クラボウ Research Memo(1):2024年3月期は繊維事業が苦戦も、半導体製造関連分野が伸び過去最高益を更新

2024年9月3日 11:01

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記事提供元:フィスコ

*11:01JST クラボウ Research Memo(1):2024年3月期は繊維事業が苦戦も、半導体製造関連分野が伸び過去最高益を更新
■要約

1. 事業内容
クラボウ<3106>は、1888年創業の大手繊維メーカーである。創業以来、常に時代の先を見据えながら、新しい価値の創造に挑み続けてきた。現在は、暮らしを支える繊維、自動車、住宅、バイオメディカル、食品や、産業を支えるエレクトロニクス、半導体、環境プラントなど幅広い分野に事業領域を展開している。また、創業時より社会貢献活動に積極的に取り組んできた実績があり、今後も国際社会の共通目標であるSDGs(持続可能な開発目標)への対応とともに、健康、快適、環境への配慮などをテーマとした商品・技術開発を追求し、より良い未来社会の創造に向けて貢献する方針である。

最終年度を迎えた中期経営計画「Progress’24」(2023年3月期~2025年3月期)では、高収益事業の拡大と持続可能な成長に向けた基盤事業の強化に取り組んでいる。外部環境の影響等により繊維事業の苦戦が続いているものの、収益性が高く成長が見込める半導体製造関連分野などが伸長し、業績を底上げしてきた。なお、同社は2024年6月開催の株主総会を経て、西垣伸二氏が代表取締役社長に就任するとともに、前社長の藤田晴哉氏は代表権のある会長に就いた。新たな経営体制のもと、2026年3月期から始まる次期中期経営計画の策定と実行を通じ、持続的な成長と企業価値の向上を目指す。

2. 価値創造プロセス
同社の価値創造プロセスは、蓄積してきた技術やノウハウ、人財等の経営資源を社会課題の解決や成長市場へと展開し価値を創出するものである。これまでの歴史を振り返っても、樹脂加工技術を住宅用建材や自動車部材へと展開した化成品事業、さらには染色工程での「色」制御の自動化から色彩管理及び検査・計測へと広がったエレクトロニクス事業(環境メカトロニクス事業)など、これらは祖業である繊維事業から派生したものである。また、安定収益源となっている不動産事業や技術研究所を中心とするR&D体制なども価値創造を支えている。今後は、半導体製造関連市場、自動化・制御装置市場、メディカル市場といった収益性が高く成長が見込める分野へ経営資源を集中することで、社会課題の解決と持続的な成長を同時実現していく価値創造ストーリーを描いている。

3. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.4%減の151,314百万円、営業利益が同5.9%増の9,186百万円と微減収ながら増益となり、各段階利益で過去最高を更新した。売上高は、倉敷機械の連結除外や繊維事業における一部顧客の在庫調整の影響等によりわずかに減収となった。ただ、繊維事業を除けば、半導体製造関連分野などが好調であった化成品事業や環境メカトロニクス事業のほか、食品・サービス事業、不動産事業も堅調に推移した。利益面でも、繊維事業の落ち込みを化成品事業や環境メカトロニクス事業の伸びによりカバーし、計画を上回る営業増益を達成した。また、年間配当については前期比30円増の1株当たり100円を実施した。

4. 中期経営計画「Progress’24」の基本方針と進捗
同社は、2019年度からスタートした「長期ビジョン2030」(2020年3月期〜2031年3月期)に基づき、「イノベーションと高収益を生み出す強い企業グループ」を目指しており、「成長市場における注力事業への経営資源の集中と基盤事業の収益力の強化」による「事業ポートフォリオの変革」を進めている。中期経営計画「Progress’24」は、その第2ステージに位置し、1) 成長・注力事業の業容拡大と基盤事業の収益力の強化、2) R&D活動の強化による新規事業創出と早期収益化、3) SDGs達成への貢献、4) 多様な人材の活躍推進を重点施策とし、次のステージに向けた土台づくりに取り組んでいる。繊維事業の苦戦が続いているものの、半導体製造関連分野をはじめとする成長・注力事業については、今後の業容拡大に向けて着実に成果が出始めており、重視する売上高営業利益率も計画を上回る水準で推移している。

5. 2025年3月期の業績見通し
中期経営計画「Progress’24」の最終年度となる2025年3月期の連結業績について同社は、売上高を前期比1.1%増の153,000百万円、営業利益を同1.2%増の9,300百万円と見込んでいる。倉敷機械の連結除外の影響により、売上高、営業利益は中期経営計画の目標を若干下回る見通しだが、その影響を除けば、おおむね計画線での着地となる。半導体市場の本格回復を追い風に、高機能樹脂製品(化成品事業)などが業績の伸びをけん引するとともに、繊維事業の回復も見込んでいる。利益面でも、高機能樹脂製品の伸びや繊維事業の黒字化により営業増益となる想定である。年間配当については、前期比20円増となる1株当たり120円を予想している。

6. 資本収益性の向上に向けた取り組み
同社は、2024年5月に「資本収益性の向上に向けた取り組み」を公表した。資本コストや株価を意識した経営を実現するための課題としてROEの改善を掲げており、次期中期経営計画期間内(2028年3月期まで)にROE8%以上を達成するとともに、2031年3月期には10%以上を目指している。具体的には、収益性が高く成長が見込める注力事業へ経営資源を集中し、「持続的成長を実現する事業ポートフォリオの構築」を実現すると同時に、規律ある資金配分の実践、並びに政策保有株式の圧縮に取り組む。

■Key Points
・暮らしを支える繊維、自動車、住宅、バイオメディカル、食品や、産業を支えるエレクトロニクス、半導体など幅広い分野に事業領域を展開
・今後は、半導体製造関連市場、自動化・制御装置市場、メディカル市場など収益性が高く成長が見込める分野へ経営資源を集中
・2024年3月期は微減収ながら、各段階利益で過去最高を更新
・2025年3月期は、半導体市場の本格回復を追い風に、高機能樹脂製品(化成品事業)などが業績伸長をけん引し、おおむね計画どおりを見込む
・収益性が高く成長が見込める注力事業へ経営資源を集中し、2028年3月期までにROE8%以上、2031年3月期には10%以上を目指す


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)《HN》

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