イージェイHD Research Memo(9):第5次中期経営計画で掲げた基本方針並びに業績目標はおおむね順調(2)

2024年9月12日 16:09

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記事提供元:フィスコ

*16:09JST イージェイHD Research Memo(9):第5次中期経営計画で掲げた基本方針並びに業績目標はおおむね順調(2)
■E・Jホールディングス<2153>の今後の見通し

(2) 基本方針の進捗状況について
基本方針の進捗状況については、「既存事業強化とサービス領域の拡大」において、以下の4点に取り組んできた。

a) AIやAR/VR、ドローンなどの最先端技術を取り入れ、国土強靭化、老朽化するインフラ施設のメンテナンス、環境に配慮したサステナブルな社会インフラの整備、CM(発注者支援)等の行政支援のサービスを深化させ、重点課題として取り組む。
b) 3つのコア・コンピタンス(防災・保全、環境、行政支援)を基盤にした6つの重点分野により、今後成長が想定される事業領域の拡大、変革を図る。
c) 経済発展とともにインフラ整備市場が拡大する東南アジアを中心に、M&Aも含め海外事業基盤を再構築し、JICAを通じたプロジェクトだけでなく現地での直接受注拡大を図る。
d) 研究開発、デジタル機材等への積極的な投資によりDX推進を加速し、競争優位性を確保する。また、実際のDX推進に当たってはグループ会社ごとに取り組みを進めるとともに、エイト日本技術開発によるモデルケースをグループに展開していく。

2024年5月期までの進捗状況として、重点6分野の取り組み強化により受注高は過去最高を更新するなど国内事業についてはおおむね順調に進捗しているものと評価される。一方で海外事業についてはタイ子会社における現地での受注獲得に苦戦しており、事業展開を再構築する予定である。また、R&Dの事業効果についてはドローンなどを活用した検証プロジェクトの実績を重ねノウハウを蓄積している段階にある。

「多様化するニーズへの対応力の強化」としては、以下の4点に取り組んできた。
a) データ、情報資産、ICT技術を活用した新商品、新サービスの開発・推進では、BIM/CIMモデルの活用や空間的数値情報を活用した可視化技術の開発による津波避難VRコンテンツの作成のほか、ドローンやスマートグラス、360°カメラ、AI技術などを用いた橋梁、河川・ダムなどインフラ点検業務等の実用化に取り組んだ。
b) 既存の農林事業を生かした地域課題解決ビジネスの取り組みとしては、2012年以降、秋田県・岡山県・徳島県において現地の地方公共団体や企業等との共同出資により、アグリ事業における6次産業化を推進してきた。秋田県の(株)ストロベリーファームでは希少品種である夏イチゴの「なつあかり」の栽培を行い、全国の洋菓子店やレストラン等に年間約4トンを販売し、年間1千万円を超える売上規模まで成長している。2021年からは現地の生産農家に対して生産技術の移転も始めており、自社生産と合わせて年間1億円の売上を目指している。岡山県の(株)エンジョイファームでは、農園での青果物栽培や食育及び農作業の体験施設である「水車の里フルーツトピア」について、2013年4月から運営管理業務を自治体から受託している(契約期間は2027年度まで継続)。徳島県の(株)那賀ウッドでは、森林整備の推進(CO2吸収源の確保)、木材の利用拡大(炭素の貯蔵効果)、木育・環境教育の推進(担い手育成、交流人口増大)などを目的として、現地森林組合や林業事業体との連携により森林・竹林の整備を進め、自社の持つ加工技術と他業種連携により、木粉を活用した各種製品開発や人材育成・環境教育の普及啓発に取り組んでいる。また、2025年5月に開催される日本国際博覧会のEXPO共創事業特別プログラム「Co-Design Challenge 2024」にて同社等が提案した「未利用木材を活用した森林・地域を元気にするごみ箱」が採択された。今後、万博会場内にこのごみ箱を提供・設置するとともに、国内外の来場者を対象として木竹材原材料の生産工場見学などを行う「森林まるごと体験ツアー」を企画・運営する予定だ。秋田県や徳島県でのビジネスについては収益化した段階で、地元企業等に株式を売却する予定だが、収益化までにはまだ時間がかかる見通しである。そのほかダイミックが、林業経営の効率化及び森林管理の適正化を図り、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた森づくりを実現するための「森林経営管理権集積計画」の策定に関する業務支援を2023年度に那須塩原市から初めて受注しており、今後も森林分野への業務領域拡大を図る方針である。
c) グリーン・インフラ、スマートシティ、物流・ロジスティクス推進等の未来型社会インフラへの知見・ノウハウ・技術の獲得と新たなインフラ構築ニーズへの取り組みに関しては、インフラ包括管理の導入検討調査(スモールコンセッションにインフラ管理を組み合わせたモデル事業)や、ウォーターPPP(上下水道分野を対象とした新たな官民連携方式)の導入支援を行ったほか、スマートアイランド推進実施調査の実施事業(離島特性に対応した鳥獣害対策モデルの構築)や海の次世代モビリティ利活用実証事業(AUV(自律型無人潜水機)による水質三次元計測技術の有効性検証)を受注した。
d) 新規事業・技術力強化に必要なアライアンス・M&Aの積極的な推進については、2024年5月に日栄プランニングを子会社化したが、今後も前向きに検討する意向である。

