異次元の少子化対策は今? 企業の育児・子育て制度から学ぶべきこと

2024年7月21日 23:51

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記事提供元:エコノミックニュース

児童手当に関しては、2024年12月支給分から、支給対象者を高校卒業まで延長することや、所得制限の撤廃、多子世帯への増額などがある

児童手当に関しては、2024年12月支給分から、支給対象者を高校卒業まで延長することや、所得制限の撤廃、多子世帯への増額などがある[写真拡大]

6月末に日本経済新聞社とテレビ東京が実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率が、5月の前回調査よりもさらに3ポイント下回る25%となり、 2021年10月の内閣発足後の最低記録に並んだ。発足当初から岸田内閣の支持層は高齢層が多く、若年層になるほど低い支持となる傾向があったが、昨年から大きな問題となっている政治資金規正法違反事件などの処理や、物価高騰などへの対応などに疑問を持つ声が日に日に増しており、頼みの綱だった高齢層の支持すらもじわじわと減少しているようだ。政府はデフレ脱却のために定額減税制度を導入するなど、いくつかの経済政策を打ち出してはいるものの、財源は結局、税金であることから批判も多く、実感も少ないことから、SNSなどでは政府の施策に対しての否定的なコメントが目立っているような状況だ。

 例えば、岸田内閣が2023年1月に表明した「異次元の少子化対策」も、その一つだ。

 児童手当に関しては、2024年12月支給分から、支給対象者を高校卒業まで延長することや、所得制限の撤廃、多子世帯への増額などがある。育休に関しては、育休時の手取り額維持や、時短勤務への給付などを25年度から実施する予定をしている。また、大学などの授業料無償化や出産費用の保険適用など、随所にわたって大盤振る舞いだ。しかし、いくら気前の良い政策を並べてみても、財源は異次元から調達するわけではなく、国民の血税だ。足りない分は結局、国民が負担することになる。対象となる家庭は幾ばくかの恩恵を受けられたとしても、その為に国民全員に大幅な増税が課されるのであれば、不安はますます増大し、安心して出産、子育てできるような社会環境からはどんどん遠ざかってしまうことだろう。目先の金も有難いが、まずは社会全体の安心感を高めることの方が大事なのではないだろうか。闇雲に税金をバラまくだけでは、少子高齢化を食い止めたり、結婚や出産を望む若者が増えたりするとは到底思えない。むしろ、その反動が社会不安に拍車をかけることにもなりかねない。

 一方、企業の取り組みを見てみると、政府の施策とは似て非なるものであることがよくわかる。

 総合住宅メーカーのAQ Group(旧アキュラホーム)は、業界でも早くから育休制度や、社員の出産、育児を支援する為、祝い金を支給する「しあわせ一時金制度」などを導入し、

 日本次世代企業普及機構が主催するホワイト企業アワードにおいても、ホワイト制度部門大賞の他、CSR部門、女性活躍部門などで受賞している企業だが、同社の取り組みの一つに「パートナー社員転換」制度というものがある。これは、育児により正社員として働き方が難しくなった場合、ライフスタイルに合わせて雇用形態を選択し、転換できる制度だ。とくに小学校に就学するまでは、保育園や幼稚園に預けられる時間も限られているし、突発的な病気やケガなども頻繁に起こる時期。そこで、この期間だけ雇用形態を正社員からパートナー社員とし、期間が終わればまた正社員に復帰するという制度を採用することで、子育て中も気兼ねなく働くことができるうえに、正社員復帰に対しての心配もなくなる。

 また、自動車メーカー大手のトヨタ<7203>も、「パートナーの育休取得100%(希望者)※」の環境づくりを目指して、産後、パートナーの立場で育児のための休暇を希望するすべての従業員が、「産後パートナー育休」や「育児休職」等の制度を気兼ねなく活用できる環境整備を進めている。その結果、パートナーの育休取得推進を始めた2015年時点で0.8%だった育休取得率が、2023年では49%と大幅に拡大している。取得率向上の背景には制度の適用だけでなく、育児休職者の不在を職場内外でサポートする体制の構築に加え、ダイバーシティ研修やマネジメント向け座談会の開催、上司とのキャリア面談など、社内周知と理解を共有する地盤を着実に遂行していることが挙げられる。

 こうした企業の取り組みを見てみると、決して異次元からの施策ではなく、社員と同じ立場、次元で育児や生活を考えた、地に足の着いた施策であることがわかる。学費が免除になることよりも、学費を払っても余裕のある生活が送れる社会の方がいい。出産費用が保険適用になるよりも、可愛い赤ちゃんの出産費用を負担だなんて思わないで済む豊かな暮らしを送りたい。育休時の手取り額の維持を法律で定められるよりも、職場の理解や意識の共有、復帰後の居場所がちゃんとそこにあることに安心したいのだ。(編集担当:藤原伊織)

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