【決算記事情報】科研製薬は25年3月期業績・配当予想を上方修正

2024年8月27日 19:34

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 科研製薬<4521>(東証プライム)の25年3月期第1四半期連結業績は研究開発費の増加などで減益だった。ただし通期については、新規多重特異性抗体「NM26」に関する契約一時金(総額8600万米ドル)を受け取ることになったため、業績・配当予想を上方修正した。

■医療用医薬品・医療機器メーカー

 医薬品・医療機器、農業薬品などの薬業、および文京グリーンコート関連などの不動産賃貸事業を展開している。

 主要医薬品・医療機器は、爪白癬治療剤のクレナフィン、関節機能改善剤のアルツ、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、創傷治癒促進剤のフィブラスト、原発性腋窩多汗症治療剤のエクロック、歯周組織再生剤のリグロス、腰椎椎間板ヘルニア治療剤のヘルニコア、およびジェネリック医薬品である。

 23年8月には、壊死組織除去剤ネキソブリッド(イスラエルのメディウンド社から導入、海外製品名NexoBrid、22年12月に深達性Ⅱ度またはⅢ度熱傷における壊死組織の除去の効能・効果で日本における製造販売承認取得、23年5月に薬価基準収載)の発売を開始した。24年3月には、エーザイ<4523>より医療用医薬品2製品(メリスロン、ミオナール)の日本国内での製造販売承認を承継する契約を締結した。25年3月末を目途に販売機能の移管を進め、その後に製造販売承認の承継を行っていく。

 24年5月には静岡工場(静岡県藤枝市)内に、農業薬品事業の中心である発酵農薬原体の製造工場を建設すると発表した。着工は25年11月、竣工は27年7月、稼働開始は27年11月の予定としている。

■M&A・アライアンス

 M&A・アライアンス関連では、21年1月にブロックチェーン技術を活用したデータプラットフォーム事業で医療・ヘルスケア領域に展開するジーネックス(マネックスグループの関係会社)に出資して業務提携した。21年12月には国内バイオベンチャー企業のアーサム・セラピューティクス社を連結子会社化した。22年11月には、アクシル・キャピタル・パートナーズ2号有限責任事業組合が設立したアクシル・ライフサイエンス&ヘルスケアファンド2号投資事業有限責任組合に対して、最大10億円を出資する契約を締結した。

 23年1月には、2017年に武田薬品工業の創薬プラットフォーム事業を継承した国内初の創薬ソリューションプロバイダーであるAxcelead DDP(神奈川県藤沢市)と、画期的新薬の創出に向けた協業に関する契約を締結した。23年3月には、bitBiome(東京都新宿区)と、bitBiomeが有する微生物プラットフォーム技術を活用し、感染症治療薬創薬に関する共同研究契約を締結した。23年9月には、再生医療関連事業を展開するセルソース(東京都渋谷区)と、エクソソームを含む細胞外分泌物を用いた整形外科疾患の治療または予防に関する日本初の医薬品の創出に向けたフィージビリティ・スタディ契約を締結した。

 24年8月には、スタートアップ企業であるクロスメッド(東京都板橋区)と、整形外科疾患の治療に関するプログラム医療機器(SaMD)の創出に向けたフィージビリティ・スタディ契約を締結した。

■開発パイプライン

 25年3月期第1四半期末時点の主要な開発パイプラインの状況は、アタマジラミ症を適応症とするKAR(アーバー・ファーマシューティカルズ社から導入、海外製品名Sklice)が第3相段階、難治性脈管奇形を適応症とするKP-001(旧ART―001、アーサム・セラピューティクス社からの継承品)が日本で第3相段階・米国で第1相段階、固形がんを適応症とするKP-483(がん免疫療法、自社創薬品)が第1相段階、末梢性神経障害性疼痛を適応症とするKP910(自社創薬品)が第1相段階、原発性胆汁性胆管炎を適応症とするKC―8025(セラデルパー)(シーマベイ・セラピューティクス社からの導入品)が第1相段階、先天性副腎過形成症を適応症とするチルダセルフォント(スプルース・バイオサイエンシズ社からの導入品)が第1相段階、なおBBI-4000については第1相段階を終了し、原発性掌蹠多汗症治療薬としての開発を中止した。

 セラデルパーは23年1月に米国シーマベイ・セラピューティクス社(注:24年2月にギリアドサイエンス社に被買収)と、日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。シーマベイ社に対して契約一時金45億円、開発および販売マイルストーンの達成により最大170億円、並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。

 チルダセルフォントは23年1月に米国スプルース・バイオサイエンシズ社と日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。スプルース社に対して契約一時金15百万ドル、開発および販売マイルストーンの達成により最大64百万ドル(1ドル=135円換算)並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。

 海外導出では、爪白癬治療剤のクレナフィンについて欧州でアルミラル社が爪白癬を適応症として承認申請中、中国でAIM社が爪白癬を適応症として第3相段階、原発性腋窩多汗症治療剤のエクロックについて韓国でドンファ社が原発性腋窩多汗症を適応症として承認申請中である。