「環境変化に柔軟に対応できる経営基盤の構築」に関しては、以下の5点に取り組んできた。
a) バリューチェーンの進化による業務の効率化・生産性向上・成果品質の確保に向けた取り組みとして、2024年6月よりエイト日本技術開発にて新基幹システムを本格稼働させた。
b) グループ総合力の結集による企業価値向上に向けた取り組みとして、インターンシップ参加につなげるためのグループ合同会社説明会を開催(Web参加も含めて160名超の学生が参加)したほか、グループフォーラムを開催し(Web参加も含めて1,200人超のグループ社員が参加)、グループ全体でのディスカッションを通じて、求心力と一体感を高め、その集結力をもって現状を打破する知恵と力の醸成を図った。
c) サテライトオフィスやテレワークの活用による多様な働き方の実践、ダイバーシティを尊重した職場づくりとグループのブランド力強化に関する取り組みとしては、エイト日本技術開発の東京新オフィスを開設し職場環境の改善を図ったほか、DXルームの活用推進に取り組んだ(災害時の事業継続と若手人材の育成)。また、人的資本経営の一環として、経済産業省による健康経営優良法人として、グループ会社のうち、日本インフラマネジメント、共立エンジニヤ、アークコンサルタント、共立工営、都市開発設計、ダイミックの6社が認定を取得したほか、女性活躍推進に取り組む企業が認定を受ける「えるぼし」をエイト日本技術開発、共立エンジニヤ、ダイミックの3社が、子育てサポート企業が認定を受ける「くるみん」をエイト日本技術開発1社がそれぞれ取得した。
d) イノベーションやマネジメント人財育成の強化を目的とした「企業内学校」※を2021年6月に開設し、OJTでは身につかない基礎及び応用技術力の向上、資格取得支援、業務上のノウハウや暗黙知の伝承、またこれらによる生産性・品質の底上げやスター技術者の育成に取り組んでいる。また、多様な人財を確保するためインドの大学卒業生の新卒採用を開始したほか、国際大会優勝クラスのパラアスリートを3名採用した。

※ 初年度である2022年5月期はエイト日本技術開発の社員を対象に、会社OBや大学教授などを講師に招いて各種講座を開設(オンライン受講)。2023年5月期より受講対象者をグループ全社に拡大した。

e) リスクマネジメント・内部統制の強化はもとより、コーポレートガバナンス・コードを踏まえた強固なガバナンス体制の構築と経営の透明性向上に向けた取り組みとして、2024年5月期はグループ経営会議を4回、グループ連絡会及びグループリスク管理委員会を各2回、サステナビリティ推進委員会を1回開催した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《HN》

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