インフォマートは反発の動き、24年12月期大幅増収増益予想

2024年8月20日 15:34

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 インフォマート<2492>(東証プライム)は、企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoB電子商取引プラットフォーム(飲食業向けを中心とする受発注、全業界を対象とする請求書など)を運営している。24年12月期も大幅増収増益・連続増配予想としている。引き続き利用企業数が順調に増加し、人件費などコスト増加を吸収する。第2四半期累計はサーバー関連費用やM&A関連費用の影響で営業・経常減益だったが概ね計画水準だった。そして下期は価格改定効果や原価低減効果も寄与して利益率が大幅に向上する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム

 企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoBプラットフォームを運営している。24年3月には、食品卸と個人飲食店の受発注デジタル化サービスを展開するタノム(21年2月に資本業務提携)を子会社化した。

 主なプラットフォームとしては、BtoB-PF FOOD事業では飲食店(主に外食チェーン)と食材卸・メーカー間の受発注業務を電子化する受発注、小・中規模飲食店向けの受発注ライト、食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理する規格書、LINEを使った発注が可能なTANOMU、店舗オペレーション管理ツールのV―Manage、BtoB-PF ES事業では全業界を対象に請求書発行・受取業務を電子化する請求書、安心・安全な契約書管理を実現する契約書、取引先との見積書・発注書・納品書・検収書をデジタル化するTRADE、業務用食品食材の商談をデジタル化する商談などがある。また、多様な価値提供の一環および新たな収益源育成に向けて、100万社の顧客基盤に基づく商流データを活用したBtoB Financeを開発中(一部機能をリリース済み)である。

 23年1月にはBtoBプラットフォーム契約書がサイバートラスト<4498>のiTrustと連携し、新機能「社内文書署名機能」で作成された電子証明書が法務省の商業・法人登記のオンライン申請に利用可能な電子証明書として認定された。23年7月には自治体のLGWAN(総合行政ネットワーク)に対応したBtoBプラットフォーム on LGWANを本格稼働、23年12月には紙やPDFなど様々な形式で受け取る請求書をAI OCRでデータ化するサービス「BP Storage for 請求書」の提供を開始した。24年6月には経済産業省が推進する「IT導入補助金2024」において「IT導入支援事業者」として採択された。

 なお23年12月期の売上高は、BtoB-PF FOOD事業が84億47百万円、BtoB-PF ES事業が49億16百万円だった。主な収益は利用企業から得る使用料収入およびセットアップ費用である。受発注ではフード業界の買い手企業(外食チェーン、ホテル、給食等)から得る月額システム使用料、売り手企業(食材メーカー・卸等)から得る定額制または流通金額に係る従量制のシステム使用料、請求書ではシステム使用料(基本料金+従量制)などが柱となっている。

■26年12月期営業利益50億円目標

 中期業績目標値には26年12月期売上高200億円、営業利益50億円、売上高営業利益率25%を掲げ、5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。

 中期経営方針として、本業であるBtoBプラットフォームの強化(新サービス・新プロダクツを含む機能強化、販売力強化、認知度向上、CS向上など)、増収増益基調の継続と高収益性への回帰、出資先のシナジー拡大と収益化を掲げている。

 なおFood Techに特化したファンドを設置し、20年6月にはAIを活用した飲食店向けの自動発注クラウドサービス「HANZO自動発注」を開発・提供するGoalsに出資して資本業務提携(22年6月に追加出資)した。23年6月には、国内の旅館・宿泊業の再生支援を行うRQ旅館再生ファンド投資事業有限責任組合に出資した。

 また24年5月には、東京都が男性従業員の育児休業取得率の一定割合を達成した企業を登録する「TOKYOパパ育業促進企業」において、令和5年度の「ブロンズ(50%)」に登録された。

■利用企業数は増加基調

 利用企業数の増加に伴って収益が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で、23年12月期末の全社ベースの利用企業数は22年12月期末比18万5502社増加の101万1176社、事業所数は36万1904事業所増加の188万8288事業所となった。主要なプラットフォームでは、受発注の買い手企業が273社増加の3915社、買い手店舗が4088店舗増加の7万2468店舗、売り手企業が2016社増加の4万4044社だった。請求書は18万5737社増加の100万2514社となり100万社を突破した。有料契約企業は3193社増加の1万1808社(受取モデルが1631社増加の6913社、発行モデルが1562社増加の4895社)となった。

 国内最大級のBtoBプラットフォームである。23年12月にはBtoBプラットフォーム請求書が東京商工リサーチの調査において請求書クラウドサービス市場国内シェアNO.1を3年連続で獲得した。

 BOXIL SaaS AWARD Autumn 2024においては、BtoBプラットフォーム請求書が請求書発行部門で、BtoBプラットフォーム受発注が受発注管理システム部門で、それぞれ1位を受賞した。アイティクラウドのITreview Grid Award 2024 Springでは、BtoBプラットフォーム請求書が請求書・見積書作成ソフトおよび請求書受領サービスの2カテゴリで最高位のLeaderを受賞した。24年6月にはアイティクラウドのITreviewにおいて、Customer Voice Leaders 2024をエグゼクティブ活用部門で受賞した。

■アライアンスも積極推進

 アライアンス戦略も積極推進している。21年3月には三井物産と共同出資で特別目的会社I&Mを設立し、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携、22年4月にはプロダクト・データ・プラットフォームを開発・提供するLazuliに出資した。

