさらにアップすることが上げられている。一極集中の都心のドル箱9路線を運行して収益性では売上高営業利益率が、既上場の電鉄株を上回っていることも経営の安定性、高配当継続のベースとして評価されている。また10月のもう一つの超大型IPO案件だったキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)の上場が、11月以降に延期されたこともフォローとなるかもしれない。
この初値動向を占う予備運動も、すでにマーケットに出ている。例えば、東京メトロのIPO承認とともに、既上場の電鉄株が逆行安となったことである。東京メトロへの投資資金調達に向け同業他社株への換金売り、乗り換えの動きが出ているとされていた。また同じ東京都が筆頭株主となっている東京都競馬<9672>(東証プライム)も動意付いており、東京メトロのIPO人気の波及効果が期待されている。
マーケット周辺の初値予想は、想定価格の2割高~3割高とするのが中心で、これなら超大型IPOとすれば順調なIPOに数えられるはずで、「信頼される民営化株」となる。そこでこの東京メトロと並んで「石破トレード」の優先順位の上位銘柄として浮上する可能性のあるクラスターが、既上場の民営化銘柄となる。民営化株の先駆となったNTT<9432>(東証プライム)を含めて株価が、高配当利回り、低PER水準にあるためだ。東京メトロ関連のゼネコン株、鉄道車両株などを含めて「御用金相場2.0」にスタンバイするところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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