ふたご座流星群をもたらす小惑星フェートンの謎解明へ 英オープン大らの研究

2024年9月6日 09:23

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2021年12月15日に河口湖町で撮影されたふたご座流星群の明るい流星。(c) 佐藤 幹哉(国立天文台)

2021年12月15日に河口湖町で撮影されたふたご座流星群の明るい流星。(c) 佐藤 幹哉(国立天文台)[写真拡大]

 毎年12月に出現するふたご座流星群は、三大流星群の1つとして知られるが、母天体は彗星ではなく小惑星フェートンだ。彗星は氷が主体なのに対し、フェートンは岩石からなるが、彗星ではないにもかかわらず流星群をもたらす不思議な存在だ。

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 フェートンが発見されたのは1983年と比較的最近で、そのこともフェートンを謎の天体足らしめている所以だ。

 英国オープン大学は8月28日、国際研究チームにより行った、太陽接近時における小惑星フェートン表面に起こる現象を模した実験について、その結果を発表した。

 フェートンがなぜ太陽接近時に繰り返し揮発成分を宇宙空間に放出するのかは、厳密にはわかっていない。なぜならばフェートン表面の揮発成分は一度太陽熱で蒸発してしまえば、枯渇してしまうのではないかと考えられるからだ。だがこの謎は、今回の研究によって解明に一歩近づいたかもしれない。

 研究では、炭素質コンドライトを含む隕石小片を用いて、太陽接近時の熱サイクルを再現した。その結果、これに含まれる硫黄ガスが繰り返し熱サイクルの中で少しずつ放出され、持続的なガス放出が可能であることが判明したという。つまり、フェートンの表面が熱くなると、その地下にある硫化鉄鉱物が二酸化硫黄などのガスにゆっくりと分解するというメカニズムだ。

 フェートンは直径5.6kmで、近日点では最大表面温度は730度に達し、約4時間で昼夜を繰り返すため、それによって硫黄ガスが徐々に放出されていくと研究では結論付けた。

 同様の実験結果として、過去にはナトリウム蒸発説が唱えられており、どちらが正しいのかは、JAXAが小惑星フェートンへ2020年代後半に送り込む探査機DESTINY+の観測データが明らかになるまで、待たねばならない。なおDESTINY+は、小惑星フェートンから500kmまで接近し、詳細なデータ採取を行う予定だ。

 いずれにせよふたご座流星群は、他の流星群とは異なるメカニズムで流星の元となる塵が生成され、そのことが明るいたくさんの流れ星を出現させる秘訣になっているかもしれない。

 なお今回の研究成果は、ネイチャーコミュニケーションに掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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