 なお、スイスのニューマブ・セラピューティクス社とアトピー性皮膚炎を対象に共同開発している新規多重特異性抗体「NM26(開発コード:NM26―2198)」については、米国J&J社の関連会社であるスイスのシーラグ社と24年5月に知的財産譲渡および販売提携オプション契約を締結した。この契約により、ニューマブ社との共同開発契約において得たすべての知的財産をJ&J社に譲渡するとともに、ニューマブ社と21年1月に締結したライセンス・共同開発契約を解約し、J&J社から契約一時金2000万米ドルを受け取る。また日本およびアジアでの開発の進捗および売上の目標達成に応じたマイルストーン収入として最大で総額1億3850万米ドル、アジアでの売上に応じたロイヤリティ収入を受け取る権利を有するとともに、J&J社が日本で承認取得するすべての適応症について販売提携契約を交渉するオプション権を有する。一方、ニューマブ社とのライセンス・共同開発契約で定めた権利は解約後も存続し、ニューマブ社より契約一時金として6600万米ドルを取得する。またJ&J社による開発の進捗に応じたマイルストーン収入として最大で総額1億1390万米ドルをニューマブ社より受け取る権利を有する。

■24年3月期増益着地、25年3月期減益予想

 25年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比0.6%増の182億54百万円、営業利益が16.5%減の27億50百万円、経常利益が13.7%減の30億11百万円、親会社株主帰属四半期純利益が30.1%減の17億54百万円だった。研究開発費の増加(15.3%増の29億98百万円)で減益だった。

 単体ベースの主要医薬品・医療機器の売上高は、クレナフィンが3.7%減の44億95百万円、アルツが8.3%増の49億12百万円、セプラフィルムが0.6%減の17億24百万円、フィブラストが6.8%減の6億26百万円、エクロックが0.9%減の6億81百万円、リグロスが0.7%増の2億33百万円、ヘルニコアが14.0%増の1億04百万円、ジェネリック医薬品が2.4%増の20億62百万円だった。

 セグメント別に見ると、薬業(医薬品・医療機器、農業薬品)は売上高が0.6%増の176億43百万円、営業利益が18.9%減の24億10百万円だった。なお海外売上高は34.7%減の9億92百万円だった。不動産事業(文京グリーンコート関連賃貸料など)は売上高が0.9%増の6億11百万円、営業利益が5.7%増の3億40百万円だった。

 通期連結業績予想は8月7日付で上方修正して売上高が24年3月期比22.8%増の885億円、営業利益が118.6%増の208億円、経常利益が113.0%増の212億円、親会社株主帰属当期純利益が76.9%増の142億円とした。

 前回予想に対して売上高を134億円、営業利益を134億円、経常利益を134億円、親会社株主帰属当期純利益を86億円、それぞれ上方修正した。新規多重特異性抗体「NM26」に関して、J&J社およびニューマブ社より契約一時金として総額8600万米ドルを受け取る。

 なお研究開発費(導入費用は含まない)の計画は据え置いて、開発パイプラインの進展により25.2%増の157億円の計画としている。また単体ベースの主要医薬品・医療機器売上高計画についても据え置いて、クレナフィンが0.5%増の172億円、アルツが5.3%増の190億円、セプラフィルムが2.8%減の68億円、フィブラストが1.0%減の26億円、エクロックが21.4%増の22億円、リグロスが0.2%増の9億円、ヘルニコアが4.7%増の4億円、ジェネリック医薬品が1.4%増の81億円としている。クレナフィンは大規模疫学調査を活用して潜在患者の治療介入による市場拡大を推進する。アルツは競合品の終売により増収、セプラフィルムは競合品の影響により減収、エクロックは疾患認知の広がりによる市場拡大を見込む。ジェネリック医薬品は選定療養の影響で需要の高まりを見込んでいる。

 配当予想については、8月7日付で第2四半期末40円上方修正(特別配当40円を実施)して、24年3月期比40円増配の190円(第2四半期末115円=普通配当75円+特別配当40円、期末75円)とした。予想配当性向は50.7%となる。

■長期経営計画2031

 22年5月に2023年3月期から10か年の長期経営計画2031を発表し、画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命の延伸に貢献し続ける企業、皮膚科・整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業を目指している。

 長期的課題を見据えた戦略として研究開発では上市確度の向上、パイプラインの拡充、新規ニーズおよび海外展開への対応、新規分野へのチャレンジ、海外展開では海外展開品の充実、海外自社開発体制の整備、生産・海外自社販売体制の整備、農業事業では北米や新市場での伸長、EU市場への参入・拡大、日本国内での使用促進を推進する。また経営基盤強化に向けて、プロフェッショナルとして新たな挑戦・変革を追求し続ける人材の育成、データとデジタル技術を活用して変革し続ける企業風土の醸成、患者さんファーストのための製品価値最大化を推進する。24年3月には「健康経営優良法人2024」に認定された。

 業績目標としては32年3月期の売上高1000億円、営業利益285億円、ROE10%以上、海外売上高比率30%以上を掲げている。研究開発では10年間で8品目上市するためのパイプライン確保、毎年1品目以上の開発導入品あるいは販売提携品の確保を目指す。海外展開では医薬品の海外売上高比率25%以上を目指す。農薬事業は微生物由来の天然物質農薬ポリオキシンを中心に、売上高100億円を目指す方針としている。

 なお5月17日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」についてリリースした。長期経営計画2031に掲げたビジョンと、その実現に向けた戦略を着実に実行することでPBR1倍超えの実現を図るとしている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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