相場展望9月30日号 米国株: 金利低下と大統領選でNYダウは最高値だが、インフレ懸念増す 日本株: 株式は「石破ショック」で暴落、首相としての舵取りは大丈夫?

2024年9月30日 10:40

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/26、NYダウ+260ドル高、42,175ドル
 2)9/27、NYダウ+137ドル高、42,313ドル

【前回は】相場展望9月26日号 米国株: 金利大幅利下げで、インフレ再加速の芽が膨らむ可能性 中国株: 中国の金融支援策は、中国金融業界崩壊の防止策に過ぎず 日本株: 円相場は「円高」に転換の可能性⇒日経平均の下落確率高まる

●2.米国株:金利低下期待と大統領選でNYダウは最高値更新だが、インフレ懸念増す

 1)米国株高を支える要因
  ・金利低下観測
  ・米国大統領選挙でバラマキ政策期待

 2)懸念材料
  ・金利低下とバラマキ政策で、インフレが再点火いったん鈍化してきたインフレが再点火すると、その終息には想定以上の金利引上げが必要となる。結果、ソフトランディング(軟着陸)は出来ず、ハードランディングにならざるを得なくなる。そして、米国経済の回復には相当な時間と財政負担が増すことになる。

●3.米国GDP4~6月期は前期比年率+3.0%増、予想+2.9%を上回る  (ブルームバーグ)

 1)個人消費支出(PCE)価格指数は前期比年率+2.5%上昇、前四半期は+3.4%上昇。食品とエネルギーを除いたコアCPE価格指数は前期比年率+2.8%上昇、前四半期は+3.7%上昇だった。

●4.米失業保険申請件数は前週比▲0.4万件減少の21.8万件、予想22.5万件を下回る(ロイター)

 1)レイオフ件数が依然、低水準であることを示唆し、労働市場の健全性を巡る懸念が和らぐ可能性がある。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/26、上海総合+104高、3,000
 2)9/27、上海総合+86高、3,087

●2.中国、大手国有銀行に最大1兆元(20.62兆円)を超える資本注入を検討(ブルームバーグ)

 1)現在、最低レベルの利ザヤに加え、減益や不良債権の増加に苦しんでいる。

●3.中国、特別国債2兆元を今年発行、消費刺激と地方債務対策=関係者(ロイター)

 1)新たな財政刺激策の一環として、消費刺激を主目的に1兆元、地方政府の債務問題対応の支援に向けて1兆元を発行する。
  ・消費刺激に向け、調達資金を消費財の下取り・更新、事業設備の更新への助成金の増額に充てる。2人以上の子供を持つ世帯を対象に、2人目から1人当たり月額800元(114ドル)を支給する。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/26、日経平均+1,055円高、38,925円
 2)9/27、日経平均+903円高、39,829円 

●2.日本株:株式市場は「石破ショック」で暴落、一国の首相として舵取りは大丈夫?

 1)日経平均の推移と見通し
       日経平均   要因
  ・9/26  +1,055円高 ①145円と円安 ②配当取りの買い活発
  ・9/27  + 903円高 高市トレード(財政出動、金利引上げ反対、円安)期待
  ・9/27先物▲2,500円安 石破総裁決定(岸田政策踏襲で、金利上昇、増税、円高)

 2)高市、石破氏の政策
           高市早苗氏        石破茂氏
  日銀の利上げ  利上げ反対        利上げ容認
  財政政策    アベノミクス継承     岸田政策踏襲
          財政出動         緊縮財政
  増税      デフレ脱却まで否定    金融所得税の課税強化
          経済成長による税収増   法人税の増税
                       防衛増税?
  最低賃金                 1,500円に引上げ
  エネルギー   核融合による電力増    再生可能エネルギー拡充
  健康      感染症の国産薬品開発
  食料      食料自給率の向上

 3)市場の反応
           高市早苗氏       石破茂氏
  ・10年債利回り +0.8%まで低下    +0.855%に上昇
  ・円相場    146円まで円安進行   143円まで円高に反転
  ・株価     上昇          取引時間外の先物で▲2,500円安

 4)石破・次期首相は、岸田政策を踏襲
  ・石破・次期首相は、岸田政策を踏襲すると発言している。岸田・前派閥長に、秋波を送った見返りに、自民党総裁選の決選投票での逆転勝利につながったもよう。また、小泉進次郎を推挙した菅陣営も石破氏への投票となり雪崩現象が起きたと思われる。重要人事をみると、石橋・自民党総裁は「派閥人事」から抜け出せなかった、と言えよう。石破氏は、自民党の裏金問題をスルーし、旧統一教会問題にも答えなかった。このような、石破氏では現在の自民党を改革する気持ちがあると思えない。
     
  ・岸田・首相は、前回・自民党総裁選挙で金融所得税課税強化(税率20%の引上げ)を主張してたが、非難を受けて早々に撤回した。代替案は、新しい資本主義として「貯蓄から投資」を掲げ直し、NISAを拡大した。金融資産を持つ富裕層への迎合を進めた。

  ・そして、低所得者層には課税強化と保険料徴収増という実質増税策を強行した。円高による物価高で苦しむ庶民には、恒久的な増税と口封じ的に一時的な支援策にとどまった。

  ・岸田・新首相誕生で、株式市場は▲1,300円下落し、「岸田ショック」という言葉が株式市場を巡った。

  ・石破・新自民党総裁は、その岸田政策を踏襲すると伝えられている。岸田政権では実質賃金はマイナスが26カ月連続した。岸田政権の今年4~6月の日本の国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費は年率換算で297兆円であった。コロナ前の2019年の300兆円を下回っている。一方で、政府の税収は過去最高となった。

  ・9/27取引時間外の先物市場では▲2,500円安と、9/30の暴落を示唆している。「石破ショック」と名付けられないことを期待している。

  ・石破・新総裁は、米国との調整を経ないまま一方的に、しかも、国民への問いかけと民意形成をせずに、突発的に
   (1)米国・米軍との地位協定の見直し
   (2)アジア版NATOの創生
   を掲げた。

  ・このような荒っぽい書生気取り的な発言に「果たして大丈夫かな」と戸惑いを覚える。旧・民主党政権を彷彿とさせる発言であった。今までは一匹狼的な発言は新鮮味もあり許されたが、危険性をはらんでいる。

  ・質問に答えられないとき、「議論をします」「議論が大事」と繰り返し返答して次の質問に逃げることが多かった。今までの長きにわたり議員をやっていて、方向性ある意見も述べられず、主張を述べられない時の苦し紛れの「議論」ばかりのそば逃れの発言スタンスに不安を抱く。

 5)一国の総理大臣としての手腕に期待して、注視したい。

●3.日産、ルノーが保有していた自社株5%分を798億円で買い取り(HNK)

 1)取得した株式は、10/3にすべて消却するとしている。
 2)日産が株式を買い取るのは今回が3回目で、残る株式についても両社の合意で日産が事実上、優先的に買い取ることができる。

●4.サントリー、来年も賃上げ+7%へ、実現すれば3年連続で同水準の上げ幅(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・5713 住友金属鉱山   資源価格上昇
 ・6965 浜松ホトニクス  業績持ち直し期待
 ・9514 エフオン     業績回復

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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