相場展望8月22日号 米国株: 思ったよりも弱い雇用、8/23のパウエルFRB議長の講演に注目 日本株: 円相場は円高の可能性大、バフェット氏の商社株売りに注意

2024年8月22日 13:41

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/19、 NYダウ+236ドル高、40,896ドル
 2)8/20、NYダウ▲61ドル安、40,834ドル 
 3)8/21、NYダウ+55ドル高、40,890ドル

【前回は】相場展望8月19日号 米国株: パウエルFRB議長の講演に注目、米国株は分岐点にある 日本株: 円高に転換で、日経平均は「2番底」に向かう可能性

●2.米国株: 思っていたよりも弱い雇用、8/23のパウエルFRB議長の講演に注目

 1)思ったよりも弱い労働市場が、金融政策に影響するか
  ・米国労働省は非農業部門の今年3月までの1年間の就業者数を月平均24.2万人増から27.4万人増に下方修正を8/21にした。
  ・これは米国景気動向を敏感に示す指標であるため、FRBの判断に影響を及ぼす可能性がある。FRBの政策金利低下への材料の1つとなるデータといえる。

 2)気になる著名投資家バフェット氏が率いるバークシャーの株売り
  ・昨年後半から株式の売りスタンスが継続している。
    BofA(バンク・オブ・アメリカ)株の断続的な株売りで、保有▲10%減少。
    アップル株は▲50%売却。
  ・バフェット氏が、米国株式市場を総強気で見ていないことの表れと見る。

 3)ポイントは8/23のパウエルFRB議長の講演内容
  ・この講演に対する米国株価反応に注目したい。
  ・米国株相場は、エヌビディア株価の上昇など半導体株指数の上げが支えになっている。
  ・労働市場が思っていたよりも弱いという雇用情報も出てきた。金利引下げが、米国経済の後退を意識したものと市場が受け止めれば、株式相場が荒れる展開となろう。逆に、米国経済のソフトランディング(軟着陸)との観測が強まれば、株価にとって追い風となる。

●2.バフェット氏、BofA株を5.5億ドル(約800億円)売却(ブルームバーグ)

 1)先月までの売却累計株数は1億株、まだ9億株を保有している。
 2)BofA(バンク・オブ・アメリカ)株価は今年+16%上昇している。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/19、上海総合+14高、2,893
 2)8/20、上海総合▲27安、2,866
 3)8/21、上海総合▲10安、2,856

●2.中国で「商品券」の配布期待が再燃、7月の経済指標悪化で(ロイター

 1)4~6月期に冴えない内容だった経済指標は7月に一段と悪化した。新築住宅価格は前年比で約9年ぶりの大幅な落ち込みを記録し、鉱工業生産は伸びが鈍化したほか、輸出と投資の伸びも下振れ、失業率は上昇した。
 2)インフレ率の上昇は、内需拡大よりも天候不順が原因で、輸入の急増は米国のハイテク分野における対中国輸出規制の導入を見込んだ半導体の駆け込み需要を反映していた。小売売上高も前年同期の水準が低かったためで、見かけ上で伸びが大きくなったに過ぎない。
 3)中国の財政赤字は対GDP比を▲3.0%から▲3.8%に引上げ、洪水防止などのインフラ投資のために2024年の地方政府の債務割り当てを一部前倒した。

●3.米国ウォルマート、中国電子商取引大手の京東商城の株式を売却へ、最大37.4億ドル(ロイター)


■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/19、日経平均▲674円安、37,388円
 2)8/20、日経平均+674円高、38,062円
 3)8/21、日経平均▲111円安、37,951円

●2.日本株 :円相場は円高に向く可能性大、バフェット氏の商社株売りに注目

 1)円相場が円高・ドル安基調に本格的に転換か
  ・円相場が8/21米国時間で144.124円/ドルと円高。
  ・米国では9月に政策金利の引下げ観測が強まっている。しかし、それは利下げのスタートである点に注目すべきだ。米国の金利は、FRBが引下げ・引上げを始めると過去12~16回連続して行われてきた。つまり、金利は上にも下にも3~4%の変動を意味する。
  ・8/21の日米金利差は3.821%であり、米国事情で金利差はゼロ%近辺になることを示唆している。
  ・加えて、日銀は金利引上げの可能性が高い。2025年度の日本の予算策定において日本国債の金利を2.1%に想定している。現状の金利から+1.2%程度の上昇を2025年に見込んでいるのが財務省だ。この日本の金利上昇を加味すると、将来は日米金利差は解消するどころか、マイナスも予想される。つまり、「円高に行くことが確定」したと言えよう。ただ、一方的に円高になるのではなく、円高は一服しながら、つまり円安を一時的に織り込みながら円高基調を強めていくと見る。

 2)米国著名投資家バフェット氏の日本大手商社株売却のリスクに注目
  ・長期投資家のバフェット氏は、米国でアップルやBofAなどの株式を大量に売却して利益確定している。他方、買いは少ない。結果として、現金同等の保有額は過去最高値と高水準になっている。現金等は3カ月物の固定金利相場で運用して稼いでいるが、バフェット氏はこれで十分な収益だとコメントしている。
  ・この運用スタンスの変化は、株式投資に妙味がなくなってきていることを示していると思われる。
  ・7月以降の日本を代表する大手商社株の株価が重い。特に8/5の暴落後の値戻しに勢いの弱さが気になっている。とりわけ、三井物産の値戻りが良くない。バフェット氏は大手商社株を約10%近くまで買増してきた。米国のBofAやアップル株の売却スタンスが、日本大手商社株に波及してきたのか?注目したい。
  ・バフェット氏による三井物産など大手商社株の保有が明らかになって以降、日経平均の上昇の大きな要因の1つになってきただけに、要注意だ。

 3)8/23のパウエルFRB議長の講演内容を受けた米国相場に注目
  ・米国株式相場は堅調に推移しており、日本株を支えている。
  ・ただ、米国相場は半導体株の切り返しで高値接近しており、このまま高値更新となるか節目を迎えている。
  ・それだけに今後の株式相場を占う意味からもパウエル議長の講演内容と株式市場の反応に注目したい。
  ・現状の海外短期筋は先物買いで、日経平均の上昇をリードしている。ところが円相場は「円高」に向き始めている。海外勢の含み益も膨らんでいる。海外短期筋の「先物売り転換」に注意したい。

●3.財務省、2025年国債費を過去最大29兆円計上へ、金利2.1%想定、利払い増(時事通信)

●4.第一三共、米当局が乳がん向け抗がん剤を「画期的治療薬」に指定(Quick Money)

●5.セブン&アイ、カナダの小売大手が買収提案、「初期段階」と関係者(ロイター)

●6.JT、米国たばこ市場4位のベクターを3,780億円で買収合意、世界展開強化(NHK)


■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2801 キッコーマン   業績堅調。
 ・7735 スクリーン    業績堅調。
 ・6966 三井ハイテック  業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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