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JSH Research Memo(8):地方の障がい者就労ニーズを取り込み、障がい者雇用支援事業で高成長を目指す
*13:08JST JSH Research Memo(8):地方の障がい者就労ニーズを取り込み、障がい者雇用支援事業で高成長を目指す
■JSH<150A>の今後の見通し
2. 成長戦略
同社は今後の成長戦略として、障がい者雇用支援事業を成長ドライバーとして年率2ケタ台の成長を目指す。地方における障がい者の就労ニーズは強く、障がい者雇用に取り組む大都市圏の企業などに対して同サービスを提供していくことで、地方経済の活性化にも寄与しながら収益を拡大する考えだ。
障がい者の民間企業における実雇用率は2023年で2.33%と法定雇用率の2.3%に達しているものの、達成企業の割合は50.1%と半分にとどまっており、潜在的な雇用ニーズは引き続き大きい。また、法定雇用率が2024年から従前の2.3%から2.5%に引き上げられたが、2026年には2.7%まで引き上げられる予定で、民間企業の障がい者雇用数は2023年6月時点の64万人から2026年は74万人まで拡大することが見込まれる。既に法定雇用率を達成した企業においても障がい者雇用を増やしていく必要がある。都市部においては障がい者の就労率が高いため、地方の障がい者雇用を可能とする同社サービスに対するニーズは今後も拡大し続けるものと弊社では見ている。
同社は今後、障がい者受入純増数で年間300~400人ペースで拡大することを目標にしている。2024年6月末の受入数が1,227人であるため、リカーリング売上の成長率としては当面の間、年率2ケタ台の高成長が期待できる。毎年、新規農園を4ヶ所程度開設する必要があるが、設備投資額も少なくて済むことから、立地場所さえ見つかれば十分に可能なペースと言える。現在は九州圏のみでの展開だが、2025年からは岡山県や北海道など九州以外の地域へも進出を開始し、地方での障がい者就労ニーズを取り込む方針だ。障がい者の募集に関しては、各地域の就労支援施設との連携に加えて、ポスティング広告並びにデジタルマーケティング施策などにも取り組む。
在宅医療事業で蓄積した知見を生かし、障がい者の働く環境を第一に考えた同社の「定着支援サービス」に対する顧客企業からの評価は高く、リピート受注につながっている。同社の顧客獲得時期別ARR(年間経常収益)でも2019年3月期以降、すべての年度の顧客でARRが増加傾向を続けており、顧客満足度の高さがうかがえる。なお、区画を追加した企業は2024年6月時点で累計利用企業185社のうち72社(予約含む)、比率で39%となっている。
障がい者雇用支援事業で年率2ケタ成長を目指すためには、売上高の約90%を占めるリカーリング売上を積み上げていくことが重要となる。ARRは、利用企業数とARPA(1利用企業当たりMRR)、12ヶ月間平均解約率の3つの要素で構成されており、利用企業数とARPAを積み上げ、解約率を低減することで増加する。
新規顧客の獲得施策として同社は、週3回、障がい者雇用の採用・定着や法定雇用率達成などに関する各種オンラインセミナーを開催しており、同セミナーを通じて見込み顧客を獲得し、契約につなげている。2024年6月末時点の利用企業数は179社となっており、今後も営業人員の増強とともに、各種マーケティング施策を強化することで、年間数十社ペースで獲得を進める方針だ。また、ARPAの積み上げについてはサービス品質の維持向上を図ることで利用企業から追加発注を獲得するほか、法定雇用率の引き上げも追加発注を獲得する好機となる。2025年3月期第1四半期のARPAは1,027千円と前年同期比で14.5%増となったが、2024年4月の法定雇用率引き上げによるプラス影響があったと見られる。次回の法定雇用率引き上げは2026年7月で、2.5%から2.7%になるため、ARPAのさらなる積み上げが期待される。解約率の低減施策として特段新たな施策はないものの、「定着支援サービス」を充実させ、顧客満足度の維持向上を図ることが重要と思われる。
障がい者雇用についてはSDGsの実現に向けて企業が取り組むべきテーマの1つとなっており、特に地方での障がい者雇用創出に取り組む同社のサービスは今後さらに注目され、業績も2ケタ成長が続く可能性が高いと弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《EY》
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