 21年10月に串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携して設立した合弁会社Restartz(リスターツ)は、22年11月に飲食店舗運営のDXを支援する店舗オペレーション管理アプリ「V-Manage」をリリースし、23年4月に串カツ田中ホールディングスの全ての直営店舗(155店舗)への導入を開始した。そして23年8月末に利用企業数が100社を突破した。

 23年2月にはDeepworkと協業して、24年1月に完全義務化される電子帳簿保存法に対応した新サービスSTORAGE by invoxの提供を開始した。23年3月にはDeepworkと協業した新機能「発注書AI-OCR(invox)」を提供開始した。

■24年12月期大幅増収増益予想

 24年12月期の連結業績予想は売上高が23年12月期比20.4%増の160億86百万円、営業利益が20.4%増の10億円、経常利益が23.5%増の7億80百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が特別損失一巡も寄与して80.6%増の5億39百万円としている。配当予想は23年12月期比57銭増配の1円54銭(第2四半期末77銭、期末77銭)としている。連続増配予想で予想配当性向は64.7%となる。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比15.1%増の72億13百万円、営業利益が15.1%減の3億10百万円、経常利益が1.6%減の3億05百万円、親会社株主帰属四半期純利益が6.8%増の2億32百万円だった。

 売上面は高成長を継続したが、利益面はサーバー関連費用やM&A関連費用の影響で営業・経常減益だった。ただし概ね計画水準だったとしている。第2四半期末時点の全社ベースの利用企業数は前年同期比19.0%増の107万3371社となり、ストック収益率は95.8%となった。

 営業利益▲55百万円の増減分析はBtoB-PF FOOD事業の売上増加+3億41百万円、BtoB-PF ES事業の売上増加+6億02百万円、データセンター費増加▲3億25百万円、ソフトウェア償却費増加▲22百万円、売上原価における手数料(BtoBプラットフォーム請求書におけるアライアンスパートナーへの紹介手数料)増加▲1億64百万円、販管費における人件費増加▲1億60百万円、販売促進費減少+34百万円、支払手数料(BtoBプラットフォーム受発注およびBtoBプラットフォーム請求書の稼働業務の外注費)増加▲1億37百万円、その他販管費増加▲2億22百万円だった。なお一時的なコストアップ要因として、データセンターのクラウド化に向けた検証を実施したためサーバー関連費用が増加したほか、タノムを子会社化したことに伴い支払手数料やのれん償却費が増加した。

 BtoB-PF FOOD事業は、売上高が8.3%増の44億36百万円(受発注が7.1%増の31億21百万円、受発注ライト&TANOMUが32.9%増の4億02百万円、その他が3.9%増の9億11百万円)で、営業利益が47.2%減の5億21百万円だった。受発注はホテル旅館業態の新規契約が好調に推移し、外食市場も復調した。受発注ライト&TANOMUは食品卸売企業のDXニーズを捉えて成長が加速した。利益面は営業人員および営業サポート人員の補強に伴う人件費の増加に加え、タノムを子会社化したことに伴うM&A関連費用の増加も影響した。

 BtoB-PF ES事業は、売上高が27.7%増の27億77百万円(請求書が30.0%増の21億48百万円、TRADEが90.8%増の1億30百万円、その他が9.9%増の4億98百万円)で、営業利益が2億13百万円の損失(前年同期は6億25百万円の損失)だった。大手企業・グループを中心に請求書の導入が進み、大幅増収効果で営業損失が縮小した。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が35億19百万円で営業利益が2億29百万円、第2四半期は売上高が36億94百万円で営業利益が80百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いて大幅増収増益予想としている。引き続き利用企業数が順調に増加し、人件費などコスト増加を吸収する見込みだ。

 事業別売上高の計画はBtoB-PF FOOD事業が15.6%増の97億67百万円、BtoB-PF ES事業が28.5%増の63億18百万円としている。BtoB-PF FOOD事業では、フード業界におけるデジタル化進展で利用企業数が増加することに加え、24年8月に受発注の料金改定を実施することも寄与する見込みだ。BtoB-PF ES事業では、請求書の新規有料契約企業数の増加に加え、既存有料契約企業における請求書の電子化進展によってARPUも上昇する見込みだ。

 営業利益+1億70百万円の増減分析計画は、増収効果で+27億23百万円、データセンター費増加で▲35百万円、ソフトウェア償却費増加で▲1億15百万円、売上原価における手数料(BtoBプラットフォーム請求書におけるアライアンスパートナーへの紹介手数料)増加で▲4億82百万円、販管費における人件費増加で▲6億13百万円、販売促進費増加で▲2億36百万円、支払手数料(BtoBプラットフォーム受発注およびBtoBプラットフォーム請求書の稼働業務の外注費)増加で▲6億70百万円、その他販管費増加で▲3億98百万円としている。営業強化に伴って経費が増加するが、サーバーのクラウド移行によってコスト削減を推進する。

 第2四半期累計の進捗率は売上高45%、営業利益31%、経常利益39%、当期純利益43%と低水準の形だが、下期は価格改定効果やサーバーのクラウド移行などの原価低減効果も寄与して利益率が大幅に向上する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は反発の動き

 株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが反発の動きを強めている。出直りを期待したい。8月19日の終値は264円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円38銭で算出)は約111倍、今期予想配当利回り(会社予想の1円54銭で算出)は約0.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS46円66銭で算出)は約5.7倍、そして時価総額は約685億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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